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デスクトップやノートから、スマートフォンへと通信端末が変遷をたどる中、これらを稼働させるOSもWindowsからiOSやAndroidへと変化してきた。今後はすべてのモノがインターネットに接続するIoT時代が到来する。IoT向けの新しいOSについて、OSの開発に携わる「卓晟互聯信息科技(Josh VM Studio)」のCTO卓睿涛氏と36Kr編集部が考察した。
IoT向けOSが必要な理由
IoTの概念が生まれたのは2012年ごろのことだが、無線通信チップの生産コストが下がり、5G通信の実用化を控えた現在、モノとインターネットをつなぐという課題はすでに解決している。ARM32ビットMCUの普及に伴い、フロントデバイスの計算能力も大幅に向上し、より複雑なアプリケーションを実行できるようになった。
エッジコンピューティングの発展に伴い、IoTのターミナルソフトウェアも大幅に複雑度を増した。数年前まで、IoT製品に搭載されたアプリケーションソフトウェアは出荷時に機能が固定されていた。これをアップグレードするには費用も時間もかかり、また、サードパーティーの開発者が手を加えることも難しかった。
そこで、アプリケーションソフトウェアの開発を基盤ハードウェアの開発と分離し、サードパーティーの開発者にとって使いやすい統一規格の環境が必要となってきた。つまり、IoT向けのOSだ。
IoT向けOSに求められる要素
IoT向けのOSは、どのような特徴を備えているべきか?大まかに以下のような条件が挙げられる。
■プラットフォーム間の障壁を取り除く:プラットフォーム間の差異を解消し、ソフトウェアとハードウェアの開発を分離する。
■低コストである:超小型デバイス上で運用可能であり、リソース消費も少なく、ハードウェア関連のコストを圧縮できる。
■開発者にとってわかりやすい:OS関連の多くの開発者がすぐに使える。
■セキュリティ面が強い:ユーザーのデバイスやデータを守る上で十分なセキュリティを備える。
IoT向けOSの主な3グループ
現段階で市場に流通するIoT向けOSは、主に3つのグループに分かれる。
1)組み込みリアルタイムOS(RTOS)から発展したタイプ。
代表製品:「Free RTOS」「RT-Thread」「LiteOS」「µC/OS」「MICO IoT OS」
長所:幅広い端末に対応でき、ハードウェアの普及コストが低い。
短所:ソフトウェア開発に高い専門性が求められる。ソフトウェアとハードウェアの分離も難しい。ハードウェア企業からの参入者は多いが、ほとんどが中国国外の企業、あるいは国外の技術者が集まるオープンソースコミュニティで開発されている。
中国製ではRT-Threadの成長が目覚ましい。エネルギー関連、車載製品、医療、コンシューマー向け電子製品などの業界向けに、すでに2億台が投入されている。
2)LinuxやJava、Node-js for Embedded Systems、MicroPythonなどのソフトウェアプラットフォームから移行したタイプ。
代表的開発組織・プロジェクト:「Linaro」「MicroEJ」「Ruff」「JOSH」
長所:ソフトウェアリソースが豊富で開発者も多い。迅速かつ安価でソフトウェアを開発できる。
短所:ハードウェア端末への適合が難しい。リソースの占有や周辺インターフェースの拡張、省電力設計などの問題を解決する必要がある。
既存のサーバー業界で相当のシェアを占め、開発者コミュニティの規模も大きいことから、JavaをベースとしたOSでIoT産業に参入する企業も多い。IoTデバイス向けJavaアプリの開発に成功すれば、多くの顧客企業に関連ソリューションを提案できるようになる。
AI分野ではPythonが人的リソースの面でも絶対的に優勢だ。ただし、PythonをベースにしたIoT向けOS開発で大きな成功を遂げた企業やプロジェクトはまだ存在しない。
中国製では、JavaをベースとしたRuffが注目されている。
3)クラウドプラットフォームから拡張したタイプ。
代表製品:「Android Things」「AliOS Things」
長所:インターネットサービスとの相性がよく、IoTアプリへの接続も便利。
短所:プラットフォームの中立性を確立することが難しい。ソフトウェア開発者にとっては制限事項が多い。
現状では圧倒的にグーグル製のAndroid Thingsが強いが、この製品はスマホ用OSのAndroidとは異なり、基本的には自社サービス向けのSDK(ソフトウェア開発キット)となっている。
IoT向けOS開発でスタートアップに勝機はあるか?
従来、OSのようなインフラ級のシステム開発は大手企業の専売特許だった。技術力にしても、保守体制にしても、顧客の信頼に応えられるのは大手しかなかったからだ。
しかし、現在では風向きが変わっている。オープンソースプロジェクトが主流となりつつあり、むしろこちらの方が顧客の需要に合う。大手企業への依存から脱することができるからだ。
つまり、莫大な商業価値を有するOSの開発に、中小企業やスタートアップでも参入できるようになったということだ。先にオープンソースでエコシステムを構築し、マネタイズは後からソフトウェア、クラウドサービス、広告などで行うのが理想的な流れになっている。
(翻訳・愛玉)
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