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5月21日、スターバックスコーヒーが、オンラインで注文し店頭で商品を受け取る新サービス「啡快Starbucks Now」をローンチした。店頭受け取りの習慣を広く根付かせた「luckin coffee(瑞幸咖啡)」をまねたようだが、実はスターバックスは2015年から北米市場で、同じサービスを「Mobile Order」という名称で展開している。
スピードが売り
オンラインで注文し店頭で受け取るという流れは、luckin coffeeを利用したことのある人にはなじみ深いものだ。そのため「啡快」サービスは、まず北京や上海の代表的な商業エリアでスタートさせた。5月末までに北京・上海の300店舗に広げ、さらに全国へと拡大する予定だという。
「啡快」は「飛ぶように速い」という中国語と同じ発音だ。このことからもスターバックスがスピードを重視していることが分かる。ユーザーがモバイル端末で事前に注文するのは待ち時間を減らすためだ。そのため店舗で受け取る人がレジで並ばなくていいように、スターバックスでは「啡快」専用受け取りカウンターを設けており、ピーク時には専門スタッフが対応する。そうすることでイートインの客に対する影響も最小限に抑えることができる。
スタバはこれまでユーザーエクスペリエンスを重視して細部にまでこだわってきたが、「啡快」も例外ではない。アプリを使って自分好みのカスタマイズをしたり、温度や甘さを選んだりすることができるほか、受け取りの「合い言葉」など新鮮な演出も用意されている。
サードプレイスからフォースプレイスへ
この新サービスは、スターバックスが推進する「フォースプレイス(第4の場所)」というコンセプトに基づいたものだ。フォースプレイスとはオンラインを活用した新しいスターバックス体験のことだという。これまで「サードプレイス」というコンセプトを全面に打ち出してきたが、中国という最大の海外市場ではさらに踏み込み、オンラインとオフラインを融合させて多様なシーンに対応しようとしているのだ。
スターバックスが「啡快」サービスをローンチするに至ったのは、一つにluckin coffeeを始めとする無数のライバルの存在がある。また2018年第3四半期には過去9年で初めて減収に転じており、いくらか業績の回復はみられるものの依然として多くの不安を抱えていることも挙げられる。そこで「啡快」を投入してテコ入れを図ろうという考えだ。
フォースプレイスの推進に関しては、昨年9月にアリババ傘下のフードデリバリー「餓了麽(ele.me)」と提携してデリバリー事業「専星送(Starbucks Delivers™)」をすでに立ち上げている。「長江証券(Changjiang Securities)」の試算では、デリバリー事業の導入後、1店舗あたりの営業利益は目に見えて増加した。デリバリー事業の収入が5%アップすると、営業利益は16.3%も増加するという具合だ。
とはいえ事業者にとって、デリバリーよりも店頭受け取りのほうが負担が少ないのは明らかだ。luckin coffeeの場合、新規出店には店舗の賃料という固定費用に加えて、デリバリー事業のコストがのしかかる。デリバリー注文が増えればそれだけコストが膨らむため、同社は店頭受け取りの比率を上げようと必死だ。一方スターバックスは、これまでの店舗にオンライン注文のシステムを加えるだけでよい。店舗受け取りの注文が急増すれば、人員補充や店舗の動線改善などの必要が生じるかも知れないが、現時点では運営コストを大幅に押し上げることはないとみられる。
しかし「啡快」サービスの導入で、スターバックスのオーダーが大幅に増加するかどうかは疑問が残る。店頭受け取りが適しているのはオフィスシーンだ。スターバックスが多く出店している商業エリアやショッピングモール内では、店内でゆっくり休憩したい人が多い。この点に早くから気づいていたのはluckin coffeeだ。同社の注文のうち店頭受け取りが60%にも上るのは、オフィスワーカーが利用しやすいビルの1階に小型店舗を入居させたからなのだ。
(翻訳・畠中裕子)
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