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中国の電子商取引(EC)大手アリババ集団が手掛ける「盒馬鮮生(Hema Fresh)」が朝食市場に打って出た。店舗名は「Pick’n Go」。その1号店が7月1日、上海市黄浦区のオフィスビル、歌斐中心(Gopher Center)にオープンした。主に朝食や飲料などを提供する店舗で、利用者はあらかじめ盒馬のアプリや店舗入り口のQRコードから注文し、店舗で商品を受け取る。店頭で注文し、レジで精算する手間が省けるので、朝食を買うために朝から長い列に並ぶ必要がなくなる。
Pick’n Goで提供する商品は朝食専門店とほぼ変わらない。包子(中華まん)や豆乳、煎餅(中華風クレープ)、ピザ、コーヒーなどが定番商品で、メニューは20を超える。価格帯も専門店と大きな差はないが、カウンター横の広告用ディスプレーでは、食材を全て盒馬から調達していることや盒馬が運営していることなどを強調し、違いをアピールしている。
今回のオープンに先立ち、盒馬の侯毅CEOは朝食など調理済み食品専門のコンビニエンスストアを上海で開店する意向を明かしていた。だが、Pick’n Goは店舗ではなく予約した朝食を受け取るための「インテリジェント・ロッカー」だ。店内にイートインスペースもない。中国の新興コーヒーチェーン「瑞幸咖啡(luckin cofee)」も同様の営業スタイルで、最大のメリットは朝の急いでいる時間帯に並ぶ時間を節約できることにある。
上海のオフィスビルである歌斐中心では、ホワイトカラーが大勢働いている。Pick’n Goはこのビルの地下2階に1号店を構えた。若者に人気のサブウェイやフライドチキンチェーンの「J&G Fried Chicken(継光香香鶏)」などのファストフード店と同じフロアになる。
こうした出店戦略は瑞幸咖啡などの「新小売り」企業と非常によく似ている。小規模店舗をネットワーク化し、特定のシーンに絞り込んだサービスを展開する。こうすれば開店コストを節約できる上、より多くの消費者に最大限アプローチすることができる。ただ、盒馬はPick’n Goについて、新業態の試みの一種に過ぎず、上海市内や中国全土で多店舗展開していくかは売上高によるとの考えを示している。
コンビニエンスストアの販売戦略は
朝食市場に切り込む盒馬の最大のライバルはコンビニだ。Pick’n Goの1号店がセブン-イレブンの近くにオープンしたことは興味深い。Pick’n Goの形態は、侯CEOが以前打ち出した「盒馬F2(fast&fresh)」の縮小版といえるだろう。盒馬鮮生は2017年末、売り場面積800平方メートルの「盒馬F2」を開店し、オフィスエリア向けコンビニ事業に乗り出した。
Pick’n Goの事業モデルはコンビニと極めて似ている。コンビニは店内にイートインスペースがあるものの、時間に追われているホワイトカラーは会社近くのコンビニで朝食を買い、そのまま出勤する場合が多い。予約した朝食を受け取るというPick’n Goの業態はこうしたホワイトカラーの行動原理に近い。
コンビニにはPick’n Goにない優位性がある。
客に関連商品の購入を勧めるクロスセルも得意とするコンビニは、取扱い商品の多さという利点を生かし、朝食のセットメニューを豊富にそろえることができる。それ以上に重要なのは先発優位性で、すでに膨大な数の店舗というリソースが蓄積されていることだ。規模の大きさはコスト面での優位性に直結する。ファミリーマートを例にすると、上海で1400店舗を展開しており、ほぼ全ての商業エリアやオフィスビル、住宅街を網羅している。ただ、Pick’n Goが短期間でこれほどの規模に達するのは難しい。盒馬も今のところ大規模な開店計画は立てていない。
盒馬は大規模店舗モデルの難しさに気付き、「盒馬mini」「盒馬F2」「盒馬菜市」「盒馬小駅」「Pick’n Go」と複数の業態を相次いで打ち出したものの、いまだ大きな進展はない。市場への新規参入において、激しい競争の中からいかにしてパイを奪うのか。開店コストを考えるのはもちろんのこと、この方向の戦略を練る必要もあるだろう。(翻訳・鈴木雪絵)
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