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米国の電子タバコブランド「JUUL(ジュール)」がついに中国市場への進出を決め、すでにEC大手「京東(JD.com)」と戦略提携を結んだことがわかった。遅くとも今年10月までには、JUULの電子タバコが京東のオンラインストアに並ぶ。ブランディングやマーケティングのために、今後15カ月で少なくとも1億ドル(約109億円)を投じることも明らかにした。
サンフランシスコに本社を構えるJUULはニコチンソルトを発明した企業で、2015年頃から頭角を現し始める。2018年12月には、米タバコ大手アルトリアグループから128億ドル(約1兆4000億円)もの戦略投資を受け、JUULの評価額は380億ドル(約4兆1300億円)に達した。見事ユニコーン企業となった同社は、世界最大の電子タバコブランドとしての地位を固めていった。
情報筋によると、JUULは2016年からすでに中国市場に目をつけていたという。しかし、当時は中国国内にまだ電子タバコ市場が見られなかったため、中国への進出計画は棚上げとなる。今年6月頃、JUULは米投資会社ベインキャピタルと提携を結び、初期のチーム編成や企業計画、サプライチェーンなど中国進出に関わる業務をベインキャピタルが担当することになった。
JUULは中国のEC大手とも接触を図っており、最初に提携に至ったのが京東だった。さらに中国で自社サプライチェーンの構築を目指し、電子タバコに関わる人材にもさまざまなルートでコンタクトをとっているという。JUULはこれまで蘇州市呉江地区にOEM工場を所有していたが、今後の中国市場のニーズを考えて、大規模生産を行える新工場を探すのではないかとの見方もある。
JUULはなぜこのタイミングで中国進出を決めたのだろうか。
2016年に比べて、今では中国でも電子タバコが広く認知されるようになった。米国では電子タバコへの規制が強まっているため、その包囲網をかわし成長を維持できる中国市場に参入することは、JUULにとって急務なのだ。
JUULは全く新しいタバコとして主に喫煙者の取り込みを狙っていたが、次第に多くの若者たちが「流行最先端のアイテム」として取り入れるようになった。ところがJUULは青少年の喫煙を助長すると各方面から批判を浴びることになり、後に自社のSNS公式アカウントを閉鎖、店舗での販売を停止するという事態に追い込まれる。それでも世間の反発は収まらなかった。
先日、サンフランシスコ市で電子タバコの販売に関する条例案が可決された。これは米国食品医薬品局(FDA)の認証を得ていない電子タバコの販売や配達を禁止するもので、2020年初めから施行される。サンフランシスコに本部を置くJUULはまさに矢面に立たされた格好だ。
JUULは2019年の売上高を前年の3倍となる34億ドル(約3700億円)と見込んでおり、この数字を達成するためには、海外進出がどうしても必要である。
2018年7月、JUULは英国に進出。ベインキャピタルのサポートや、現地のニーズに合わせた成分配合により、順調に勢力を拡大している。
急成長を遂げる中国市場も見過ごすわけにはいかない。今年6月に開催された京東の618セールでは、電子タバコの売り上げが去年の6倍に上ったほか、2019年上半期だけでも、電子タバコ業界で資金調達に成功した案件が200件以上あるなど、巨額のマネーが業界に流入している。
とはいえ英国市場とは異なり、中国の電子タバコ産業はまだ駆け出しの段階で、法整備も追いついていない。先日、新たな国家基準が早ければ今年10月に公布されると報じられた。もし法律で規制されることになれば、JUULにとっては手痛いダメージとなるだろう。
(翻訳・畠中裕子)
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