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大規模言語モデルは今年前半だけで80以上もリリースされたが、その発表会でテキストや画像生成のデモンストレーションを行わなかった少数派がファーウェイだ。
ファーウェイは7月7日、開発者向けイベント「Huawei Developer Conference 2023 」で大規模言語モデル「盤古3.0(Pangu 3.0)」を発表した。同社の常務取締役でファーウェイクラウドのCEOを兼任する張平安氏は、盤古を「遊ばず、仕事に専念するもの」と明確に定義した。
盤古は産業用に完全特化したモデルで、自然言語、マルチモダリティ、コンピュータービジョン、予測、科学技術計算(サイエンティフィック・コンピューティング)の基盤モデルを集約し、政務・金融・製造・鉱業などの業界向けに提供して、それぞれの細かなシナリオで活用できるようにしている。
今回の3.0では自然言語処理モデルがアップデートされた。顧客は業界ごとの需要に応じてパラメーター数1000億、380億、100億という複数のモデルを選べるようになったこともその一つだ。
「産業のために」と銘打ったリリースイベントは事実上、法人向け案件の一大発表会だった。実用性や活用例にスポットを当て、ファーウェイがこれまで繰り返し発表してきた政務、金融、製造業向けの応用についての説明した。
鉱業向けモデルは中でも比較的成熟したケースだろう。山東能源集団(Shandong Energy Group)で導入されたモデルはすでに8カ所の採掘現場で1000以上もの実際のシナリオに活用されている。金融業向けモデルは中国工商銀行と提携しており、モデルを試験導入した支店では行員の窓口業務が1件あたり5分以上も短縮したという。
ファーウェイの大規模言語モデルは確実に業界の人々の生産性を上げている。金融業向けモデルならアナリストに変わってデータを分析し、営業トークを作成してくれる。こうした機能は保険・証券・ファンド業界の人々も必要とするものだ。
製造業向けモデルも同様に業務プロセスを改善し効率を上げてくれる。ファーウェイの生産ラインにも導入されており、わずか1分で3日分の生産計画を作成するという。さらに、生産過程でもサプライヤーから調達した部品の配分や物流計画などの業務をスピードアップしてくれる。
これらの既存産業以外にも、盤古の技術は画像・動画編集アプリ「美図(Meitu)」の生成機能や企業情報検索サイト「天眼査(Tianyancha)」の調査アシスタント機能に活用されている。
長年にわたってさまざまな業界の法人顧客と取り引きをしてきた経験から、ファーウェイは豊富な業界データを取得してモデルのトレーニングに利用することができる。政務用モデルは公開データ・固有データを含め20万件以上のデータを使ってトレーニングされているという。
大規模言語モデルをめぐる競争において、ファーウェイは「金採掘者」と「水売り(金に群がる採掘者をターゲットに商売をする人)」の2つの顔を持つ。盤古の最大の強みは基盤となるチップからデータセンター、上層のアーキテクチャー、開発プラットフォームに至るまで自社で完結できる一体型のエコシステムを築いていることだ。
さらに、セキュリティ面を重視する法人顧客が自社データを用いて再トレーニングを行い、独自のモデルを構築するための開発スイートも提供している 。
ファーウェイクラウドではAI産業向けのクラウドサービス「Ascend(昇騰)」も立ち上げており、新たに貴州省の貴安新区、内モンゴル自治区のウランチャブにクラウドデータセンターを設けている。
盤古の顧客には招商銀行、上海証券取引所なども名を連ねているという。
(翻訳・山下にか)
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