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海外進出に積極的な中国企業の多くが今、日本市場に目を向けている。すでに日本でビジネスを展開している代表的な企業としては、IT大手のアリババグループやテンセント、TikTokのバイトダンス、通信機器大手のファーウェイ、ゲーム大手のネットイースや人気タイトル「原神」で知られるmiHoYo、家電大手のハイアールやハイセンスなどが挙げられる。
2023年は新たに日本市場に参入した企業も加わった。36Kr Japan編集部では、とくに注目すべき中国企業の日本進出についてまとめた。
(1)BYD:電気自動車
2023年に日本進出した企業で最も話題を呼んだのは、電気自動車(EV)最大手の比亜迪(BYD)だろう。10月に開催された「ジャパンモビリティショー」(旧、東京モーターショー)で披露したEVとその関連技術は大きな注目を集め、会場を沸かせた。
BYDはすでに、純電気自動車(BEV)の販売台数で米テスラと肩を並べている。23年7〜9月期の販売台数は、テスラが43万5100台、BYDは43万1600台で、両社の差はわずか3500台だった。
新車種も続々と発表しており、日本では23年1月末に中型スポーツ多目的車(SUV)「ATTO3(アットスリー)」(440万円〜)を、9月20日には2車種目のコンパクトEV「DOLPHIN(ドルフィン)」(363万円〜)の販売を開始した。さらに、24年春ごろには3車種目のEVセダン「SEAL(シール)」の発売を予定している。
日本政府は、35年までにガソリン車の新車販売を禁止するなど、EVシフトを推進している。しかし、日本では依然としてEVの販売台数は少なく、普及率はわずか1%程度だという。現在のところ、この極めて小さな市場では日産やトヨタなどの国産ブランドが圧倒的に強く、世界のEV市場を席巻するテスラでさえも、日本での販売台数は日産のリーフやトヨタのプリウスに遠く及ばない。
しかし、テスラだけでなく独メルセデス・ベンツなどの海外メーカーもEVの日本進出を加速しており、今後は日本のEV市場でのシェア争いが激化すると予想される。BYDは、25年に日本での販売台数3万台を目標としているが、果たして成功を収められるのか、期待しながら見守りたい。
(2)Cotti Coffee:コーヒーチェーン
中国の新興コーヒーチェーン「Cotti Coffee(庫迪咖啡)」は23年8月26日、日本1号店となる東大赤門店をフランチャイズ形式でオープン。9月24日には、本場そのものの中国料理店がしのぎを削る池袋西口に2店舗目となる直営店を開業した。いずれも初日から長蛇の列ができるほどの人気ぶりだった。
Cotti Coffeeは22年10月に中国で1号店を開業。1杯9.9元(約200円)という低価格で中国のコーヒー市場に旋風を巻き起こし、わずか10カ月で5000店舗を展開するまでに成長した。
創業者の陸正耀(チャールズ・ルー)氏は、中国コーヒーチェーン大手「瑞幸咖啡(luckin coffee)」の創業者で会長だったが、20年4月に粉飾決算が発覚し、退任に追い込まれた。そして現在、陸氏の新たな挑戦Cotti Coffeeは、順調すぎるほどの快進撃を続けている。
36Krの取材によると、日本のCotti Coffeeで使われるコーヒー豆は、すべて中国安徽省にある自社工場で焙煎したものだという。オープンから数週間は中国の本社からスタッフを派遣し、ノウハウの共有やトレーニングを実施する。中国国内はもとより、海外の店舗でも統一された品質と味の商品を提供できるよう、標準化を徹底している。
同社は、日本での店舗数を23年中に30店舗とし、24年には2000店舗とする出店目標を明らかにしている。日本のスターバックスは23年6月時点で1846店舗。目標が達成されれば、スターバックスの店舗数を超える可能性が高い。
(3)MIXUE:アイスクリーム&ティードリンクチェーン
日本市場に挑む中国のドリンクチェーンはCotti Coffeeだけではない。中国最大の店舗数を誇るアイスクリーム&ティードリンクチェーン「蜜雪冰城(MIXUE)」の日本進出は、日本で暮らす中国人の間で大きな話題になった。
MIXUEは1997年、河南省で小さなドリンクスタンドとして誕生した。中国ではソフトクリームを3元(約60円)、レモネードを4元(約80円)、タピオカミルクティーを6元(約120円)で提供している。安さを武器に地方都市を中心に店舗を広げ、現在は中国全土に約2万5000店舗を展開する。
中国ティードリンク大手の喜茶(HEYTEA)や奈雪的茶(NAIXUE)は、最も安い商品が1杯20元(約400円)程度なのに対し、MIXUEは価格の安さで圧倒している。最近は韓国やベトナム、マレーシアにも進出するなど海外展開を加速しており、その流れに乗って23年に日本にもやって来た。
23年夏、MIXUEは東京で原宿店、池袋店など数店舗を相次いでオープンした。実際に訪れてみると、「雪王マウンテンソフト」は160円、「フレッシュレモネード」は260円、「高山四季香」や「原葉紅茶」がたった100円で提供されていた。
今後はフランチャイズ方式で店舗数を拡大する計画で、23年中に15店舗、28年ごろまでに1000店舗を目指す方針を明らかにしている。24年には、香港取引所で新規株式公開(IPO)し、約10億ドル(約1500億円)を調達する計画だという。
(4)Temu:格安越境EC
23年に入ってから、激安価格でアパレルや生活用品を販売するショッピングアプリ「Temu(ティームー)」の広告を日本でも頻繁に見かけるようになってきた。
Temuは、中国電子商取引(EC)大手の拼多多(Pinduoduo)が手がける越境ECプラットフォームだ。22年9月に米国でサービスを開始してから破竹の勢いで市場を拡大し、わずか1年足らずで日本を含む世界47カ国に進出。あっという間に米アマゾンや中国発のファストファッションEC「SHEIN(シーイン)」の手ごわいライバルに成長した。
すさまじいスピードで世界を席巻する背景には、超低価格な商品ラインアップだけでなく、巨額の費用をかけたマーケティングとプロモーション戦略がある。
23年7月に日本上陸を果たしてからは、予想どおりの目覚ましい成果を上げている。米調査会社「data.ai」が発表した23年1〜9月の世界のショッピングアプリのダウンロード数ランキングでは、SHEINが首位に立ち、Temuはアマゾンを抜いて2位に躍り出た。また、日本のショッピングアプリのダウンロード数ランキング(7月1日〜11月2日の124日間)で、Temuが首位となったのは計101日だった。11月上旬時点の累計ダウンロード数は400万回を記録した。
Temuは、24年のGMV(流通取引総額)目標を、23年の2倍以上の300億ドル(約4兆4000億円)に設定している。
続き:EVのBYDだけじゃない!編集部が2023年に注目した日本進出の中国ブランド8選(下)
(36Kr Japan編集部:WANG・田村広子)
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