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中国人留学生の増加やコロナ禍でのテナント料下落、海外旅行に行けない日本人の非日常需要など複数の要因が絡まり、ブームが続いてきた“ガチ中華”。業界関係者によると首都圏だけで350店舗ほどが出店しているという。だが、コロナ禍の収束に伴い淘汰が始まっており、2024年はガチ中華のオーナーが業態転換を図る“脱中華”の動きが加速しそうだ。
雑居ビル高層階店舗は正念場
ガチ中華と言えば池袋だったが、2022年から上野エリアでも出店が相次ぎ、2023年もその流れが続いた。同年は上野・御徒町で10店以上のガチ中華店がオープンした。
ガチ中華の上野シフトは、コロナ禍の影響でテナント料が安くなっていたことや、アフターコロナを見据えたインバウンド客の集客を見込んだ投資、中華物産店が多く集まっていることで食材の調達が容易であることなどが理由だった。2023年もガチ中華ブームが継続したため、トレンドに乗ろうと上野エリアへの出店が活発だったが、立地の良い1階や低層階に出店できた2022年から一転し、雑居ビルの高層階での出店が目立った。高層階に出店した店は何か特徴があればいいが、差別化ができなければ集客が難しいので2024年以降の動向には注意が必要だ。
ココナッツドリアン鍋、激安カフェチェーン……
火鍋や四川料理といったガチ中華「定番」ジャンルの新鮮さが薄れた2023年は、差別化を模索する動きも続いき、黒竜江省チチハル名物のスパイスと野菜や酸菜を一緒に焼いて食べる焼肉の店や、椰子(ココナッツ)鶏火鍋にドリアンを入れた榴蓮(ドリアン)椰子雞火鍋など尖った店が開業した。
中国のコーヒーチェーンのCOTTI COFFEEや激安タピオカドリンクスタンドのMIXUE(蜜雪氷城)、フライドチキンチェーンの正新鶏排など、中国で展開する有名チェーン店の日本進出も相次いだ。これらの店はフランチャイズで展開しているケースがほとんどで、中国本社の海外展開の意欲と、飽和状態となっているガチ中華と競争軸をずらして業態を広げたい在日中国人オーナーの思惑が一致したと考えられる。
火鍋から国産牛焼き肉店へ
2024年はガチ中華内での差別化ではなく“脱ガチ中華”に舵を切る店が増えると予想する。実際、2023年後半から日本人向けの店に転換する“元ガチ中華”店が現れている。一世を風靡したガチ中華フードコート「沸騰小吃城」と同じビルに入居していた火鍋店「沸騰三国」は11月に閉店し、12月に国産牛を扱う焼肉店に業態変更して再オープンした。11月末に高田馬場にオープンした「ラーメンセンター炎」は、看板メニューこそ麻辣刀削麺であるものの、店の外見は家系ラーメンのような見た目で、醤油ラーメンや鶏チャーシューマヨ丼などを提供する“半ガチ中華”で、ターゲットは明らかに日本人客だ。
首都圏200店舗以上のガチ中華店にメニュー端末を提供する株式会社iDの楊営業部長は「首都圏のガチ中華が350店舗ほどに増えた結果、飽和現象も起きています。2022年から中華料理店だけでなく焼肉屋や居酒屋を経営する中国人が増え、そういった店にメニュー端末を導入する機会も多いです」と話す。
インバウンド狙い、ガチ中華飽和による業態転換、さらには腕利きの料理人不足などを背景に、客が手を動かす焼肉や複雑な調理不要で営業可能な居酒屋に切り替える中国人が増えているのだろう。
作者:阿生
東京で中華を食べ歩く26歳会社員。早稲田大学在学中に上海・復旦大学に1年間留学し、現地中華にはまる。現在はIT企業に勤める傍ら都内に新しくオープンした中華を食べ歩いている。
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