中国版GPS・北斗の商用化を進める「千尋位置」、評価額が3000億円超に

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リアルタイムの精確な測位サービスで中国トップクラスの「千尋位置(Qianxun Spatial Intelligence)」がこのほど、国有資本の北京信息産業発展投資基金などから資金を調達し、評価額(企業価値)が160億元(約3200億円)を超えた。今回の資金調達に成功したことは、同社の技術力と市場の将来性に対する高い評価や、ハイレベルな測位の商用化に大きなポテンシャルがあることの表れだ。

2015年に設立された千尋位置は、中国独自の衛星測位システム「北斗」が持つ測位能力の精密化とスマート化を進め、一般の企業や消費者が使えるサービスへの転用に注力してきた。米国のGPSやロシアのGLONASS、EUのGalileoとの互換性がある北斗の測位データをベースに、世界に5000以上ある静止衛星型および地上型の衛星航法補強システムや、独自開発の測位アルゴリズムを通じて、センチメートル級の測位、ミリメートル級のセンシング、ナノ秒級の計測といった技術に基づくサービスを提供している。

自動運転車両の位置をセンチメートル単位で提供 アリババ傘下高精度情報サービス「千尋位置」

AIの規模がここ2年ほどで大きく拡大するのに伴い、こうした技術の活用シーンは広がっている。

太陽活動が活発化すると地球の電離層に乱れが生じ、地球の衛星測位・ナビゲーションシステムにも影響が及ぶ。電離層が変化した状況でも、可用性と精度の高い測位サービスを提供するには、衛星測位システムの妨害となりうる状況を正確につかまなければならない。

千尋位置は今年6月、電離層や対流圏など大気圏の活動をリアルタイムで監視・推論できる業界初の「大気推論大規模モデル(Atmosphere Inference Large Model)」をリリースした。先進的な拡散トランスフォーマー(DiT)のアーキテクチャを採用したこのモデルは、通信や衛星航法・測位の分野でサービス提供を目指している。革新的な技術を活用することで、ハイレベルな測位サービスの精度と信頼性を大きく高め、測量・地図作成、産業用ドローン、精密農業、自動運転などの分野に革命的な変化をもたらすことが期待される。

同社は幅広い分野で着実に事業を展開し、自動運転の分野では、中国で唯一の高精度な測位サービスプロバイダーとなっている。ドイツ系自動車メーカーや広州汽車(GAC)、上海汽車(SAIC)、理想汽車(Li Auto)、小鵬汽車(Xpeng Motors)、智己汽車(IM Motors)など40社あまりのメーカーと提携し、搭載車種は30以上、搭載予定車種は100以上で、160万台を超える運転支援機能付き自動車にサービスを提供している。

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また、哈羅(Hellobike)や美団(Meituan)などが運営する600万台のシェアサイクルに、あらゆるシーンに対応可能なサブメートル級の測位サービスを提供している。専用チップをシェアサイクルに埋め込めば、車両のリアルタイム測位の精度が上がり、誤差は10メートルから1メートル未満に縮小されるという。さらに、運営管理プラットフォームが車両の正確な位置をリアルタイムに把握することで、違法駐輪問題の解決にもつながる。

このほかに、ファーウェイ(華為技術)や栄耀(Honor)、シャオミ(小米)、OPPO、vivoなどスマホメーカーとの提携では、3000万台に上るスマホの道案内をサポートし、ユーザーにより精確なナビゲーションサービスを提供している。

千尋位置は、インフラからサービス、デバイス、ソフトウエアの全てを揃えたハイレベルな測位サービスを手がける世界初の企業となった。衛星と地球、クラウドとチップ、ソフトウエアとハードウエアの統合という3つの技術力で、より高品質なサービスを保証する。陳金培CEOは、北斗と技術力をベースに、クラウドコンピューティングとビッグデータを手がける企業を目指すと語った。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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