中国のレドックスフロー電池投資ブーム、昨年から一転今年は冷え込む

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2023年は、業界では「長期エネルギー貯蔵投資(LDES)の元年」と呼ばれ、1年間で中国のレドックスフロー電池の累積設置容量は290MW(メガワット)/1175MWh(メガワット時)に達し、明るい見通しと急速に拡大する市場規模により、一時的に多くの投資家から注目を集めた。

長城証券(China Great Wall Securities)の統計によると、2023年の中国におけるレドックスフロー電池技術関連の投資案件は15件あり、投資額は29億8000万元(約625億円)に達した。

しかし、2024年に入ってから、レドックスフロー電池向けの投資状況は急変した。 長城証券によると、8月末までに、レドックスフローを含む国内における長期エネルギー貯蔵向けの投資案件は、わずか5件にとどまり、2023年のブームより大幅に細っている。また、一つのプロジェクトの投資額も大きく変化している。

2023年、レドックスフロー電池企業は頻繁に大規模投資を受け、複数のプロジェクトが1億元(約21億円)以上の資金を調達した。バナジウムレドックスフロー電池のユニコーン企業「大連融科儲能技術発展(Dalian Rongke Energy Storage Technology Development)」は、シリーズB+で10億元(約210億円)の資金調達に成功した。 また、上海証券取引所のハイテク企業向け市場「科創板(スター・マーケット)」に上場しようとしており、うまく行けば、バナジウムレドックスフロー電池業界初の上場企業となる。大連融科のほかにも、 スター企業の星辰新能(Xingchen New Energy)、緯景蓄能(Weijing Energy Storage Technology)も億元単位(約数十億円)の資金を得て、 いずれも評価額は数十億元〜数百億元に達している。

長寿命で安全性高い「レドックスフロー電池」 中国蓄電メーカー、実用化に向けて挑戦

しかし、今年上半期、レドックスフロー電池の新興企業の投資額はほとんどが1000万元(約2億円)のレベルである。投資の冷え込みの背景は、もちろん主要市場が下落する環境の大きな流れと無関係ではないが、ただ一方では、レドックスフロー電池の大規模な実用化における苦境も反映している。

中国のレドックスフロー電池、再エネ普及で市場拡大 海外開拓を視野に

レドックスフロー電池の投資ブームは、その安全性と長時間エネルギー貯蔵分野における大きな利点と密接な関係がある。中国化学・物理電源業界協会(CIAPS)が作成した「2024年中国レドックスフロー電池産業発展白書」によると、レドックスフロー電池は、電池本来の安全性、寿命のサイクル、拡張柔軟性、環境適応性など多くの面で独自の利点と商業化の可能性を示している。

しかし同時に、レドックスフロー電池はコスト面、製品の未熟さ、プロジェクトでの問題の多さなどの課題に直面している。

一時期、レドックスフロー電池は「リチウムイオン電池よりも低コストが期待できる」というセールスポイントで注目を集めた。しかし、実際のデータを見ると、リチウムイオン電池のコストが0.8元(16.8円)/Wh(ワット時)以下まで下がっているのに対し、現在のレドックスフロー電池のシステムコストはまだ2~3元(42~63円)/Whであり、太刀打ちするのは難しい。

レドックスフロー商用化、コストと苦闘 中国・ENERFLOW

また、レドックスフロー電池企業の製品の多くはまだ実験室の段階にとどまっており、統一された技術標準と透明性の高い製品性能データが不足しており、実際のプロジェクトでレドックスフローフロー電池の実用性の効果を評価することが厳しく、投資家の懸念が高まっている。現在、レドックスフロー蓄電プロジェクトの実際の運用では、電池性能の問題が頻繁に露呈しており、特に安定性と耐用年数の問題が大きいと報告されている。

さらに、2023年には中国国内のレドックスフロー蓄電のモデルプロジェクトがキロワットレベルからメガワットレベルに拡大されており、将来的に業界の爆発的な成長による分け前を期待して、レドックスフロー電池各社は積極的に生産拡大を進めている。しかし、これらの拡張計画のほとんどは、資金調達の目標に基づいて策定されているため、多くの企業の生産能力計画は、技術開発の進捗状況や市場の需要よりも先行している。

長城証券のエネルギー貯蔵分野のアナリスト・陳梓銘氏は、「2024年は、われわれの業界にとっては激動の時期だと考えている。レドックスフロー電池にとっては現実的な実務に励む年であり、成熟した技術研究開発、コスト削減への明確な道筋、確かなプロジェクト経験を持つ企業だけが、長期エネルギー貯蔵の発展をリードし続けることができる」と結論づけた。

*2024年10月17日のレート(1元=約21円)で計算しています。

(36Kr Japan編集部)

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