「AI×臓器チップ」で加速する新薬開発、中国スタートアップがサノフィと提携

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ヒトの臓器やその機能を再現する「臓器チップ」を手がけるグローバル企業「耀速科技(Xellar Biosystems)」がこのほど、血管毒性評価に使用する臓器チップモデルの開発をめぐり仏製薬大手サノフィと提携を結んだ。

臓器チップとは、小さなチップ上に臓器の微小環境や機能を再現したもので、疾病のシミュレーションや医薬品開発に役立てられる。従来の動物実験が抱えていた倫理的な問題をクリアでき、開発コストの大幅な削減にもつながる。医療系投資会社の高特佳(GTJA Investment)によると、動物実験にかかるコスト(飼育費用を除く)は6500~80万ドル(約100万~1億2000万円)と、ケースによって大きな開きがある。臓器チップを使用した実験なら、コストを動物実験のわずか10%に抑えることができるという。調査会社Allied Market Researchは、2030年には臓器チップの市場規模が16億ドル(約2400億円)を超えると予測する。

ここ数年の技術進歩に伴い、臓器チップの活用分野も拡大を続けている。耀速科技を創業した謝鑫氏は、臓器チップに対する業界の期待が「動物実験に代わるもの」から「より完全で科学的な非臨床試験モデルを構築するもの」へと変化していると指摘し、臨床段階に進んだ医薬品パイプラインの精度を高めることができるほか、コスト削減と効率化が望めると語る。

AI×臓器チップで新薬開発加速

耀速科技は、臓器チップにAI技術を組み合わせることに注力するハイテク企業として、2021年末に設立された。米国ボストンや上海市、深圳市、鄭州市などに拠点を置き、複数の病院や科学研究所と共同で臓器チップの臨床応用センターを建設している。謝氏は、臓器チップにAIを組み合わせることは、次世代の臓器チップメーカーに必須のスキルだと考えており、同社はすでにこの分野で大きな進展を遂げているという。

耀速科技とサノフィとの提携では、血管毒性評価に使用する臓器チップモデルを共同開発することになっており、サノフィのiDEA Awardsの助成を受けて研究が進められる。

血管毒性は新薬を開発する際に安全性を評価する重要な指標だ。これまでは主に動物モデルに頼ってきたが、動物種が異なることから実験結果をそのままヒトに適用することが難しく、臨床試験の段階で失敗に至るケースが多かった。臓器チップはマイクロ流体工学やバイオニクスを通じてヒト血管の微小環境を正確に再現し、それによって毒性評価の効率と精度を高めることができる。

耀速科技は血管関連の臓器チップ研究で確かな技術力を備えており、積極的にAI活用を進めている点がサノフィに評価された。関連データベースを構築することで、医薬品の効果を判定する新たな方法を設計し、製薬会社に信頼性の高い技術サポートを提供できるようになる。

AI技術が急速に進歩するのに伴い、臓器チップ業界も新たな活用場面の模索を続けている。ここ2年の間に、海外の臓器チップメーカーの多くがAI技術を取り入れており、新たな医薬品パイプラインの発見につなげることを目指し、臓器チップとAIを組み合わせてデータベースを構築している。耀速科技では、今後発見した新薬パイプラインを大手製薬会社に譲渡することで、新たな成長曲線を描きたいと考えている。

謝氏によると、海外の製薬会社はこの分野に対する意識が高いため、現在は海外事業がメインになっているという。今年からは国内の製薬会社との提携にも力を入れ、AIや臓器チップを通じて新薬の上市を加速させる方針だ。

耀速科技は2024年7月に追加のエンジェルラウンドで1億元(約20億円)を調達し、今年末にはプレシリーズAの資金調達を計画している。調達した資金で、技術開発や市場開拓をさらに進めていくという。

*1元=約21円、1ドル=約151円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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