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自動車の電動化やスマート化が進むにつれ、従来のバス技術をベースとした車載ネットワークでは、自動運転やスマートコックピットに必要なデータ伝送に応えるのが難しくなってきた。こうした中、技術的に優れている車載イーサネットを採用する自動車メーカーが増え始めている。
車載イーサネットには大きく3つの特長がある。まず、理論上の帯域幅が100Mbpsから10Gbpsと幅広く、伝送効率を大幅に向上させられる。また、カテゴリー5のケーブルで100BASE-TXのイーサネットを構築すれば、必要なケーブルの総量が減り、配線コストが下がる。さらに、電磁両立性(EMC)を最適化した設計によって消費電力を抑えつつ、信頼性が高く電磁干渉(EMI)が少ない車載システムを構築できる。
中国自動車技術研究センター(CATARC)によると、中国の車載イーサネットPHYチップの出荷量は2021年から25年にかけて、毎年2ケタの伸び率で増加し、25年の搭載量は2億9000万枚を超える見通しだ。
その背景には、次の3つの理由がある。第一に、先進運転支援システム(ADAS)では、各種センサーのリアルタイム統合(センサーフュージョン)が求められ、低遅延かつ安定した通信インフラが不可欠であること。第二に、スマートコックピットや拡張現実ヘッドアップディスプレイ(AR-HUD)などのアプリが、継続的に広帯域(ブロードバンド)を必要とすること。第三に、車両の電気・電子(E/E)アーキテクチャに次世代構成の「ゾーン型」を採用するケースが増えていることだ。
現在、車載イーサネットPHYチップ市場は米MarvellやBroadcom、オランダNXPなどの数社がグローバルにシェアを握っている。しかし、2017年に設立された中国のスタートアップ「裕太微電子(Motorcomm Electronic Technology)」は、新興勢力として急速に台頭してきている。
同社は、100Mbps/1Gbps/2.5Gbpsに対応するイーサネットPHYチップを独自の技術で開発・量産しており、中国国内では数少ない大規模供給が可能な企業のひとつだ。また、製品は自動車向け機能安全規格ISO 26262の「ASIL D」、車載用集積回路(IC)品質規格AEC-Q100の「グレード1」など、国際的にも厳格な認証をクリアしている。また、相互接続性や電磁両立性に関する複数のテストにも合格しており、グローバル水準の技術力を持つ。
裕太微電子の製品は、一般量産車から高級車までさまざまな車種に対応し、車両制御やスマートコックピット、ADASなどで活用されている。これまでに徳賽西威(Desay SV)や広汽乗用車(GAC Motor)、北汽集団(BAIC)、奇瑞汽車(Chery)、長城汽車(GWM)、吉利汽車(Geely)などの主要自動車メーカーやティア1サプライヤーに供給されている。
同社は、4月23日から上海市で開催される「上海モーターショー2025」で、新製品の車載イーサネットスイッチチップ「YT99」シリーズを発表する予定だ。
近年、中国ではチップの製造プロセスやパッケージング技術の進化が加速しており、新エネルギー車メーカーを中心に、チップを含むサプライチェーン全体の内製化ニーズが高まっている。これまでは海外メーカーが車載チップ市場を独占していたが、今後は裕太微電子のような国産プレイヤーがシェアを伸ばしていくとみられる。
(翻訳・大谷晶洋)
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