中国系AI「Manus」出資で米著名VCに審査の動き──対中投資規制違反の可能性

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米シリコンバレーの著名ベンチャーキャピタル(VC)ベンチマークキャピタルが、人工知能(AI)エージェント「Manus」を開発した中国の蝴蝶効応 (Butterfly Effect)に出資したことについて、米財務省が審査に乗り出したという。米メディアSemaforが関係者の話として伝えた。

この審査は、2023年に発令された「対外投資安全保障プログラム(Outbound Investment Security Program)」に基づき、米国の投資家が中国の半導体や量子コンピューティング、AIなど特定のハイテク産業に投資することを規制する制度で、取引によっては当局への届け出が義務付けられ、取引自体が禁止される場合もある。同制度は25年1月2日に正式に発効した。

米政府、半導体やAIなどの対中投資を規制 25年1月発効

Manusは完全自律型の汎用AIエージェントで、一気に世界の注目を集めた。開発元の蝴蝶効応はこのほど、ベンチマークが主導する資金調達ラウンドで7500万ドル(約110億円)を調達し、評価額が5億ドル(約740億円)に跳ね上がったと報じられた。

話題の中国発AIエージェント「Manus」親会社、110億円調達 日本にも拠点開設へ

ただし、蝴蝶効応は独自のAIモデルを開発しておらず、米Anthropicの「Claude」やアリババグループの「通義义千問(Qwen)」など既存モデルを活用してAIエージェントなどを開発している。また、法人登記はケイマン諸島で、開発拠点も米国、シンガポール、中国などに分散しているため、ベンチマークの顧問弁護士は「今回の出資は規制の対象外」との見解を示している。

とはいえ、シリコンバレーの投資家からは疑問の声が上がっている。米VCファウンダーズ・ファンドのパートナー、デリアン・アスパルホフ氏はX(旧Twitter)に「ベンチマークのパートナー企業を中国の”資産”だとは言わないが、中国にとっては間違いなく”資産”だ」と投稿。また、日本の生成AIユニコーン「サカナAI」への初期投資で知られる米ラックス・キャピタルの共同創業者ジョシュ・ウルフ氏も、この投資に対して懐疑的な姿勢を示した。

現時点で、米財務省はベンチマークや蝴蝶効応に対して正式な判断は下していない。だが、今回の審査は米国の対中投資規制の本格運用後初のケースとして注目されており、結果次第では今後の米企業による中国テック企業への投資に影響を及ぼすとみられる。

*1ドル=約147円で計算しています。

(36Kr Japan編集部)

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