中国EV「哪吒汽車」、深刻な経営危機に 給与未払いで従業員がCEOを囲む異常事態に

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中国メーカー「合衆新能源汽車(Hozon New Energy Automobile)」が展開する新興電気自動車(EV)ブランド「哪吒汽車(NETA)」は深刻な経営危機に陥り、給与の大規模な未払い問題が表面化し、業界内外から注目を集めている。

6月11日、中国の交流サイト(SNS)で複数の動画が投稿され、方運舟会長兼CEOが、給与払いを求める従業員にオフィス内で取り囲まれる様子が暴露された。翌日、全従業員に対し即時の在宅勤務が指示され、本社オフィスの入退室管理システムを全面的に停止したという異例の対応が取られた。

ネットで拡散される本社オフィスの様子

複数の元従業員は、2024年から給与の支払遅延や解雇補償の不備など問題が発生し、資金不足の兆候が以前から現れていたと明らかにした。

一時は販売トップ、今は存亡の危機——哪吒汽車の転落に見る中国EVの過酷な現実

6月12日夜には、「哪吒汽車の再建に関する声明」がネット上で流れ、親会社の合衆新能源汽車が再建手続きに入ったと伝えられたが、この声明は同社の公式ホームページなどでは発表されてはいない。13日に関係者が、この内容は公式発表ではなく、会社で策定した対応策の一つであり、最終案ではないと説明した。

哪吒汽車はかつて、中国の新エネルギー車(NEV)市場における注目銘柄だった。2022年の年間販売台数は15万台を突破し、一時的に新興EV企業ランキングで首位に立った。しかし、2023年以降、販売台数が減少傾向となり、年間納車台数は12万7500台に減った。2024年はさらに急減し、6万4500台にまで落ち込んだ。2024年12月には張勇CEOが辞任し、CEO職は創業者である方運舟氏が兼任することになった。

哪吒汽車は自動車の販売開始以来、一度も黒字化を達成しておらず、深刻な資金不足に直面している。その局面を打開するため、積極的に資金調達を模索したが、芳しい成果は上がっていない。

方CEOは就任後、内部書簡で「新規株式公開(IPO)の実現に全力を尽くす一方で、今後2~3年で国内と海外の売上をそれぞれ50%ずつに拡大し、2025年に粗利率を黒字にし、2026年に会社全体で黒字化を目指す」と表明した。しかし、これらの目標の達成は容易ではない。

コスト削減のため、直営店舗の一部も順次閉鎖しているが多くの購入者から顧客からは「修理対応が受けられない」といった苦情が多数寄せられている。車両修理に必要な専用部品が長期にわたって不足し、修理期間が際限なく延期され、車両は「故障したまま」放置される状況が続いている。中国国内での事業不振は、海外市場での展開にも影響を及ぼしている。報道によると、タイ法人では人員削減も開始され、当初50人規模の本社と工場のチームが40人程度に減少し、さらに人員削減が続いている。現地のディーラー数は3月のピーク時の66店舗から5月末には53店舗に急減した。

哪吒汽車の現在の苦境は、長期にわたる高コスト体質と低価格戦略と密接に関連している。中国市場の激しい価格競争の中で、哪吒汽車は一定の市場シェアを獲得したものの、ブランド力や販売網の構築に十分な投資ができず、顧客に対する魅力が低下し、利益率が下がる状態が続いた。外部資金の調達も困難となり、高コストの経営を維持できなくなる構図となった。

哪吒汽車は、脱落した多くの中国EVメーカーの典型的な例といえる。かつての新星として急成長を遂げた企業が、現在では従業員への給与支払いが困難になり、顧客へのアフターサービスが崩壊する状況に陥ったことは、中国のNEV市場における過当競争の激化と、新興メーカーが生き残る難しさを浮き彫りにしている。

しくじり中国EVが失敗した理由。成功から一転した「哪吒汽車(Neta)」から学ぶ、日本企業には耳の痛い話も

(36Kr Japan編集部)

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