仮想通貨マイニング機器世界2位の「カナン」がナスダック上場へ、AI事業と海外進出を進めていく

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11月13日(中国時間)、仮想通貨マイニング機器メーカー世界2位の「カナン・クリエイティブ(Canaan Creative、嘉楠耘智信息科技)」が10月29日に米証券取引委員会(SEC)に提出したIPO目論見書を更新した。米国預託株式(ADS)をナスダックへ上場する計画で、もともとの4億ドル(約440億円)の調達目標を1億ドルまで修正した。幹事証券会社はクレディ・スイス・グループ、CITIグループ、華興資本(チャイナ・ルネッサンス・ホールディングス)、招銀国際金融(CMBインターナショナル・キャピタル)。IPOが実現すれば、独自の知的財産権を有するAIチップの開発を手がける中国企業として初の米国上場となり、なおかつ世界大手マイニング企業としても初の上場となる。

世界2位のマイニング機器メーカー

カナンはビットコインの採掘機器製造を手がける大手企業だ。目論見書によると、董事長兼CEOのN.G.Zhang(張楠賡)氏を含む創業チームは2013年1月、ASIC(エーシック、特定用途向けIC)を搭載した暗号通貨採掘機の初代機種を開発・発売した。この成功体験により、同社の技術・資本両面での基礎が固められた。

米調査会社フロスト&サリバンによると、カナンは今年6月末時点で世界2位のマイニング機器メーカーだ。同社製品の世界シェアは21.9%に達している。さらに、現在ではチップ技術の研究開発にも注力している。

RISC-Vコアのエッジ向けAIチップの量産に世界で初めて成功

カナンは昨年9月、初代AIチップ「KENDRYTE K210」を発表し、RISC-Vコアのエッジ向けAIチップとして業界初の商用化および量産化に成功した。RISC-Vは他のICアーキテクチャと異なり、ライセンス料も不要でフレキシブルかつオープンソースのため、スマートホーム、スマートリテール、自動運転分野などのIoT機器への導入に適している。

集積回路設計の全プロセスを自社で管理

カナンは量産における豊富な経験を有する。2017年~2019年上半期までの2年半で1億3000万個以上のASICを生産し、ブロックチェーン領域への活用を通じて収益化にも成功した。また、長年ASICの設計に携わったことで多くの知的財産権を所有し、専門知識やパラメーターの蓄積を進めてきた。目論見書によると、今年6月末時点で同社が中国国内で取得した特許件数は59にも上る。

堅固な開発チーム

カナンで研究開発を担う中核チームは一貫して固定のメンバーで安定した体制を築いており、この4年間を創業者と伴走してきた。今年6月末時点で研究開発に携わるのは約130人で、平均7年の業界経験を有する人材が集まる。技術を原動力とする企業として、従業員の46%を研究開発人員が占める。また、昨年は総収入の7%にあたる2億元(約30億円)を研究開発に投じた。

カナンの創業者であり董事長兼CEOのN.G.Zhang氏

ビットコイン相場回復で業績が大幅改善

今年に入りビットコイン相場が回復したことでAIチップによる収入も急増し、業績は改善している。

カナンの売上高は2017年の13億810万元(約200億円)から2018年の27億530万元(約420億円)へと106.8%の伸び幅で急増している。同社は目論見書でも「ビットコイン相場はマイニング機器市場の需要や相場に直接影響する」と言及しており、今年第2四半期にビットコイン相場が復調したことによる業績の大幅な改善に期待している。

さらに目論見書によると、同社のAI関連プロダクトは現在、主にエッジ向けAIやAIチップの分野に照準を絞っている。フロスト&サリバンはエッジAI用ASICの年成長率は今後さらに拡大し、市場シェアも伸ばしていくと予測している。昨年のシェアは21.3%だったが、2023年には40.9%にまで拡大するとの推算だ。

カナンは今年6月末時点でAI関連製品の開発者向けに2万6000個を超えるKENDRYTE K210や開発モジュールを提供しており、提供先の大多数が海外となっている。また、AIアルゴリズムを手がける20社以上と協業を進めており、コンシューマー向けのトータルソリューションを共同開発している。

今後の展望と調達資金の用途

カナンは今後もマイニング機器の機能向上に努めるとともに、AI関連事業の比重を増やし、SaaSの提供や海外進出を進めていくという。

また、目論見書によると、IPOで調達した資金の用途は主に以下の5つだ。

1)スーパーコンピューティング関連ソリューションにおけるリーダー的地位の強化。
2)高効率IC設計への投資継続。
3)新たなAI関連製品の発表。AI関連のアプリケーションプログラム向けにAIチップやASICの設計・提供を引き続き行うとともに、エッジコンピューティングに注力し、スマートリテールや自動運転分野への活用を探っていく。2020年第1四半期までに第2世代AIチップ製品の量産を開始し、下半期には第3世代12nmチップを発表する計画だ。同社のAIチップ事業はまだ初期段階だが、将来的にはマイニング業に並ぶ存在まで拡大させる。
4)AI製品を基礎としたプラットフォームの商業化。AIチップをハードウェアの中核とし、AIを活用したSaaSを構築し、ハードウェア・アルゴリズム・ソフトウェアを統合したサービスをエンドユーザーに提供するとともに、完全かつ開放的なエコシステムを築いていく。
5)海外事業の拡大。

(翻訳・愛玉)

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