中科清能、液体水素・核融合・量子を支える「極低温技術」で大型調達

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新エネルギー技術を開発する「河南中科清能科技(Sinoscience Clean Energy Technology)」(以下、中科清能)がこのほど、政府系産業ファンドなどから数億元(数十億円)を調達した。資金は液体水素システム、トカマク装置の冷却システム、第3世代量子低温センシングシステムの開発と納入、スマート製造センター第2期部分の建設に用いられる。

中科清能は2022年6月に、中国広核集団(CGN)が合肥総合性国家科学センター・エネルギー研究院や河南投資集団(Henan Investment Group)などと共同で設立した企業。中国の未来のエネルギー産業を支える存在を目指し、核融合やグリーン水素、航空宇宙などの分野向けに、ヘリウムや水素を液化する低温装置とその運用サービスを提供している。

同社のコア技術は、中国工程院院士の李建剛氏が率いる磁気閉じ込め核融合の低温システム研究に基づくもの。コアメンバーは「EAST」「CRAFT」「ITER」など世界的に有名な大型核融合プロジェクトに深く関わった経歴を持ち、極低温システムの設計・納入・長期運用保守において際立った先行優位性を確立している。

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極低温技術は、水素エネルギーや核融合、量子技術、航空宇宙などの分野を支える重要な技術で、液体水素の貯蔵・輸送、トカマク装置の冷却システム、量子コンピューティング用低温プラットフォームなどに利用されている。ただし、中国で関連装置は長らく海外からの輸入に依存してきた。

業界の動向を見ると、水素エネルギー分野でグリーン水素へのシフトが急速に進んでおり、2025年には中国のグリーン水素プロジェクトの入札規模が前年比8倍に拡大する見通し。核融合分野への投資熱も高まっており、東方超環(EAST)や中国環流3号(HL-3)などの装置は商用化試験の段階に入っている。さらに、超伝導方式の量子コンピューティングでも極低温環境が必要とされている。

こうした現状を受けて、中科清能は装置本体からコア部品、ソフトウエア、エコシステムに至るまで徹底した国産化を進め、極低温装置の設計から納入までを一貫して担える国産の技術ソリューションを構築した。

2023年には、海南国際商業航天発射センターに中国では初となる日産1トン規模の水素液化装置を納入し、ロケット燃料を支える重要なインフラとしてすでに稼働している。また、国家規模の大型装置プロジェクトの入札にも相次いで成功し、極低温システムの建設を請け負うなど、国内トップクラスの実力と経験を持つサプライヤーとしての地位を固めた。

量子分野では、独自開発の第3世代低温センシングシステムが9テスラの高磁場環境での運用試験に合格しており、2026年にも製品として発表する予定だという。

同社の2025年の売上高はすでに1億元(約20億円)を超えており、受注残も数億元(数十億円)規模に達している。潘偉偉CEOは、中科清能の役割を「未来のエネルギーとコンピューティングシステムを支える低温インフラ」と位置づけ、コア部品の開発から始め、いずれはシステム定義や業界標準を策定する立場を目指すと語った。

今回の資金調達後は、技術モジュールの標準化と製品のプラットフォーム化をさらに推し進めるとともに、国家レベルの科学研究機関と共同研究室を立ち上げ、極低温分野における業界基準と国産化の道筋を具体化していく方針だという。

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*1元=約21円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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