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甘剣平(JP Gan)氏は投資界の名だたる人物であり、大手動画共有サイト「ビリビリ動画(bilibili)」、中国最大のO2Oプラットフォーム企業「大衆点評(現在の美団点評)」、美顔アプリ大手「美図(Meitu)」、今日頭条(Toutiao)傘下のバイトダンス(字節跳動)に買収された短編動画アプリ「Musical.ly(ミュージカリー)」、愛奇芸(iQIYI)に買収された動画ストリーミングサービス企業「PPS」、ソーシャルファッションEC「蘑菇街(MOGU)」、民泊プラットフォーム最大手「途家(TUJIA)」、自動車メンテナンスサービスプラットフォーム「途虎養車(Tuhu)」などに次々と投資してきた。甘氏は「フォーブス」が今年4月に発表した「ミダスリスト(Midas list、世界ベンチャー投資家ランキング)」の2019年度版で5位にランクインした。甘氏は過去にも同リストに連続で選出されており、今回が4度目となる。
「啓明創投(Qiming Venture Partners)」を離れて3カ月後の今年10月下旬、甘氏は自身が新たに設立した「渶策資本(INCE Capital)」の第1号ファンドで募集額を上回る約3億5200万ドル(約382億円)を調達したと発表した。LP(リミテッドパートナー)には世界トップクラスの財団、民間非営利団体によるファンドレイジング、ファミリーオフィスおよびマザーファンドが参加している。調達情報が発表された当日、36Krは甘氏に対する独自取材を実施した。彼の回答は、2019年のベンチャー投資界で主流となっている意見とは大きく異なるものだった。
――3カ月あまりで3億5000万ドル(約380億円)超の調達を実現されましたが、最も大きな試練となったのはどのような問題でしたか。
「今回の出資募集ペースは速く、調達結果は予想を超えた。しかし米中貿易摩擦が投資家に与えた不確定性や焦りは高まっている。とはいえ、大多数の投資家は依然として米中のデカップリング(分離)は起きないと信じており、中国は世界第二の経済体として長期的な投資を行っていく必要がある。より重要な点は、中国のベンチャーキャピタル業界が過去20年間に世界の投資家に巨額のリターンをもたらしていることであり、この点が中国ベンチャー市場に対する持続的な信頼性を決定づけている。率直に言って、私は過去10年あまりの間に10億ドル(約1100億円)超のリターンをLPにもたらしてきた」
――これまで20年間近く投資に携わってこられましたが、今年2019年は一つのサイクルのうちどのような位置にあるでしょうか。現在は資本にとって冬の時代だという見解に同意されますか。
「私から見れば、今年接触した創業者は依然として活気に満ちており、冬の時代だという感覚はない。私は2000年にこのベンチャーキャピタル業界に入ったが、真の冬の時代がどのようなものかについての見識を持っている。とはいえ、我々はその数年間にもシートリップ(携程)などの優良企業に対する投資を変わらず実施してきた」
――あなた方はインターネット消費分野にフォーカスされてきましたが、人口ボーナスの消失に加え、昨年登場した大規模なプラットフォームの登場も相まって、消費インターネット分野の伸びしろはすでに大きくないとの見方が業界内に多く見られます。
「90後、00後(1990~2000年代生まれ)の若い世代は、現在の中国で唯一、戦争や貧しさを経験していない。質の高い教育を受けたこれらの若者は金を遣うことを惜しまないが、彼らの消費はペットや二次元といった新たな分野でのトレンドを主導している。これらにより、新しくかつ巨大な投資チャンスが数多く誕生したとみている」
「中国には2008年の時点ですでにBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)が存在していた。当時の人々は、新しいプラットフォームなど誕生するはずがないとも言っていた。だが、美団点評(Meituan Dianping)、今日頭条、シャオミ(小米科技)など一連の企業がやはり現れた。私は、資金的サポートさえあれば優秀なプラットフォームが永遠に現れるとさえ考えている」
――孫正義氏のソフトバンク・ビジョン・ファンドについてどうお考えですか。
「彼らがさらに多額の出資募集および投資に成功するよう願っている。そうして初めて我々のような業界は新たな高みに達することができるからだ。私は彼らの成功を心から願っている」
――しかし、同ファンドおよび他の高額な株式投資は一つの問題を招いています。つまり、多くのユニコーンが上場後に一次・二次市場(プライマリーおよびセカンダリーマーケット)での評価額が大きく下がるというものです。この問題はあなた方のような早期投資家のリターンにどのような影響を及ぼしていますか。
「ウィーワーク(WeWork)の評価額は現在、450億ドル(約4兆8900億円)から8割減となる80億ドル(約8700億円)まで下がった。不合理な評価がようやく市場により調節されたということだ。私はこれこそが資本市場の偉大な点であると考える。私個人はあくまで自由市場の確固たる信者であり、市場の価値には必ず合理性があると信じている。市場参与者である我々は、絶えず変化する環境に基づき、投資および撤退のスピードやその手段を調整していくほかない」
――渶策資本の短期的・長期的目標について教えてください。
「目標はリターンの獲得、ただ一つだ」
(翻訳・神部明果)
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