テンセント、デジタルイノベーションが「インバウンド」を進化させる(CJTC2019 )

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テンセント、デジタルイノベーションが「インバウンド」を進化させる(CJTC2019 )

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日本政府観光局(JNTO)のデータによると、2018年訪日観光客3119万人の内、中国(香港・台湾除く)からの観光客数は838万人に上り、市場全体で初の800万人突破を果たした。さらに2019年の通年人数は去年を上回る見込みだ。

12月3日、一般社団法人日中ツーリズムビジネス協会は株式会社JTBと共同で「日中ツーリズムサミット2019」を開催した。 サミットの席上、テンセントIBG(インターナショナル・ビジネスグループビジネス・デベロップメント)事業部のシニアマネージャー叶志松氏、阪急阪神百貨店インバウンドマーケティング部シニアマネージャーの叶陽子氏、美団点評日本責任者の呉文抒氏が、「進化し続けるSNS・O2O・中国デジタルイノベーションのあるべき姿」について、パネルディスカッションを行った。ディスカッション後、36Kr Japanは叶氏に個別に話を聞いた。

日中ツーリズムサミット2019で講演している叶氏

訪日観光客のニーズ変化に応じた最強SNS「Wechat」の活用

人数、旅行消費額ともに増えてきている中国人観光客。彼らにとって、11億アカウントを超えたメッセンジャーアプリ「WeChat(ウィーチャット)」は生活に欠かせないものだ。そのため、インバウンド需要を狙う各業界がWeChat及びその関連サービスの活用を狙っている。

中国国外で初めて「WeChat Payスマート旗艦百貨店」に認定された阪急阪神百貨店は、2017年からWeChat傘下の決済サービス「WeChat Pay」を導入し、中国観光客向けにQRコードによる電子決済をスタートした。また、今年から、WeChatアプリ内のミニプログラム(個別にインストールやダウンロード不要で、WeChatアプリ上でそのまま使える小規模アプリのこと)を導入し、自社が扱う商品の事前注文を可能にした。事前予約と店頭受取の仕組みを作ることで顧客の待ち時間を短縮、ショッピングのストレスを軽減でき、店舗の売り上げ増加にも大きく貢献したという。

阪急阪神百貨店が開設したミニプログラムのページ

観光客は旅行時間が限られているので、いかにそれを有効活用できるかが大事になってくる。中国人観光客も、「爆買」の時代から買い物にそれ以上の時間をかけないようにシフトしてきた。そのニーズの変化を捉えたテンセントは、彼らの買い物時間の短縮と利便性向上を目指している。ここで叶氏は別の活用事例を挙げた。テンセントは、香港空港である化粧品ブランドの無人ロッカーを設置し、事前予約商品をそこで受け取ることができるようにした。ロッカーの解錠は顔認識、決済はWeChat内で完了させ、数秒で買い物が終わるとのこと。

訪日観光客だけでなく、在日中国人の需要も掘り起こせ

インバウンドにおいて、みなさんは訪日観光客に向けて「旅前」「旅中」「旅後」の施策をよく使われるが、実は日本に住んでいる在日中国人も無視できない存在だ、と叶氏は述べた。日本全国に約100万人規模の中国人滞在者がいる。そのうち、半分以上は首都圏に集中している。彼らのニーズをしっかり把握すれば、マーケティングの効果がさらに広がるだろう。例えば、中国にいる人は買い物リストを考える際、日本にいる友人に商品の「レビュー」を聞くことも多い。友人が「わからない」といえば、購入を諦める人は出る可能性がある。在日中国人向けに商品をPRすることで、インバウンドマーケティングを強化できる一面もあるとのこと。日本で暮らしている中国人たちに最も届きやすいのは、日本のメディアではなく、やはりWechatが一番強力なメディアだろう。

果敢にトライ・アンド・エラーを繰り返す

日本市場はポテンシャルの大きい市場だと指摘した叶は、日本市場に大きな期待をしているが、日本市場と日本企業は保守的傾向があることは否定できないと率直に語ってくれた。

何か新しいことに直面する際、中国企業は面白そうだからまずやってみようと考えるのに対し、日本企業は慎重に判断し、すべてのリスクを考慮したうえでの行動となるので、決断するまでかかる時間が長い。叶氏は、中国と日本は互いの特徴を知るようになったので、カルチャーショックを受けることはなくなってきた。しかし、テンセントが今後日本で積極的にビジネスを展開していくにあたり、日本のパートナーの協力は欠かせないので、ぜひ日本の企業と一緒に試行錯誤していきたいと述べた。

(文・Ai)

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