2025年中国自動車市場総決算、実力差鮮明に。2026年は「安売り」から「価値の競争」へ

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中国自動車市場の11月販売実績が公開され、今年も最後の追い込み段階に突入した。

2025年の自動車市場は全体として比較的安定して推移したが、新エネルギー車の普及やガソリン車の縮小傾向、長期化する価格競争を背景に、市場の勢力図が一段と鮮明になっている。すでに年間目標を前倒しで達成した企業がいる一方で、多くのメーカーが目標ライン付近で苦戦を強いられている。

トップメーカーがリード、新勢力が追走

新エネ車大手・比亜迪(BYD)の1~11月の販売台数は418万2000台で、年間販売目標460万台の90%以上を達成、中国トップの地位を守ったが、BYD全体としては成長が鈍化しつつある。BYDはもともと2025年の年間販売目標を550万台としていたが、中国国内の市場競争が激しさを増し、実現は厳しい状況となった。下半期から目標を16%下方修正し、550万台から460万台に引き下げた。

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老舗メーカーの上海汽車集団(SAIC)は1~11月の販売台数が410万8000台、目標達成率はBYDと同じく90%を上回り、トップグループとしての地位は安泰だ。主に傘下ブランドの栄威(Roewe)、名爵(MG)、智己汽車(IM Motors)が売り上げを伸ばし、1~11月の販売台数は前年同期比25.7%増の266万6000台で、全体の64.9%を占めた。新エネ車の販売台数も38.8%増の149万9000台と、過去最高を更新し続けている。海外市場も順調に拡大しており、3.4%増の96万9000台を売り上げた。

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吉利控股集団(Geely Group Holdings)は吉利汽車(Geely Automobile)のほか、ボルボ・カーズとの合弁高級車ブランド領克(Lynk&Co)、EVブランド極氪科技(Zeekr)を含めた販売台数が278万8000台で、目標の93%を達成した。このうち新エネ車の販売台数は前年同期比97%増の153万台だった。中国第一汽車集団(FAW)や重慶長安汽車(Changan Automobile)も目標の9割に近づいており、年内の目標達成が見えてきた。

新興EV各社も好調を維持した。零跑汽車(Leap Motor、リープモーター)が53万台、小鵬汽車(Xpeng Motors)が39万台超、小米汽車(Xiaomi Auto)が32万台超と、いずれも年間目標をすでに達成したか、間もなく目標に届く。特に小米汽車は、1カ月当たりの納車台数が安定して4万台以上を維持しており、生産能力の引き上げが目に見える成果をあげた。

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一方で長城汽車(GWM)の1~11月販売台数は120万台にとどまり、目標400万台の30%にしか届いていない。東風汽車(Dongfeng Motor)は達成率50%、広州汽車集団(GAC Motor)は67%で、蔚来汽車(NIO)と理想汽車(Li Auto)も65%以下。ファーウェイが主導するEVブランド連合の鴻蒙智行(HIMA)はわずか51.3%と、いずれも年末に向けて厳しい状況に置かれている。

総じて言えば、製品ラインアップが充実し、新エネ車へのシフトが明確に進み、強固な販売網を持つメーカーがリードを保ち、逆に新エネシフトが遅く、立ち位置が不明瞭、あるいは販売台数を過大に見積もった企業は脱落している。

ブランド別販売台数:Tech星球作成

決戦は12月:政策と販促が後押し

12月に入り、年末商戦はラストスパートを迎えた。中国政府による新エネ車取得税の全額免除政策は2025年末に終了し、26年からは半額免除となる。また、買い替えを促進する補助金も段階的に縮小される。2つの政策が期限を迎えるなか駆け込み需要が生じている。

自動車メーカーも相次いで販促を強化している。零跑汽車や米テスラは現金値引きやお得なリースプログラムを打ち出し、小米汽車は年内の納車を確約する在庫車の販売を開始。このほか20近くのブランドが、取得税を補助するプランを打ち出した。これは、年内に注文を確定すれば、メーカー側の理由で納車が翌年にずれ込んだ場合でも、税制変更に伴う取得税の差額をメーカー側が負担するという仕組みだ。

春節前の自動車購入ニーズの高まりも相まって、12月に契約が集中すると見込まれている。

2026 年の展望:販売台数から価値の競争へ

表向きは穏やかに見えていても、水面下ではリスクが浮上し始めている。中国の11月の乗用車販売台数は前年同期比で8.1%減、ディーラー在庫が330万台を超え、関係者の8割が先行きに悲観的な見方をしているという。また、価格競争の反動で、収益の悪化が続いている。

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さらに根本的な課題として、製品の同質化が深刻化し、差別化のポイントが分からなくなっている。優遇政策が縮小するなか、低価格頼みで市場を広げるという事業モデルは通用しなくなっている。

中国の業界関係者は、2026年に大幅な業界再編が進むとみている。NIOの創業者・李斌氏もかつて、26年に自動車市場は価値を競うフェーズに突入すると指摘した。つまり、販売台数の数字だけではなく、技術力やサプライチェーン全体のコスト管理、AIを取り入れたユーザー体験など総合的な価値を競う局面になるということだ。

中国の自動車業界が実力勝負に向かうなか、ユーザーのニーズを正確に把握し、核心技術への投資を続け、製品と販売チャネルの最適化を進めるメーカーだけが、その競争を勝ち抜くことができるだろう。

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(編集・翻訳 36Kr Japan編集部)

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