屋外を走るロボット犬「Rovar X3」が話題にーー追跡・見守り・撮影もこなす“アウトドアの相棒”

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ編集部おすすめ記事注目記事

屋外を走るロボット犬「Rovar X3」が話題にーー追跡・見守り・撮影もこなす“アウトドアの相棒”

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

2026年1月、世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」の会場で、小ぶりなロボットが来場者の注目を集めていた。高さわずか40センチ、重さ15キロの二輪ロボット「Rovar X3」だ。

芝生を軽快に駆け抜け、ボール遊びや荷物運びをこなすその姿は愛らしく、カメラを向けられると、立ち止まって体を揺らしたりディスプレイの表情を変えたりと、豊かな感情表現を見せる。人型ロボット(ヒューマノイド)でも産業用ロボットでもないこの製品が掲げるのは、「屋外用コンパニオンロボット」という、極めてシンプルかつ新しい役割だ。

開発したのは、中国のスタートアップ「深庭紀(Sentigent Technology)」。創業者の王弢氏は、米アップルに買収された自動運転スタートアップ「Drive.ai」の共同創業者であり、中国EV大手「小鵬汽車(Xpeng)」で視覚認識チームを立ち上げた、自律走行技術で知られる人物である。

王弢氏

アウトドアに寄り添う「デジタル相棒」

王氏は米シリコンバレーで16年暮らしてきた。米国のテック業界では、週末になるとハイキングやキャンプなどアウトドア活動にいそしむ人が多い。こうした活動はどうしてもワンパターンになりやすいため、多くの家庭は一緒に楽しむ相棒としてペットを連れて出かける。Rovar X3はまさにこのニーズに特化したものだ。

価格戦略も攻めている。ボストン・ダイナミクス社のロボット犬が7万5000ドル(約1200万円)と非常に高価なのに対し、Rovar X3は5000ドル(約79万円)未満に抑え、一般消費者への普及を目指す。

想定される用途は主に3つだ:

1)アウトドアでの追従: ユーザーの顔や体形、歩き方を認識し、複雑な地形でもリモコンなしで自律的に後を追う。さらには5キロまでの荷物運搬も可能。

2)子供の見守り: キャンプ場や芝生で、子どもと追いかけっこやボール遊びなどをしながら、見守り役を担う。

3)動く撮影プラットフォーム: 本体にカメラやスマホを装着し、移動しながら周囲の撮影ができるなど、コンテンツ制作を支援する。クリエイターなどを取り込む狙いがある。

王氏は「長く続く絆は、会話ではなく、物理世界での体験共有から生まれる」と説く。同社のオフィスで飼われている犬が、昼休みのボール遊びを通じて社員との絆を深めていく姿は、Rovar X3の開発哲学の原点となったという。

家庭用ロボットを見据えたデータ収集戦略

多くのAIロボット企業が工場など「標準化された環境」での商用化を急ぐなか、王氏の視点は異なる。工場は不確実性が排除されており、AIの学習に必要な「多様な失敗データ」が得にくいというのだ。

王氏はこれをテスラの戦略になぞらえる。テスラは最初から完全自動運転を狙うのではなく、まずは公道でのレベル2運転支援を通じて膨大なデータを収集し、モデルを飛躍させた。深庭紀にとっても、起伏や光の変化が激しい「屋外環境」は、家庭内に導入するための最高の実践訓練場なのだ。

同社は今後、3段階で製品展開を進めていく計画だという。まず屋外用の寄り添い型ロボットから始め、次では落ち葉掃除や荷物運びなどをこなす庭用ロボットへ、最終的には家庭の室内環境に導入することを目指す。この過程で、ロボットは毎日の利用シーンで得たデータを基に独自の操作データセットを構築し、それを汎用操作モデルの学習に活用して、モデルの性能を継続的に向上させていく。

「ピュアビジョン」と「二重の脳」で実現する知能

さまざまな表情を見せる「Rovar X3」

Rovar X3の設計で際立っているのは、初期の四足構造から二輪構造へと転換したことだ。これはシステムの複雑さとエネルギー効率を総合的に考慮した結果である。四足構造に比べ、二輪構造はモーターの数が半分に減り、構成がよりシンプルになる。その分、消費電力が低く、長時間にわたる屋外利用にも適している。

中核となるAI基盤は、「スローブレイン」と「ファストブレイン」を組み合わせた構成となっている。スローブレインが環境理解やユーザー認識を担うのに対し、ファストブレインは瞬時の判断が求められる障害物回避や動作制御、緊急対応などを担当する。この2つのシステムは並行して作動し、相互にデータをやり取りして、全体の意思決定能力を高めていく。

感知システムにはLiDARを使わず、カメラの視覚情報に頼ったピュアビジョン方式を採用。顔や歩き方、体形といった特徴を識別することで、屋外環境でもユーザーを見失わずに追跡できる。

深庭紀はすでに、藍馳創投(Lanchi Ventures)の主導するエンジェルラウンドで1億元(約20億円)を調達している。王氏は現在のコンパニオンロボット市場を、自動運転技術がようやく検証され始めた「2012年頃のフェーズ」だと冷静に分析する。特定の機能に固執するのではなく、継続的なユーザー理解と時代を先取りする技術視点で、この新たなカテゴリーの定義者(リーディングカンパニー)を目指す。

*1ドル=約158円、1元=約23円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

次の一手をひらくヒントがここに。

会員限定ニュース&レポートをお届け。