ファーウェイのAIチップ、中国シェア「エヌビディアを上回った可能性」 供給能力が課題
中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の徐直軍輪番会長と、傘下の半導体設計会社「海思(ハイシリコン)」のチーフサイエンティスト廖恒氏が、同社の年次イベント「Huawei Connect」の開催期間中にメディアとの懇談に応じた。AIチップ「昇騰(Ascend)」の市場シェアや新たな計算アーキテクチャー、供給計画などについて説明した。
徐氏は、中国市場における米NVIDIA(エヌビディア)のシェアを正確に把握するのは難しいとしたうえで、「当社が把握できるデータを見る限り、昇騰はすでにエヌビディアを上回っていると思われる」と述べた。具体的なシェアや集計期間、算出方法は明らかにしていない。
米国は2022年以降、中国への高性能AIチップの輸出規制を強化してきた。エヌビディアの高性能チップの供給が制限されるなか、中国では国産チップの採用が進んでいる。
調査会社IDCのデータによると、2025年の中国市場におけるAIアクセラレーターカードの出荷枚数は約400万枚。中国メーカーの製品が約165万枚で、全体の約41%を占めた。うちファーウェイは約81万2000枚で、全体の約20.3%だった。一方、エヌビディアは約220万枚、シェア55%で首位を維持したものの、シェアを落としている。
徐氏によると、昇騰が販売を拡大するうえでネックとなっているのは需要よりも「供給能力」だという。「現在は生産できた分をすべて供給に回している」と説明し、計算資源を急ぎ必要とする中国国内の顧客を優先する方針を示している。海外では、必要なチップを調達できない顧客や、調達先の選択肢を増やしたい顧客に限定的に供給しており、現時点で海外市場を大々的に開拓する計画はないとしている。
複数チップの連携で計算能力を高める
徐氏は、チップ単体では国内の製造プロセスに限界があり、競合製品に及ばない面があることを認める。ファーウェイは複数チップを連携させ、システム設計を見直すことで、全体の計算能力を高めていく方針だ。
今回発表した計算アーキテクチャー「Peerium」は、高速バス「UnifiedBus(霊衢)」を使い、CPUやNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)、メモリーなどを共通のプロトコルで接続する。ラック内とラック間を相互に連結することで、数十万から100万規模のプロセッサーを、1台のコンピューターのように動作させることを目指す。
廖氏は、ラック内にNVLink、ラック間にInfiniBandを用いるエヌビディアの構成と比べ、共通プロトコルを使うUnifiedBusでは変換処理の負荷を抑えられると説明した。同氏によると、密結合のScale-upネットワークから、システムを横に拡張するScale-outネットワークへのデータ転送は約150ナノ秒で済む可能性があり、異なるプロトコル間の変換に伴う遅延を少なくとも1桁縮小できるという。
950DT搭載システム、年末から年明けに本格供給へ
製品面では、昇騰910Cを384枚搭載する「スーパーノード」をすでに1000セット以上納入した。昇騰950DTを採用するスーパーノードは現在テスト中で、2026年末から27年初めにかけて本格供給を始める見通しだ。徐氏は、27年から多くのAIモデルの訓練に使われるとの期待を示した。
光接続では、NPO(近接封装光学)方式の「Hi-ONE」モジュールを発表した。対応帯域幅は7.2T、光エンジンと主要チップの距離は約5センチメートルで、近く量産に入るという。徐氏は、他社が同様の製品を開発しようとしても、今後2~3年以内には難しいとの見方を示した。
廖氏は、AIモデルの構造やプログラミング手法の変化、新たなプログラミング言語やコンパイラーの普及によって、エヌビディアの開発基盤「CUDA」が築いたソフトウエア面の参入障壁が弱まっていると指摘した。昇騰との格差は大幅に縮まり、「同等の水準に近づきつつある、あるいはすでに達している」との認識を示した。
一方、独立研究機関のEpoch AIは9月の報告書で、昇騰向けソフトウエア基盤「CANN」の成熟度はCUDAに大きく劣ると評価している。
徐氏は、世界のAIインフラ関連の供給網が2029年前後に需給均衡に達する可能性があると予測し、中国はそれより遅れるとの見通しを示した。そのうえで、半導体産業の供給網全体で自立を進めることは、中国にとって「避けて通れない道」だと述べた。
(翻訳・36Kr Japan編集部、校正・畠中裕子)