テスラに「免罪符」なし 中国への態度豹変させたマスク氏に非難殺到

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テスラは、部品の供給が追いつかないため、消費者に事情を告げずに、中国国産「Model 3」の自動運転レベル3向けAIチップ「HW3.0」を「HW2.5」にこっそりすり替えた。その結果、騙されたと感じた消費者らが中国ソーシャルメディアのウェイボー(微博)のテスラ公式ブログで次々と抗議とクレームを申立てる騒ぎとなった。同車種の所有者らに「顧客への偽り行為だ、詐欺罪に当る」と非難された後も、テスラのイーロン・マスクCEOは謝罪にでるどころか、逆にSNS上で名指しまではしなかったものの、中国消費者が「言いがかりをつけている」と暗に非難した。

<関連記事:中国製テスラ「Model 3」 部品供給が間に合わず低スペック自動運転装置を新車に搭載>

この「チップすり替え」の報道でマスク氏のイメージは地に落ちた。車の所有者は集団訴訟を起こし、メディアは紙面で激しく糾弾した。「テスラが中国工業・情報化部から事情聴取を受けた」という情報が一時は急上昇ワードにもなった。テスラは、パナソニックの電池と韓国LGの電池を混載、HW2.5チップとHW3.0チップのすり替え、電池の自然発火をパナソニックの責任にしたという「三つの罪」を犯したとする者まで出てきた。

最初の評判が高ければ高いほど、評判が落ちたときのダメージは大きい。以前はテスラファンから神と崇められたマスク氏と中国市場の関係は、蜜月期から一瞬にして氷河期へと落ちてしまった。

世の中に倒れない人などいない

この一年、テスラの中国国産事業を進めるために、マスク氏は何度も中国に足を運んでいる。テスラの上海のギガファクトリー操業開始のときには、「中国を非常に愛している、なるべく多くここに来たい」と誠実な態度を見せていた。国産Model 3の初回の納車時には、興奮を抑えきれずその場で踊り出すほどだった。

映画『アイアンマン』のモデルにもなった人物としても有名なマスク氏だが、この見た目が真面目な「アイアンマン」に対して、中国の消費者は一様に、自動車界にとって貴重な人材だと褒め称えた。

「北京の肉まんはおいしい」と褒めるマスク氏 画像:Twitterより 

ここ数年、テスラは中国市場でシェアを着実に伸ばしてきた。2016年Model 3の販売時には、予約に並んだ人の列はAppleの新製品発売と同じくらい長かった。2019年、中国市場はテスラにとって全販売台数の13%、売上高にして30億元(約470億円)近くをもたらす巨大市場となった。自動車市場が80%近くも冷え込んだ今年2月でさえ、同社は3958台を売り上げ、新エネルギー自動車市場の3割を占めた。

しかし、中国の消費者が最もがっかりしたのは、テスラがここ最近「羊頭狗肉だ」とか「手抜きだ」と頻繁に暴露されていることだ。

一部のModel 3にHW2.5チップを規定に反して搭載したほか、国産Model 3の一部ではパナソニックの電池を搭載した車とLGの電池を搭載した車の2種類が見つかっており、実際の航続距離は20kmほどの差がある。また、数十名の中国人所有者は自身が購入した輸入車Model 3の型番と実車の型番が一致していないことにも気づいている。

ブランドは「免罪符」ではない

テスラにとって中国市場の重要性は言うまでもない。2019年に生産能力をめぐる地獄からはい上がったばかりのテスラは続いて需要の危機に陥り、株式は次々と空売りされ、破産と合併吸収の噂があちらこちらでささやかれていた。まさにそのようなときに中国の支援の下、上海のギガファクトリーの建設が急きょ決まり、破産の危機にあったテスラを死の淵から生き返らせたのだ。2019年、テスラの中国全土における年間自賠責加入台数は4万5372台、そのうちModel 3が3万3903台となっている。

中国におけるテスラの成功は、マスク氏個人の影響力と切っても切り離せない。だが「中国のサポートなくして今日のテスラはない」と心を込めて言ったわずか2カ月後、マスク氏は全く別人のように変わってしまった。

中国市場があまりにも順調に行きすぎたマスク氏は、問題の深刻さをいまだに意識していないかのようだ。「チップすり替え」問題は依然くすぶっており、今後の購入予定者の多くが「ファン脱退」を叫び、テスラのボイコットまで決心している。

自動車業界の関係者は、今回の件が明るみに出たことでユーザーからの非難や反発が起こったが、中国市場におけるテスラブランドの受容度と人気は、一回や二回の問題で販売台数に実質的な影響を及ぼすものではないとの見解を示した。さらに重要な要因としては、同ランクの価格帯の中で、中国国内にはテスラのライバル車種もなければ、多くの人が広く受け入れている製品もいまだにないことだ。

しかし、理性的な資本市場が、マスク氏のわがままのために止めどなく尻拭いすることはあり得ないし、ユーザーの寛容さにも限度はある。唯一確かなのは、たとえ彼が「アイアンマン」だとしても、ユーザーを無視すれば、最終的には末路に向かって歩むことになるということだ。

(翻訳・lumu)

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