アリババから資金調達した子ども向け読書アプリ レベル別読書体系の確立を目指す

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アリババから資金調達した子ども向け読書アプリ レベル別読書体系の確立を目指す

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2017年の大学入試改革に後押しされ、学校教育や試験における読解の比重が増し、それに従って「大語文(国語科のこと)」市場が加熱、大語文から派生したレベル別読物もこの2年間で大きく注目され、投資家の支持も集めている。

2016年に設立された子ども向け読解力教育サービス企業「一畝童書館(ACRE Junior Library)」は、市場の空白を埋めるべく、中国のコミュニティー(団地エリア)における図書館教育の開発モデルとレベル別読物システムを模索する。ACREは「一畝宝盒」シリーズの出版でスタートし、現時点でステップ4まで出版している。オンラインアプリを使用して学習指導も受けられる。同社はまた、ブランド認知度を高めるためにオフラインの児童図書館を杭州に開設した。2019年、同社はエンジェルラウンドで、アリババグループ副CTOや淘宝網CEOを歴任してきた姜鵬氏から資金を調達し、これまで調達した金額は約1000万元(約1億5000万円)に上る。

レベル別読物の概念は海外に由来する。レベル別読物では、レベルが上がるにつれ文字が多くなり、物語のあらすじも複雑さを増す。基本的な識字教育から長文読解、価値感啓蒙までの橋渡しをする。レベル別読物ではボリュームが求められるほか、レベルを細かく分け、単語から短文まで段階的に移行していく必要がある。テーマは子供の認知力の成長パターンに合わせたもの、子供たちの主体的な学習意欲を真に刺激するものである必要もある。

レベル別読物は市場としても伸びしろ大

レベル別読物の概念が定着し成熟もしている海外と比較すると、中国のレベル別体系には児童書のための統一されたグレーディング基準が欠けている。「the Lexile Framework for Reading」「Reading A-Z」「Accelerated Reader 」など、アメリカではグレーディング基準が非常に多い。公式データによると、最も有名なLexileシステムは2019年時点で米国の学生の50%をカバーしているという。

中国の調査会社「iResearch」によると、親保護者が就学前や低学年の子供向けに紙の出版物を購入する意識は高まっているという。書籍通販大手の「当当網(Dangdang)」では2019年1月から10月までに、児童書、親子向け、家庭教育などの書籍の売上高が前年同期比で54%増加した。保護者は子供の読書習慣育成にますます注意を払うようになっている。「京東(JD.com)」のビッグデータによると、ここ3年間、プラットフォームで販売されたさまざまなジャンルの本の中で、児童書の売上高が年々増加しており、安定的に上位3位以内に入っているという。書籍の電子化という時代の流れと逆行するこのトレンドは、子供には紙の絵本が適しているという親の認識が短期間では変わらないことを示している。

中国の読物分類システムは発展途上

中国国内では最近になって読物のグレーディングが開始されたため、現状、レベル別読物は海外からの輸入品に依存しており、主に英語の教材として使用され、中国語コンテンツは多くない。当当網の販売量トップ10にランクインしたレベル別読物をみてみると、中国オリジナルの読物は非常に少ない。ほとんどの出版社が採用している戦略は、より影響力のある海外IPとの共同出版だ。自主開発のレベル別読物には多額の投資が必要な上、レベル別読物のボリュームは多く、細かい級分けが必要で、全シリーズを完成させると千冊に及ぶこともある。出版業界の資金回収周期の長さと合わせると、コスト回収リスクは高くなる。

グラフは2020年4月現在の当当網データより36krが作成

中国の児童書出版業界では、政府公認の出版社に出版権が集中しており、非出版系コンテンツ業者が出版したければ出版社との提携が必要だ。数の限られた国内レベル別読物も、制作形式によって2つのカテゴリーに分類できる。一つ目は、イラストレーターや作者を募集してグループで制作すること。もう一つは、影響力のある作者を制作の主力とする手法で、マーケティングでは個人の影響力が顕著に出る。通常、ACREのやり方のほうが制作速度が速く、出版サイクルも短くて済む。

同社CEOの宋鵬宇氏は、業界の動向について次のように考える。「中国の改革開放から40年、国内教育は依然としてプロイセン型の教育理論(義務教育の目的は既存秩序に服従する者を生産すること)により人材を育成している。学校は識字能力を最優先事項とし、標準化されたプロセスにより、エンジニアやワーカーの卵を社会に排出する。国がポスト工業化時代に入った今、自己の興味や趣味を発達させ、一人の人間として完成された人格を形成することが、次の段階の教育の主な目標になるべきであり、このプロセスにおいて、読書教育の役割は計り知れない。 ACREは中国語のレベル別読物という荒れ地の開墾を決意している。絵本と民間教育アプリを融合した出版方式で新しい解決策を試みるのだ」

宋氏はかつて米国広告業協会に勤務し、新機軸マーケティングでのキャリアが長い。共同創業者の孫氷氏も以前Microsoft Research Asia(MSRA)に勤務し、Alibaba Cloudチームに初期段階で加わり、その後独立してACREを創業した人物だ。同社は現在、シリーズAで1000万元(約1億5000万円)規模の資金調達を目指しており、資金は市場開拓や研究開発などに充てられるとのこと。宋氏は「長期的な提携パートナーと共同で中国のレベル別読物の分野を深掘りし、強固な参入障壁を築いていきたい」と語っている。
(翻訳・永野倫子)

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