創薬を効率化するマイクロED技術に立脚 学術畑の中国スタートアップ「青雲瑞晶」

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バイオ医薬品は典型的なテクノロジードリブン型の産業だ。次世代DNAシークエンシング(ゲノム配列解析)技術、低温電子顕微鏡法に代表される一連の基盤技術はかつて産業全体の構図を変革するほどの影響力を発揮した。中国では近年、バイオ創薬を手がける新興企業が数多く登場した。しかしその大多数がすでに実用化している技術を主体とする企業であり、最先端の基盤技術に注目する企業は少数派だ。

「青雲瑞晶生物科技(Read Crystal)」は最新の構造解析技術「マイクロED(マイクロ電子回折法)」とAIを用いたスクリーニング(新薬として有効な化合物を選別する)技術を融合し、創薬における構造解析や新薬発見に関連するサービスを提供するハイテクバイオベンチャーだ。

青雲瑞晶のコア技術

マイクロED技術とは従来のX線に替わり、電子線を用いて医薬品の構造、タンパク質構造、タンパク質リガンド複合体の構造を解析する。用いられる試料の結晶の大きさは、従来のX線による解析に必要とされる10万立方マイクロメートルから0.001立方マイクロメートルにまで縮小した。結晶の生成および構造解析にかかる時間もこれまでの10分の1に短縮され、解析の成功率は倍以上となっている。また、昨今話題となっている低温電子顕微鏡による単粒子解析法よりも高解像度だ。

マイクロEDは新薬開発のプロセスにおける多くのポイントで重要な役割を果たすと期待される基盤技術で、生物学的標的を発見・確認するほか、コンピューターが薬物設計を補助し、AIがスクリーニングからリード化合物の最適化までのプロセスを支援し、結晶多形スクリーニングを行うとみられる。

青雲瑞晶が開発したマイクロED技術に基づく創薬プラットフォームは、ファースト・イン・クラス(画期的新薬)を生み出すと同時に開発期間およびコストの大幅削減に寄与する。同社は目下、マイクロED技術をコアとする創薬プラットフォームを構築した世界で唯一の企業だ。

青雲瑞晶の創業チーム

青雲瑞晶の創業メンバーはスウェーデンのストックホルム大学でマイクロED技術の開発を手がけたチームの出身で、米サイエンス誌が選ぶ2018年の「Breakthrough of the Year (科学界で最もインパクトある十大成果)」の一つにも選出された。

創業者の劉磊峰CEOもストックホルム大卒業で、マイクロED技術のパイオニアでノーベル化学賞の選考委員、スウェーデン王立アカデミー会員のXiaodong Zou氏に師事した。劉氏は2019年末に青雲瑞晶を創業している。

共同創業者でチーフサイエンティストの孫俊良氏は北京大学教授で、結晶学の学術団体「中国晶体学会(Chinese Crystallographic Society)」の事務局長。マイクロED分野では世界的な専門家だ。同じく共同創業者でチーフサイエンティストの雷暁光氏も北京大学教授で、創薬分野で著名なスペシャリスト。創薬関連で15の特許を取得しており、ファースト・イン・クラスの候補となる三つの薬物分子を開発し、近く臨床試験に入る予定だ。

他の多くの創薬系スタートアップと異なり、青雲瑞晶は学術界の専門家を中心としたハイテク企業であるため、技術面でより優位に立っている。すでにエンジェルラウンドで「九合創投投資(UNITY VENTURES)」から数千万元(数億円)を調達しており、劉CEOによると、調達した資金はマイクロED研究室、タンパク質発現実験研究室およびスクリーニング研究室の建設や研究・開発、市場開拓に充てられる。

注)ファースト・イン・クラスとは米FDA(食品医薬品局)の定義によると、新規かつ独自の作用機序を以て特定の疾病を治療する薬品を指す。(翻訳・愛玉)


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