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2006年、香港の有名デザイナーKenny Wong(ケニー・ウォン)氏がアートトイのキャラクター「Molly」を世に送り出したとき、それが企業の上場に寄与することになるとは微塵も思わなかっただろう。4年前、アートトイブランド「POP MART(泡泡瑪特)」は中国国内でMollyの販売を始めたことをきっかけにアートトイの一大ブームを巻き起こし、業績を大きく伸ばした。
12月11日、POP MARTはついに香港証券取引所に上場を果たした。上場後に株価は100%値上がりして77.1香港ドル(約1030円)をつけ、時価総額は1065億香港ドル(約1兆4200億円)となった。
POP MARTは過去に中国の店頭市場「新三板」に上場。後に上場廃止しているが、当時の時価総額は20億元(約320億円)だった。3年を経て香港市場に挑戦した同社の時価総額は、実に45倍に膨れ上がったことになる。
いったい何がこの快進撃を支えているのだろうか。
資金面でのバックアップ
2010年の創業以来、POP MARTは8回の資金調達を重ねており、セコイアキャピタルなど大手ベンチャーキャピタル(VC)だけでなく、「黒蟻資本(BA Capital)」など新たな消費スタイルに着目するVCからもバックアップを受けている。
公開されている情報によれば、直近の資金調達は今年の4月。POP MART創業者の王寧CEOが「華興新経済基金(Huaxing Growth Capital)」と「正心谷資本(Loyal Valley Capital)」から、過去最高となる1億ドル(約110億円)以上を調達している。
ここ数年、華興新経済基金はニューエコノミー分野への積極的な投資を行っており、資産管理規模はおよそ400億元(約6300億円)に達する。その投資事例には、米国に上場した不動産取引プラットフォーム「貝殻找房(KE Holdings)」、生活関連サービス「美団(Meituan)」、配車サービス「滴滴出行(DiDi Chuxing)」、生鮮EC「毎日優鮮(MissFresh)」などIT大手やユニコーン企業が名を連ねている。
POP MARTの飛躍的な成長は投資機構のバックアップに支えられてきた。見事上場を果たした今、投資家にとってもリターンを手にする実りの季節が訪れたことになる。
ブラインドボックスが大当たり
POP MARTの人気を支えているのはMollyなどの人気キャラクターだけではない。開封するまで中身が分からない「ブラインドボックス」という販売手法が爆発的成長に一役買ったのだ。
1990年代に日本や香港で生まれたアートトイは、デザイナーが手がけるアート性の高いフィギュアで、当初はアートトイ専門のショップで小規模に販売されていた。しかしPOP MARTは中国国内での大規模な生産・販売に踏み切る。デザイナーはデザインのみを担当し、製品化は全てPOP MARTが行うことで大量生産が可能になり、従来のアートトイに比べて価格も抑えられた。
Mollyの発売当時、中国のアートトイ市場はまだ小さかった。2014年から2016年にかけてのPOP MARTは赤字に苦しんでいた。
そんな中、転機となったのがブラインドボックスのリリースだ。
一般的なアートトイのブラインドボックスには、1シリーズにつき12のデザインに加えてシークレットモデルが用意されている。希少性が高く手に入りにくいシークレットモデルはコレクター心をくすぐり、消費者の購入回数は自然と増えていく。
目論見書によると、アートトイ購入者の約70%が特定のデザインのアートトイを引き当てるために3回以上ブラインドボックスを購入したことがあるという。
シークレットモデルは、中国のフリマサイト「閑魚(Xianyu)」などの中古品取引プラットフォームで小売価格の数倍から数十倍の高値で取引されることもある。消費者はいわばギャンブルにも似た感覚で、次こそはと念じながら購入を繰り返すのだ。
ブラインドボックスの購買層をさらに拡大するため、2017年4月には自動販売機をリリースし、地下鉄の駅や商業地域など人通りの多い場所に設置した。デザイン性に優れた自動販売機は多くの消費者から注目を集めた。
POP MARTは急拡大期だった2018年には565台、2019年には176台の自動販売機を全国に設置しており、2020年6月30日時点でその総数は1001台に上っている。
自動販売機の設置と並行して2018年9月には国民的SNS「WeChat(微信)」のミニプログラム「泡泡抽盒機」をリリースし、スマートフォン上でもブラインドボックスが購入できるようにした。
オフラインの自動販売機からオンラインのミニプログラム、さらにはアリババ系ECサイト「天猫(Tmall)」の旗艦店に至るまで、POP MARTはブラインドボックスをメインに展開している。
フィギュアの素材にはコストパフォーマンスの良いPVCを採用しているため、高い粗利率を実現できている。目論見書によると、ブラインドボックスの粗利率は2017年が58.9%、2018年が64.7%、2019年が67.6%、2020年半ばの時点で70.5%と推移してきた。
その恩恵を受け、ここ数年の売上高と純利益はともに高い成長率を維持している。2017年から2019年にかけての売上高はそれぞれ1億5800万元(約25億円)、5億1500万元(約81億円)、16億8300万元(約270億円)で、2年連続で225%以上の増加を記録した。純利益も同じく160万元(約2500万円)、9950万元(約15億7000万円)、4億5100万元(71億円)と大幅に伸びており、2019年の年間純利益は2017年の288倍に増加した。
ブラインドボックスの売上高はPOP MARTの屋台骨だ。2017年から2019年のブラインドボックス売上高は9140万元(約14億4600万円)、3億5860万元(約57億円)、13億5920万元(約215億円)と推移しており、全売上高に占める割合はそれぞれ57.8%、69.9%、80.7%となっている。
作者:連線Insight、文・鐘微、編集・葉麗麗、記事企画・劉涵
(翻訳・畠中裕子)
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