コロナ特需で再注目のVR業界、起死回生の糸口は

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66億ドル(約6800億円)ーーこれはIT専門調査会社IDCが算出した2020年の中国のVR(仮想現実)とAR(拡張現実)業界の市場規模予測で、成長率は世界トップである。10%ーーこれは2016年にあるメディアが算出した、中国市場で生き残れるVR企業の推定値だ。

4年が経過した今、かつて熱狂した資本は冷え込み、業界は何度も再編されてきた。当時参入した企業の命運は、大手企業と弱小企業では対照的だ。

大手IT企業は大挙して参入し、総撤退した。米半導体大手インテルは2018年にVR関連事業部門の閉鎖を発表、ウェアラブルデバイスの開発を中止した。カナダの映写機メーカーIMAXも2019年初めにロサンゼルス、バンコク、トロントに残していた最後の3つの体験施設を閉鎖し、VR事業を終了した。VR業界に飛び込んだ弱小企業はさらに悲惨だ。起業家は通常、資産すべてをつぎ込む。最後に回収できたのは売れ残ったVRヘッドセットだけだったかもしれない。

2020年、新型コロナウイルス感染症の流行により仮想世界の商業価値が投資家や技術者に再び注目されるようになり、VRにも短期的に関心が集まった。VR業界では新しいストーリーが展開しているようにも見えるが、まだ生き残っているVR企業は依然として崖っぷちにいる。

VRのビジネスモデルは旧態依然、コロナ特需は短期的

VRによる不動産物件の内見やバーチャルメイクなどが広く知られるようになっているが、VRをプロモーションとして使うにはコストがかかり過ぎ、中国市場での拡大は難しい。コロナ禍において人との接触が制限されたため、以前のVRアプリやデバイスの使用頻度が上がり、VR熱が復活したようにも見えるが、ビジネスモデルにブレークスルーがあったわけではない。

VRを取り巻くインダストリアルチェーンはハードウェア、ソフトウェア、コンテンツの制作・配信、アプリケーションとサービスの4分野で構成される。ハードウェアが収入源とするのは商品販売や特許料、他は著作権やサービス料などがメインだ。

VR業界チェーンの川上に位置するハードウェア開発は成熟してきており、モバイル向けでは「Oculus Quest (オキュラス クエスト)」「Pico Neo 2」、PC向けでは「VALVE INDEX(バルブ・インデックス)」「HTC VIVE Cosmos」「小派科技(Pimax)」などさまざまなヘッドセットがある。数年前よりやや価格は下がっているが、消費者の購入意欲は相変わらず低い。サムスンは2014年にOculusと共同で99ドル(約1万円)の「Gear VR」を発売、サムスンのスマホを予約購入したユーザーにVRデバイスを無料配布するなどのキャンペーンを頻繁に実施したが、Gear VRのユーザーがようやく100万人を超えたのは2016年だ。

米ゲーム市場調査会社「SuperData」によると、Oculus Questの販売台数は2019年に70万5000台だったという。同じホームエンターテインメント製品では、ソニーのPS4は同時期に1350万台以上を販売している。両者の隔たりは大きく、VRデバイスがユーザーを獲得するのがいかに難しいかが見て取れる。

加えて、現段階ではVR各社が独自で展開しており、エコシステムは形成されず業界標準も存在しない。しかし、ビジネスとして成功するには技術障壁や独占状態を築き、完全なクローズドループが必要だ。ハードウェア・ソフトウェア・コンテンツの3つを統括しなければ成功しようがないのは自明である。

弱小企業の場合はどうだろうか。

こちらは多少有望だ。VRの事業化例を見ると、企業向け案件が増えており、これが新たな突破口になるかもしれない。成長が見込まれる二大分野はエンターテインメントと教育だ。

独調査会社「GfK」が公表した「中国VR業界事業化調査報告書」によると、ソリューションプロバイダーで最も多いのが約60%を占めるゲーム・エンターテインメント、2位が教育関連で35%だという。法人顧客は市場価格をそれほど重視せず、一般消費者を呼び込む窓口にもなる。常軌を逸したハードウェア販売合戦を経て生き残ったVR系起業家のほとんどは、インダストリアルチェーンの川下にある2つのカテゴリ、コンテンツ制作・配信とアプリケーション・サービスを志向するようになっている。

作者:新文化商业(WeChat ID:Ent-Biz)

(翻訳:永野倫子)

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