10周年を迎えたWeChat、専用入力システムの開発を発表 情報漏えい対策で

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1月19日、テンセント傘下のSNSアプリ「WeChat」の年次イベントが開催された。10周年の節目となった今年も、WeChatの開発責任者だったテンセント副総裁の張小龍氏が登壇した。そして、新たな10年間の最初の大きなプランとして、WeChat専用の入力システムを開発することを発表した。この入力システムは、特にユーザーが入力した情報のセキュリティに重点を置くとしている。

張氏はWeChat専用の入力システムをまもなくカナリアリリースする予定だと話したが、詳細な日付は公表されなかった。

入力システムによる情報漏えいはあるのか

おそらく誰でも体験したことがあるように、あるアプリで商品を検索すると、別のアプリでも同種の商品のレコメンドや広告が表示される。この過程で最もよく使われているソフトウェアが入力システムである。この現象はそこから情報が漏えいしたためだろうか。

筆者が自分のスマホにあるプライバシー保護アプリを確認したところ、確かに入力システムが何度もスマホの本体情報、クリップボードの情報や各種ファイルにアクセスしようとしていた。しかし、入力システムに限らず、大多数のアプリにこのようなデータ収集機能があり、それを元に商品と広告をレコメンドしている。

どのアプリをインストールするときでも、個人情報保護協定が表示され、そこにはどのような情報が取得されるのかが書かれている。しかし、おそらく誰もその内容を詳しく確認せずに、ページの最後にある「同意」をタップするだろう。その時点で、個人情報の収集に同意したことになる。

このように、アプリがバックグラウンドで各種情報を取得すること自体は同意を得ている。しかし、アプリを運営する会社やスマホメーカーが入手した情報を流出させたり、悪用したりしない保証はない。そこで、法律による規制が必要となる。中国には「インターネット安全法」があり、誰もユーザーの情報を漏えいしてはならず、情報を使用する必要がある場合も、個人の特定につながらないような対策を講じることが義務付けられている。

Wechatの入力システムの課題

入力システム市場はほぼ飽和状態にある。2020年秋までのデータによると、サードパーティの入力システムのシェアトップ3は「バイドゥ(百度)」、「搜狗(sogou)」、「訊飛(iFly)」で、3者のシェアの合計は95.9%である。その上、テンセントは2020年に搜狗を買収しており、このタイミングでWeChatの入力システムをローンチする利点は少ないと思われる。

情報セキュリティの向上についても疑わしい。最新の用語を反映するため、現在の入力システムはすべてクラウド上にある語彙データベースを利用している。データベースの更新にはユーザー一人ひとりからの情報収集が不可欠であり、個人情報を収集しないことはありえない。WeChatの入力システムがプライバシーの保護を前面に打ち出すのなら、個人情報を収集しながら、それを広告など他のサービスに使わないようにしなければならないが、果たしてそれが可能だろうか。

また、すでに誰もが使い慣れた入力システムを持つ現在、WeChatの入力システムの機能が魅力的かどうかも重要である。WeChatという多数の機能を持つアプリにとって、独自の入力システムは不可欠なものではなく、十分な魅力がなければそもそも利用してもらえない可能性が高い。

WeChatが誕生した当初は、「小さくて美しいアプリ」と宣伝されていたが、今や中国人の日々の生活を支配するほどの規模にまで成長した。それなら、入力システムなど新しいものを開発するのならそれと同時に、一般ユーザーの声により耳を傾け、真に必要な改善をしてほしい。さもなければ、WeChatといえども、ロイヤリティが下がり続ける可能性があるのだ。

原作者:「雷科技」(Wechat ID: leitech)

(翻訳・小六)

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