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中国でインターネット医療(互聯網医療)に関するスタートアップニュースや、資金調達ニュースは頻繁にある。
インターネット医療に関する代表的な企業を挙げるなら、アリババ傘下の「阿里健康(アリヘルス)」、京東集団傘下の「京東健康(JD Health)」、「平安好医生(Ping An Good Doctor)」、「微医(WeDoctor)」などが挙げられる。
36kr(中国)では、36kr Japanで紹介していないものも含めて多数のインターネット医療企業の資金調達ニュースが日々報じられている。筆者の感覚では、自動運転やEVなどの車関連企業と、若者向けのデザインに凝った新ブランドに並び、インターネット医療企業の資金調達ニュースやスタートアップ企業の紹介記事がよくある。
インターネット医療とは何か。読者にはまずこのもやっとしたものをとりはらうべく、紹介したい。大きくいうと以下3つに分けられる。
・病院のオンライン化
・薬のオンライン販売
・医療テクノロジー
またインターネット医療企業は、時価総額ベースでは京東健康と阿里健康が競い、その後を平安好医生が追う。また微医は、近々上場するのではないかと2020年あたりから報じられている。
まず病院のオンライン化について。新型コロナで病院は急遽リモート対応した。中国各地の病院が急遽リモート診療に対応し、スマートフォンやパソコンを使って外出することなく病院と健康相談や問診が可能になった。急遽導入ができた背景には、0から作り上げたのではなく、既にオンライン医療のシステムが競って開発されていたからに他ならない。ドローンやスマートシティやAIを医療現場で活用したのと同じである。
病院のオンライン化をすることで、電話や(ビデオ)チャットでリモート診療ができるようになるだけでなく、オンラインでの診療予約を可能にする。ひとつの病院をオンライン化するケースもあれば、市内の病院をまとめてオンライン化するケースもある。またリモート診療プラットフォームをつくって、そこに中国全土の病院が登録するケースもある。患者が利用する際は、アプリやサイトから医療科目と担当医を選び、さらに電話応対なのかチャット応対なのかビデオ応対なのかを選ぶ。中国で普及する知識系サービスのように、医師は各人が一度の問診でいくらにするか値段設定できる。
阿里健康、京東健康、平安好医生それぞれが各地の病院と提携し、その提携数を増やしていった。新零售ではEC各社がオンラインとオフラインのリンクを目的にスーパーなど小売大手に資本注入をした。インターネット医療においても阿里健康、京東健康、平安好医生など各社がリアルの病院のパイの奪い合いをする可能性がある。
またオンライン化は医者と患者を繋げるだけではない。検索エンジン大手百度(バイドゥ)傘下の医療プラットフォーム「百度健康(Baidu Health)」は、専門家の執筆による健康科学情報サービスや、医療情報を配信するライブ動画を提供し、患者と患者、あるいは医者と医者の知識向上に役立っている。
次に「薬のオンライン販売」について。薬のオンライン販売には、B2Cの阿里健康や京東健康などと、B2Bの九州通にわけられる。阿里医療をはじめ、インターネット医療各社が様々なヘルステックを試そうとしているが、収益化でいえば薬のオンライン販売が最も大きい。同じく薬のオンライン販売で伸びる京東健康は12月に香港証券取引所に上場し、阿里健康の時価総額を上回った。
売上は阿里健康と京東健康はどちらも、オンライン販売が同社の売上に最も貢献している。例えば阿里健康は決算レポートによれば、83%が自社によるEC販売、13.5%がECプラットフォームサービスなどとなっている。オンライン販売でも、京東健康と阿里健康では売れるものに差があり、京東健康は薬よりも健康機器や避妊具などの非薬品商品の占める割合が高く、阿里健康は薬の販売が占める割合が高い。
中国のオンラインでの薬販売が進むのに反比例して、中国各地にある薬局チェーンが危機に陥っている。その一方アリババは薬のニューリテールを進めるべく、アリババ系のフードデリバリーサービス「餓了麼(Ele.me)」が、薬局チェーンの「国大薬房(GuoDa Drugstore)」と提携し、餓了麼を通じて薬品をオンラインで販売するサービスをはじめた。
最後に「医療テクノロジー」だが、これは医療機器やソリューションの開発だ。スタートアップの資金調達のニュースではこれを一番多く見る。具体的には各種病気に特化した手術機器や胃カメラやリハビリマシンをはじめとした様々な機器などが挙げられる。つまり様々な病気や健康問題に特化した医療機器やAIを組み合わせたソリューションを提供する企業が続々と資金調達を受けている。企業紹介を見ると、医療機器メーカーの中には海外に展開している企業もみられる。
「リモート診察」や「薬のオンライン販売」とは毛色が違うが、全く無縁というわけではない。例えば血圧計や体脂肪計などの家庭用医療機器を家庭に導入し、リモート診察時に活用していく動きは今後政府方針からも進んでいくだろう。オンライン薬局で機器を購入したりレンタルしたりすることもあるだろう。
インターネット医療の範囲は広い。それぞれの領域で、様々なスタートアップが技術力を磨き資金調達し展開先を拡大しているのだ。
作者:山谷剛史
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