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中国の伝統衣装「漢服」のブランド「十三余(SHI SAN YU)」が、シリーズAで1億元(約16億7000万円)以上を調達した。出資を主導したのは「正心谷資本(Loyal Valley Capital)」と動画共有サイト「ビリビリ動画(bilibili)」で、アートトイブランド「POP MART(泡泡瑪特)」も出資に参加し、「穆棉資本(MM CAPITAL)」が単独で財務顧問を務めた。
十三余は2016年に北京で設立され、若者の間でブームとなっている「国風(中国風)」カルチャーの伝播や普及に努めている。創業者の小豆蔻児氏はもともとビリビリ動画で国風コンテンツを投稿していたインフルエンサーで、ビリビリ動画を含む複数のプラットフォームで1000万人近いフォロワーを抱えている。十三余ブランド自体も中国大手EC「タオバオ(淘宝網)」系のプラットフォームで400万人以上のフォロワーを有しているという。
十三余は伝統文化をリニューアルする形で、漢服以外にもアクセサリーや靴、バッグ、小物などの国風グッズを主に取り扱い、若い世代に人気となっている。「初めてクローゼットに迎える漢服」をタグラインとし、昨年度にはアリババ系二大ECプラットフォームのタオバオと天猫(Tmall)で漢服ブランドの売り上げトップとなっている。
漢服が市民権を得るまで
近年、国風カルチャーはZ世代を中心とする若年層に人気だ。漢服を着て街を歩くだけでなく、各地の地域色を反映したイベントまで見られるようになった。今年の「両会(日本の国会などに相当)」では「漢服の日」を制定しようとの提議があり、インターネット上で大きな反響を呼んで一時はトレンドワードとなった。
十三余の路洋CEOによると、漢服は10年ほど前から一部の愛好者の間で流行し、当初は奇異の目で見られたこともあったが、2016年ごろからメジャーな存在となってきた。2019年以降は、前出のビリビリ動画や短編動画アプリの「抖音(Douyin、TikTokの中国版)」「快手(Kuaishou)」などで動画クリエイターがPRし、若者たちが日常生活に漢服を取り入れだした。
公式データによると、ビリビリ動画ユーザーのうち、国風コンテンツ愛好者は2019年時点で8347万人。83%が24歳以下だった。今年1〜3月、ビリビリ動画に投稿された国風コンテンツは前年同期比で124%増え、投稿者の数も同110%増えたという。また、天猫のレディースファッション部門で漢服カテゴリーを統括する蕭楓氏は、漢服の潜在ユーザーは4億人以上に達しているとの見方を示す。
しかし、十三余にとって漢服はあくまで切り口に過ぎない。路洋CEOは、十三余の企業DNAはファッションではなくコンテンツであり、漢服は最終目的ではないという。伝統文化に興味はあるものの知識の薄い若者に対し、漢服で美しく着飾る体験をしてもらい、理解の糸口にしてもらいたいとの意図がある。
コラボ商品で拡大狙う
一部の特定層に限定されたブームから市民権を得る過程で、国風カルチャーを売りとした新興ブランドが数多く登場した。中国のビジネスメディア第一財経(China Business Network)傘下の「CBNData」が天猫と共同で発表したデータによると、売上高1000万元(約1億6700万円)規模以上の漢服ブランドは2018年から倍増した。
国風カルチャーが現代の商業分野において発揮できる可能性はまだ大いにある。十三余ブランドは現代の若者の美意識の変化について洞察を深めることに一層の力を割くべきであり、また国風カルチャーを介して消費者との交流を頻繁に続けるべきだ。サプライチェーンの完備よりも重要なのは、今回の出資者であるビリビリ動画やPOP MARTからオリジナルコンテンツやIPを運営するためのリソースやノウハウを学ぶことであり、今回の資金調達を機にブランドの強みをさらに固めることだ。
十三余はオンラインゲーム「王者栄耀(Arena of Valor)」、テレビドラマ「清平楽(Serenade of Peaceful Joy)」、アニメ「カードキャプターさくら」など複数のIPと提携し、漢服やケープ、ポーチなどの商品を開発し、国風をモチーフにした活用シナリオを拡張し続けている。販路については、オンライン販売を基本としながらも、オフラインで国風カルチャーを体現するアプローチを模索しており、出資者のPOP MARTなどと共同で取り組んでいる。
(翻訳・愛玉)
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