高齢化進む中国、スマホでのデジタル治療が急発展 認知症に活用

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デジタル治療を手掛ける「博斯騰科技(Best Coverd)」はこのほど、シリーズAで1億元(約17億円)近くを調達した。リード・インベスターは「金沙江創投(GSR Ventures)」と「博遠資本(BioTrack Capital)」、コ・インベスターは既存株主の「長嶺資本(Long Hill Capital)」が務めた。

博斯騰科技はアルツハイマー病のデジタルスクリーニング検査と介入に注力している。音声、ジェスチャー、自然言語処理などの人工知能技術を用いて認知リスク評価の体験、効率、精度を向上させると共に、体系的なデジタル介入トレーニングを確立した。

デジタル治療(DTx)とは、ソフトウエアを活用し、根拠に基づく医療をベースとする介入プランによって疾病の治療、管理、予防を行うものだ。デジタル治療はここ数年、海外で急速に発展している。治療用のスマホアプリを開発する「Pear Therapeutics」や「Akili Interactive Labs」などが大規模な資金調達を行い、現在までに30件近くのDTx製品がアメリカ食品医薬品局(FDA)などの当局から承認を受けた。

中国でデジタル治療は発展し始めたばかりだが、注目度は非常に高い。最近では精神科のデジタル治療を打ち出した「望里科技(WonderLab)」が数千万元(数億円)を調達したほか、「妙健康(Miao Health)」や「零氪科技(LinkDoc)」などが動きを見せている。

2021年の国勢調査によると、中国の60歳以上人口は2億6400万人で、総人口に占める割合が18.70%に達した。中国では2030年に高齢者人口が総人口の25%に当たる3億8000万人に上ると予想されている。宣武医院(Xuanwu Hospital)の賈建平教授が昨年発表した研究報告によれば、中国の認知症有病率は6.04%に達する。つまり、60歳以上人口のうち1600万人近くが認知症にかかっていることになる。また、軽度認知障害の有病率は15.54%、患者数は約4000万人だ。アルツハイマー病に代表される認知症は中国の公衆衛生および社会全体の難題となっており、国が支出する関連費用は年間1兆元(約17兆円)にも上る。

専門家によると、アルツハイマー病のスクリーニング検査ではAD8やMOCAなどの尺度と共に画像や血液・生化学的指標が使われている。こうした伝統的なスクリーニング検査の評価は教育レベルの影響を受けやすいため、実施が難しく感度も低い。一方、博斯騰科技のリスク評価ツールは、これまで数時間から数週間かかっていたリスク検査をわずか7分に縮め、スマホやタブレットの表示に従いユーザーの発話や動作によって認知能力を正確に予測することができ、その予測精度は90%以上に達するという。このツールはすでに複数の病院で臨床の試験と応用が進められている。

「測定だけでなく、方法の改善も必要だ」と話す陸暁翔CEOは、同社がリリースしたデジタル介入トレーニング製品のBBRTプログラムについて、欧州で長年にわたり蓄積された認知症トレーニングの基準とシステムをローカライズおよびデジタル化し、ビデオレッスン、ゲーム、図画、瞑想、音声など様々な要素を盛り込んだと紹介している。

BBRTプログラムの効果は参加者のテストで明らかになっている。総合的な認知能力は平均27%向上し、記憶力、言語能力、注意力に最も大きな改善が見られたという。

同社は昨年、アリペイ(支付宝)と脳トレアプリをリリースした。アプリには脳健康検査、睡眠補助、認知症トレーニング、ゲームなどの機能があり、利用者は累計600万人以上に上った。両社は今年後半にも高齢者向け製品やサービスのリリースを計画している。

脳トレアプリ

陸CEOは「感染症の流行後、健康管理に対する国民の意識はかつてないほど高まった。当社はアリペイや政府と手を組み、オンラインとオフラインを完全にカバーする信頼性の高いデジタルサービスネットワークを構築しただけでなく、高齢者の認知症に向けた独自のサービスを提供し、大手保険会社などにも受け入れられている」と話した。

また、将来的にはデータを活用してスクリーニング検査や介入製品を最適化し、科学研究、新薬開発、保険設計などにも参入する考えを明らかにしている。
(翻訳・神戸三四郎)

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