中国EC大手「京東集団」 21年4〜6月期の利益は95%の大幅減

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中国EC大手「京東集団(JD.com)」は23日、2021年第2四半期(4〜6月期)の決算を発表した。営業利益が前年同期の50億元(約850億円)から95%減の3億元(約50億円)にまで落ち込み、市場予想の17億2000万元(約290億円)をも大幅に下回った。Non-GAAP指標の営業利益も同56億元(約950億円)から25億元(約420億円)に落ち込んだ。

利益が落ち込んだ原因を詳細に見ていくと、致し方ない結果といえる。今四半期、京東が薄利型の事業モデルへ揺り戻した理由は主に三つ。新規事業の損失が深刻だったこと、物流事業への投入をこれまでになく拡大したこと、人件費(とくに物流事業)が大幅に上がったことだ。

新規事業は今四半期、売上高が前年同期比60.3%増の69億6000万元(約1180億円)だった反面、損失が同158%増の30億2000万元(約510億円)だった。新規事業の収入源は主にAI、地域コミュニティ向け共同購入サービス、インフラ資産・不動産管理などの事業で、最も損失を出しているのは地域コミュニティ向け共同購入サービスだ。

京東の売上高の内訳(財務諸表より)

京東の地域コミュニティ向け共同購入サービス「京喜拼拼」の今四半期の流通取引総額(GMV)は約37億元(約630億円)で、前四半期から300%以上増えた。1日あたりの受注件数は450万件で、前四半期の100万件から大幅に増えている。しかし中信証券(CITIC Securities)の予想では、同事業の今四半期の損失は25億元(約420億円)を超えている。

とはいえ、第3四半期には深刻な状況は脱するだろう。京喜拼拼は6〜7月にかけ福建省、甘粛省、貴州省、吉林省、寧夏回族自治区、青海省、山西省などからの撤退を決め、商品の割引幅も縮小している。京東だけでなく、多くの競合も同様の決定をした。

物流事業も予想外に悪化した。昨年第2四半期に営業利益が21億元(約360億円)に達したが、今四半期は一転して3億6000万元(約60億円)の赤字となり、売上総利益率は3.7%にまで落ち込み、損失率は1.4%に達した。売上高は前年同期比45.7%増の260億6000万元(約4400億円)だったものの、倉庫賃料が同60.4%増の45億元(約760億円)に膨らんだ。現在の物流事業にとって「利益」は優先事項ではないようだ。

京東の物流倉庫は今年6月末時点で総面積2300万平方メートルにまで拡大した。過去1年で450カ所を新設したが、これは2007年に自社物流を立ち上げてから2017年までの10年間で確保した倉庫数に匹敵する。倉庫が増えたことで人件費も急増した。財務諸表によると、京東の今四半期の給与・福利厚生費は前年同期比48.5%増の198億3000万元(約3400億円)、外注費は同93.9%増の190億3000万元(約3200億円)となっており、とくに外注費は物流事業の売上高の73%にまで達している。

税引前のコスト内訳

中国交通運輸部や国家郵政局などの8部門が今年7月に共同で「新しい就業形態の労働者を保護するための権益保障に関する指導・意見」を公布した。その中で、社会保険に関連する問題点を明確化し、保険制度を完全に機能させるとともに法に則った雇用を促進していくと強調した。京東はこうした国家の方針に従ったといえる。

京東は今四半期時点で自社取扱商品が900万品目(最小管理単位ベース)に達している。在庫回転日数は31日にまで抑え、フルフィルメント(受注から決済、配達までのプロセス)費用も5.8%にまで抑えた。物流事業への継続的な投入を行ってきた結果が現れはじめているといえる。

主力事業の成長

グループ全体の今四半期の売上高は前年同期比26.2%増の2538億元(約4兆3000億円)。うち小売事業の商品販売による売上高が同23%増の2196億8000万元(約3兆7300億円)で、過去2年間の年平均成長率は28%となっている。サービスによる売上高は同49%増の341億1000万元(約5800億円)で、うちPOP(Platform Open Plan、サードパーティー業者向けの出店サービス)の手数料および広告の売上高が35%伸びた。POP出店手数料、広告の2項目の売上高はライバルのアリババを圧倒的に上回り、オンライン小売業界全体の倍のペースで伸びている。

一方、アリババは今四半期のコア・コマース事業の成長率が14%を下回り、設立以来の最低値となった。C2Cプラットフォーム淘宝(タオバオ)系の出店手数料および広告の売上高は13.7%の伸びにとどまった。アリババの売り上げは手数料と広告に大きく依存しており、規制当局による一連の締め付けがより深刻な打撃になったとみられる。

京東のユーザー数の伸びは比較的順調だ。閑散期の第1四半期には年間アクティブバイヤー増加数は2800万人にとどまったが、今四半期は前年同期比27%増の3200万人で、アリババの国内EC事業の1700万人を大きく超えた。京東は今年の投資家集会で「年間アクティブバイヤーの増加数は前年と同じく1億人を目指す」と表明したが、上半期にすでに6000万人を達成している。
(翻訳・愛玉)

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