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中国では毎年約20万人の児童が行方不明になるとされているが、誘拐は少数で、大部分は迷子か家出だ。こうした中、各企業は児童の行動を追跡できる各種ウェアラブル端末(ブレスレットタイプ、時計タイプ、シューズタイプなど)を開発販売してきた。「万兔思叡(One Two Three)」「雲朶(yunduo)」や、韓国の「Lineable」といった企業だ。
こうした端末は基本的に個人向けに販売されているが、価格が割高なため、普及が難しい。廉価な商品として保護者の連絡先をQRコード化した名札も流通しており、1枚3〜5元(約50~80円)と格安であるものの、迷子の児童を見つけた人がQRコードの存在に気づいてスキャンしてくれるかどうか分からず、効果のほどは不透明だ。
しかし、「欽家(iworld)」のアプローチは異なる。同社は学生服メーカーとともに「学生服のスマート化」に取り組んでいる。朱宗漢CEOによれば、同社の位置情報追跡プリントシートは、学生服メーカーなどの法人向けに販売するほか、ネットショップで個人向けにも販売されている。個人が購入する場合、価格は1セット9.9元。購入者は同社のプラットフォームを無料で使用できる。中国の学生服市場は1000億元規模に達しており、同社の製品やサービスが標準化されれば、相応の市場規模となる。
また、欽家は60歳以上の高齢者を対象に、同様のプリントシートを計200万枚無料配布してきた。加えて、今年5月には、中国人口福利基金会の協力を得て、5月9日を「無走失日」(行方不明撲滅デー)と制定。全国280カ所の公益団体とともにキャンペーン活動を行い、全国規模で知名度を高めた。
朱CEOは「公益事業は我々にとって重要」と強調する。高齢者を入り口として、祖父母世代をケアする家庭に、同じサービスを子供向けにも利用してもらう狙いだ。
同社のQRコードはバリアブル印刷技術を採用。学生服は長期間着用されるため、多様な素材に対応でき、簡単に剥がれないように熱転写式を採用した。1万回のドライクリーニングと水洗いの試験もクリアしたという。
同社はRFタグを埋め込んだ製品も開発している。RFIDと顔認識機能によって、児童が登校すると、それが自動的に記録されるシステムだ。システムに必要な設備は、同社が学校に無料で貸し出している。
2018年8月、欽家は上海の幼稚園や学生服を製造する4社と提携した。朱CEOは「スマート学生服はまだ試験段階にあるが、すでに100社以上の学生服メーカーが関心を持っている」と語る。また、同社は「ISUS智能校服戦略中心(Intelligent School Uniform Strategy)」を設立し、来年には50地域でエリアパートナーを確保する計画だ。
欽家の社員数は約40人。半分は技術者で、半分は営業員だ。創業者の朱宗漢CEOはバーコードなどの自動認識技術の専門家で、ラベル産業に14年間従事。季克妮COOは、前職で米国のアミューズメントパーク「Kings Dominion」の運営に携わった。朱利群CTOはHPやIBMなどで技術サービスを提供してきた。
欽家はエンジェルラウンドで1000万元規模の資金を調達済みで、現在はシリーズAの資金調達へ向けて交渉中だ。
(翻訳・飯塚竜二)
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