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妊娠の中後期に胎児心音計は欠かせない。胎児の健康状態は絶えず変化するため、医療機関で妊婦健診を受けるだけでは不十分だ。高まるニーズとネット技術の進歩に伴い、胎児の心拍数モニタリングデバイスが家庭にも広がりつつある。
今、市場に流通している家庭用胎児心音計の多くは、超音波を利用したドップラー法を採用している。しかし、超音波には細胞をわずかに加熱する作用があり、組織内に小さな気泡を生成させる可能性が指摘されている。超音波の影響がまだ分かっていないため、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、超音波ドップラー機器を医師の指示のもとに限って使用するように勧告している。
医師が心拍数モニタリングを行う場合は、胎児の心拍数と子宮の収縮状況を最低20分間計測し、その数値の変化を分析して診断する。それに対してドップラー心音計で計測するのはわずか数分で、瞬間的な心拍数しか測定できないため、医学的な価値は高くない。
そのような中、聴診器と同じ原理を使った「受動的」胎児心音計の可能性に注目が集まっている。「喜芽(Fetaphon)」はその一つだ。創業者の王鑫氏によれば、同製品は胎児から発せられた心音を拾い、超音波を全く発さないので、胎児に安全で、計測時にゲルを塗布する必要もないという。喜芽はハンガリーの特許取得済み技術「Fetaphon」をベースに開発したもので、アプリにブルートゥース接続して胎児の心拍数モニタリングが行えるほか、バックグラウンドでデータを分析して医療機関と同じ規格に基づいた解析結果を表示する。
同じ測定方式の競合製品との違いは、喜芽が医療機器だという点だ。中国で最もレベルが高い「三級甲等医院」2カ所で行われた臨床試験で、計測の正確性が検証され、今月末には中国国家食品薬品監督管理総局(CFDA)の第2類医療機器認証を取得できると見込まれている。王鑫氏によれば、CFDAの保証がある測定値であれば、医師にも受け入れられ、遠隔モニタリングでも価値を発揮できるという。
喜芽は家庭用と医療機関用を同時にリリースし、デバイス代とアフターサービス料、医療機関へのリース料を主な収入源とする。価格は2980元(約4万9千円)で、来月に販売を開始する予定。
第2子の出産を認めた政策が、母子の健康を管理するスマートデバイスの市場を大きく変化させた。2015年以降急成長を続け、規模はすでに1000億元を超えている。背景には、リスクを伴う高齢出産の増加がある。政府が妊娠期の遠隔モニタリングを重視するようになり、関連政策を打ち出したことも市場を活性化する材料となった。
妊娠期に出費を惜しまない人が多い一方、中国の貧困層人口はは数億人に上る。喜芽はこの先、政府との協力やリースなど多様なビジネスモデルを通じて、より多くのユーザーを取り込むことを目指す。また心音計以外の母子用品やオンライン健康相談サービス等により、市場拡大のチャンスを狙う。
現在、喜芽は5000万元を目標にシリーズPre-Aの資金調達に取りかかっており、調達した資金は生産規模の拡大やプラットフォーム開発、マーケティングに充てるという。
喜芽は、20年以上の業歴を有する健康科学企業「信臣集団(Shinsson)」のインキュベーター・プロジェクトから生まれたものである。同社の創業者で董事長の王鑫氏は、過去に小児科医として勤務し、医療健康分野で28年、製薬企業で20年以上の経験を持つ。チーフサイエンティストの銭煜明氏はモルガン・スタンレーやアリババ、中興通訊(ZTE)の出身。COOの楊濤氏と医学マーケティングディレクターの馬紅梅氏も製薬会社で長い経験を持つ。
(翻訳・畠中裕子)
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