いつの間にか大人気、アリババグループの消費者金融「花唄」

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いつの間にか大人気、アリババグループの消費者金融「花唄」

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「花唄(ANT CHECK LATER)」は、アリババ傘下の金融サービス企業「アント・フィナンシャル(螞蟻金服)」が提供する消費者金融(クレジットサービス)だ。ユーザーがタオバオ(淘宝)や天猫(Tmall)などで商品やサービスを購入する際に、花唄での支払いを選択すると、41日間の無利息、分割払いといったサービスを利用できる。現在、ユーザーの1人当たり月平均消費額は約700元(約1万1000円)で、利用者はすでに1億人を突破した。

不名誉な受賞歴

2015年、正式にサービスをスタートさせた「花唄」だが、過去にアリババ社内で「腐ったストロベリー賞」を受賞するという屈辱を味わっている。

ストロベリー賞と腐ったストロベリー賞は、自社製品・サービスを表彰する賞で、前者は優れた製品を開発したチームに、後者は「そうではない」チームに贈られる。

苦心の末に誕生させた製品に不名誉な称号を与えられるのは堪え難いものだろう。多くの関係者が見守る中、10人ほどの花唄の開発メンバーはステージに上がり、恥ずかしい「ハイライト」を体験することになった。

花唄が低評価を受けることになった直接の原因は、利用開始時の「クイック手続き」機能だった。あまりにも簡単に利用開始手続きが済んでしまうため、手続きしたという意識がないユーザーも多く、「いつの間にかサービスを利用させられていた」という印象を植え付けることになった。そして、「ある日突然引き落とし通知が届いた」などとクレームが続出し、問題となってしまったのだ。

結局、花唄は政府の関連部門から罰金を科されてしまう。不名誉な受賞後、花唄のチームは問題があると見なされた70の機能を7カ月かけて改善した。

シンプルに使いやすく

花唄プロジェクトがスタートした際には、花唄事業部の楊暁氏は「大きな野心はない」と言っていた。同氏は当時、毎日30万〜60万人が使用し、ユーザー数は合計500〜600万人と見込んでいたのだ。

ところが、花唄は現在、1億人以上のユーザーを抱えている。そのうち約70%が初めてクレジットサービスを使用するという。

また、花唄はさらに多くの「普通の人」にサービスを提供したいと考え、2017年1月に新サービス「ミニ花唄」をスタートさせた。このサービスでは限度額が低く設定されている代わりに、ユーザーの利用状況に応じて限度額が引き上げられる。ミニ花唄は、利用手続きの際に複数の証明書を提出する煩雑さもなく、消費者信用のモデルを変革した。

利用明細発行日と支払い日の設定も独特だ。花唄は毎月の利用明細発行日と支払い日をそれぞれ1日と9日に設定しているが、金融界の常識では、1日に明細を発行して9日に引き落とすと、資金の運用効率が下がりコストも高くなる。しかし、花唄はユーザーの「シンプルな使い勝手」にこだわっている。

サービス開始初期には、ユーザーが分割払いを利用する際に、先に頭金を支払わせ、残額を分割払いにするシステムを取っていた。ユーザーの支払い能力を評価してリスクを低減するためだ。しかし、多くのユーザーが頭金の算出基準を納得できなかったため、結局、花唄はこのシステムを廃止し、全額分割払いができるように変更した。

楊氏は「金融ルールとユーザーの認知にはズレがある。我々はユーザーにとって簡単かつ理解しやすいサービスに近づいている」と自信を見せている。

単なるサービスから社会的責任を持つサービスへ

アント・フィナンシャルが花唄を導入した目的は、アリババの大規模セール「双11」での決済をスムースにするためだ。しかし、現在の花唄を見る限り、単なるセール期の「支払い補助ツール」という位置付けには満足していないようだ。

花唄のターゲットは若者で、花唄事業部の邵文瀾総経理の言葉を引用すれば、事業の目的は「若者に公平なインターネット金融サービスを提供する」ことにある。実際に、花唄は若年層ユーザーの取り込みに成功しており、90後(1990年代生まれ)ユーザーは4500万人に達した。

若いユーザーの獲得に成功すると、そこに花唄はより多くの可能性を見出した。邵氏は花唄を「普通に働いて普通に生活している人は基本的な信用があるユーザーとみなす、門戸の広いサービス」と位置付けている。「花唄は小銭入れであり、またいざという時のお金だ。お金に困った時にスマホで支払える。これが花唄の核心だ」と述べている。

多くのユーザーを獲得するためには、利用シーンを多様化することも重要だ。しかし、サービスを導入してもらい、これに付随する手数料を事業者に受け入れてもらうことはなかなか難しい。そこで花唄は今年から、アリペイのQRコード決済にヒントを得た「マネーコード」決済を導入。多くの店舗を引き入れることに成功した。利用シーンを多様化させることで、ユーザーは花唄の利便性を実感し、事業者側は花唄に売り上げを伸ばせる能力があることを理解したのだ。

花唄はもはや「野心がない」サービスではなくなった。「双11」セールの決済補助ツールから1億人のユーザーを抱えるサービスに成長した。いまや社会的責任を持つサービスとして高く評価されている。

社会的責任について邵氏は「例えば、あるユーザーに高すぎる利用限度額を与えてしまった場合、これを悪用されるリスクもあるだろう。適切に管理できなければ、サービスの社会的責任が問われる。我々にとって心配の種だ」と素直に認める。

自制は最善の対処法だ。自制とは、限度額設定に対する慎重な態度でもある。花唄は22歳以下のすべてのユーザーに対して、衝動的な消費を防ぐために、利用限度額が2000元(約3万2000円)を超えないようにしている。また、医療費支払いのような特定の利用シーンに対しては特例として限度額を引き上げるが、それ以外は標準の限度額が適用される仕組みだ。

花唄はこれまでも取捨選択してきた。例えば、物件賃貸、美容整形、教育などの分野は高額で、また詐欺などのトラブルに遭う可能性も否めないため、あえて踏み込んではいない。

こうした小さな歩みが、現在の花唄を形作ってきた。そしてその歩みは今後も続くに違いない。
(翻訳・飯塚竜二)

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