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中国最大のSNS「WeChat(微信)」がリリースから11周年を迎えた。
運営会社のテンセントは2015年から毎年「WeChat公開講座(WeChat Open Class)」というイベントを開催しており、人々がWeChatとそのエコシステム発展の現状・方向性を理解する上での重要な手段となっている。1月6日に開催された2022年WeChat公開講座PROには、WeChat生みの親である張小龍氏の姿はなく、各事業部門の責任者もしくはプロダクトマネジャーが単独で登壇し、動画投稿用アカウント「視頻号(WeChat Cannels)」や「ミニプログラム(小程序)」、決済サービス「WeChatペイ」などを巡るこの1年の変化や今後の方向性を紹介した。
10年間で12億人以上のユーザーを獲得し、国民的アプリとしての地位を築き上げたWeChatだが、この先さらに成長する余地はどれほどあるのだろうか。これからの1年、視頻号やミニプログラム、ミニゲーム、WeChat Work(企業微信)、検索機能など各事業分野の重点をどこに置くのだろうか。
エコシステムが広範囲に拡大
インストール不要で利用できるWeChat内アプリのミニプログラムは5周年を迎えた。
昨年のWeChat公開講座では、ミニプログラムチームがビジネスインフラの改善を続けていくことを表明していた。今回、その成果が披露された。ミニプログラムのデイリーアクティブユーザー(DAU)は4億5000万人を超え、1日当たりのミニプログラム利用回数は前年比32%増加した。マネタイズの規模は90%拡大し、その9割が中小企業によるものだ。
新型コロナウイルス感染症が流行したこの2年間で、ミニプログラムはさまざまな業界に浸透してきた。PCR検査やワクチン接種予約などのミニプログラムを利用したユーザーは累計7億人、文書などツール系のミニプログラムでは累計7億5000万人に上り、1日平均1億人以上がミニプログラム上で行政サービスを利用したという。
ミニプログラム責任者の曽鳴氏は「ミニプログラムのエコシステムは健全に成長している」と語る。ミニプログラムはサービスの仲立ちをするに過ぎないとした上で、今後は他の業界や実体経済の中でさらなる模索を進めたいと述べた。
公表されたデータによると、食品、出会い、医療に関わるミニプログラムの人気が上昇を続け、注目すべき新たなトレンドとなっている。「2022年にはミニプログラムを通してさらに多くのデバイスがつながるようにする」と曽鳴氏は語った。
WeChatペイも信用スコア「支付分(WeChat Pay Points)」を通じて、ユーザーや法人顧客との信用システム構築に力を注いでいる。
データによると、WeChatペイユーザーの半数が支付分機能を利用しており、オンラインショッピングやモビリティー、宅配便、充電スタンドなどの場面で「後払い」を利用したユーザーは1億人を突破した。
またWeChat Workも、テンセントが注力するインダストリアル・インターネットへの接点として肝要な役割を果たし、デジタル行政事務や小売業、製造業改革、スマート教育などの分野で成果を上げた。
講師の黄鉄鳴氏は、視頻号との連携やカスタマーサービスを実装した新バージョンを翌週にリリースすることを発表した。
視頻号は旗振り役を担えるか
WeChatエコシステムの中で、最も市場の注目を集めているのが動画投稿用アカウント視頻号の成長だろう。今年の公開講座でも最初に行われたのが視頻号に関するテーマ講演だった。
統計によると、2021年に2700万人以上が視頻号を通じてボーイズバンドWestlifeのライブ公演を視聴し、同時接続数は最高150万人に達した。また台湾のロックバンドMaydayの公演は1400万人以上、ファーウェイ孟晩舟副会長の帰国の様子や中国有人宇宙船「神舟12号」の打ち上げは1500万人以上が視聴した。
昨年のイベントで張小龍氏は「これからの10年、動画という表現手段がコンテンツ分野のテーマになるだろう」と語っている。将来的には動画コンテンツが巨大なナレッジベースになるとし、その動画コンテンツを蓄積して、WeChat自身を検索可能な動画ライブラリーに作り上げたいとも述べた。
視頻号が内部テストを始めたのは2020年1月。それ以来、テンセントは視頻号のために心血を注いできた。この2年の間に視頻号の枠組みと基本機能を構築し、サービス運営の方向性とコンテンツ運用の方向性を確立した。
しかしテンセントのショート動画は長らく批判にさらされ、テンセントの強大なソーシャル力をバックに持ちながら「本当に使える」サービスがないと揶揄されてきた。コンテンツの斬新さに欠けるというのが最大の課題だった上、クリエイターへの支援計画や権益保護も手薄だったため、人気クリエイターを輩出できずにいた。
変化が訪れたのは2021年12月。この1カ月に視頻号はアーティスト公演のライブ配信を試み、WestlifeとMaydayのオンライン公演を公開したのだ。中でもWestlifeと協力して配信されたライブ公演は主要SNSの投稿を埋め尽くし、トレンドランキング入りした。
講演を行った視頻号チームの責任者である張孝超氏は、今後さらに多くのアーティストを招いてライブ配信を行うと明かした。同時にライフハック、エンタメ系、情報系など、生活に密着したリアルな動画およびライブ配信を奨励していくという。今回のイベントではオリジナルコンテンツへのトラフィック誘導を行い、クリエイターの成長を支えるための「奨励計画」が発表された。
昨年4月から視頻号にライブ配信機能が追加され、現在では投げ銭やライブコマースなどが利用できる。張孝超氏は「今後ショート動画、ライブ配信を問わず、動画への課金機能を導入する可能性は否定しない」とし、間もなく有料のライブ配信ルームをリリースすることを明らかにした。
着実に歩を進めた11年
2011年1月21日のサービス開始から11年、WeChatは人々のスマートフォンの使い方に大きな変化をもたらし、プライベートでも仕事でも欠かせないアプリになった。2018年2月には世界の月間アクティブユーザーが10億人の大台を超えた。最新データによると、2021年第3四半期末時点で月間アクティブユーザーは12億6300万人にまで増加している。
11年を経て、WeChatはすでに人々の日常生活に欠かせないものとなった。これまで歩んできた11年は確かに成功だったといえる。
数年後のWeChatがどうなっているかは誰にも分からない。ただ昨年のイベントで今後10年の展望に言及した張小龍氏は、WeChatが20歳を迎えた時にも変わらず「小さく美しい」アプリであって欲しいと語っている。
(翻訳・畠中裕子)
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