テスラ、独ベルリン工場ついに稼働か 中国頼みは依然変わらず

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電気自動車(EV)米大手テスラのドイツ・ベルリン自社工場「ギガファクトリー」がついに稼働する。テスラはベルリンのギガファクトリーで生産する小型SUV(多目的スポーツ車)「モデルY」の受注をすでに開始し、3月に納車する旨をドイツの従業員に通知したことが1月23日に報じられた。さまざまな事情のため生産開始が何度も先送りされてきたベルリン・ギガファクトリーの操業開始がついに確定したということだ。テスラの生産能力ひっ迫問題も今後緩和に向かうと期待される。

ベルリンのギガファクトリーは、欧州大陸における同社初のギガファクトリーとなる。欧州自動車産業の中心地であるドイツでテスラが足場を固めることができれば、欧州市場の経営にいっそう注力することが可能になる。引いては同社のグローバル戦略の最適化が進み、2022年の販売目標である150万台の達成も現実味を帯びる。ではテスラのベルリンギガファクトリーが順調に稼働した場合、上海ギガファクトリーの役割は低下するのだろうか。

上海ギガファクトリーの優位性は揺るがない

ベルリンのギガファクトリーは、さまざまな理由から建設および操業開始が何度も延期されてきた。市場調査会社CFRA Researchのシニアエクイティアナリスト、ギャレット・ネルソン(Garrett Nelson)氏は「上海のギガファクトリーが驚くほどのスピードで建設された結果、ベルリン工場の完成と稼働までのペースが誤って見積もられているおそれがあり、二国間の明らかな違いが全く考慮されていない可能性もある」と述べた。実際、テスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏は、ベルリン近郊の街グリューンハイデの建設現場訪問時に、ベルリン工場が直面する問題について「官僚主義が少なければ事態は改善される」と語っている。

地元住民や環境保護団体は水源汚染や騒音などへの懸念から、テスラの工場建設に反対している

ただドイツ政府のテスラに対するこれまでの姿勢を振り返って見ると、正式な生産開始時期が再びずれ込む可能性もある。実際、ウェドブッシュ証券の株式アナリスト、ダン・アイヴス氏は以前「欧州の煩雑な行政手続きを考えるとベルリンギガファクトリーの操業開始時期は依然不透明だ。しかし2022年3月までに稼働しなければテスラの生産目標に影響する」との見方を示している。

さらに、ベルリン工場の生産能力は計画上45万台だが、稼働直後は1週間当たり1000台のペースで生産し、その後段階的に増産していく計画だという。このペースだと月産5000台以下となり、半年でも3万台に届かない。

統計によると、テスラの小型車「モデル3」は欧州市場で最も人気のある電気自動車となっており、過去1年間にヨーロッパ11カ国で9万3545台を販売した。ベルリン工場は当初モデルYの生産に特化するため、欧州市場は短期的に上海ギガファクトリーからのサポートに頼らざるを得ない。もしテスラが早急にモデルYを増産できない、もしくは上海工場が欧州市場向けモデルYの納車を一部肩代わりすることになれば、マスク氏がベルリンにギガファクトリーを設立した意図と明らかに矛盾する。

テスラは当初から上海ギガファクトリーの役割軽減を意図していたものの、結果から見ると上海ギガファクトリーの重要性は日を追うごとに高まっている。テスラは2021年に全世界で93万6000台を納車し、年間生産台数は93万台と100万の大台に迫った。この驚異的な成果を収めるに当たり、中国市場、中国のユーザー、中国工場が果たした役割は大きく、2021年に世界で納車した93万6000台のうち、上海ギガファクトリー製が51.7%(約48万4000台)を占めた。

上海ギガファクトリーが2021年に納車した48万4000台のうち、32万台以上が中国市場向けだった。中国が米国を追い越しテスラ最大の市場となった点は注目に値する。しかも中国で納車ペースを意図的に押し下げた中で成し遂げた業績だ。21年にはテスラが欧州市場への納車を優先し、上海ギガファクトリーで各四半期前半の生産能力を輸出向けに振り向けたため、中国市場では度重なる納車時期の遅れが発生した。21年5月に上海工場で生産された3万4000台を超えるモデル3およびモデルYのうち、1万1000台以上のモデル3が海外市場に供給され、8月にはテスラ上海ギガファクトリーの輸出台数が3万1379台を超えた。テスラは、中国市場での需要低下を意図した値上げを何度も実施したものの、中国の消費者の購入意欲低下にはつながらなかった。目下、テスラの公式ウェブサイトによると、モデルYとモデル3は納車まで12-16週間となっている。

テスラは中国市場の急拡大を受け、昨年末に上海ギガファクトリーの拡張工事に着手した。生産ライン最適化プロジェクトへの総投資額は12億元(約220億円)に上り、2022年4月の完成が予想されている。完成後、テスラ上海ギガファクトリーは新エネルギー車の生産能力で世界最大となり、年間生産能力は現在の50万台から100万台以上に拡大する。テスラが2022年に約150万台の販売目標を達成するには、上海ギガファクトリーと中国市場の存在が不可欠と言えよう。

作者:雷科技(WeChat ID:leitech)

(翻訳・大沢みゆき)

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