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昨年、テンセント(騰訊)が3度目の組織改革を行い、新たに設立されたクラウド・スマート事業群(CSIG)が広く人々の注目を集めた。
ゲーム用クラウドとライブ配信クラウドの次に、テンセントのインダストリアルインターネットが狙いを定めたのは教育業界だ。
スマートキャンパス・ソリューション
テンセントはK12 (幼稚園年長から高校までの13年間)の教育現場全体をカバーしたスマートキャンパス・ソリューションを打ち出した。テンセントのクラウド技術を基盤として、プラットフォーム上で管理者、教師、保護者をつなぎ、「教育・学習・管理」をスマート化するというものだ。
深圳市龍華区の事例はテンセントのスマート教育事業のベンチマークモデルケースだ。区内のモデル校3校で「教育内容:幼稚園」、「キャンパスの安全:附属小学校」、「空間データの情報化:龍華外国語学校」の実験が完了している。
龍華区の未来型学校の事例から、注目した点は以下のとおり。
1)子どもの安全
龍華附属幼稚園には、顔認証ゲートや映像解析機能付セキュリティーアラーム、園児が身につけるスマートバンドなどのセキュリティーシステムが備えられている。
園児は登降園時に必ずゲートを通る必要があり、幼稚園を離れるとリアルタイムで保護者に通知される。園児ごとに保護者の情報が登録されており、家族以外が送迎に来る場合は、保護者が事前に申請する必要がある。
また同システムは政府機関のデータに接続できるようになっており、顔認識技術により公安の重点監視対象者の侵入を阻み、襲撃事件などを未然に防ぐことができる。
2)教務と管理の効率化
スマートキャンパス・システムにより、学校内部と区の教育管理部門はオープンで効率的な管理を行えるようにしている。日常の管理データを政府の管理システム(教育行政、教育監督・指導)と結合し、データを共有することで、政府管理部門が学校の状況をリアルタイムで把握できるようになっている。
担任と保護者の連絡機能はテンセントが得意とする分野だ。チャットアプリでクラスのグループを作り、担任がクラスのタイムラインで園児の様子を発信する。写真は顔認証技術を活用し、それぞれの保護者に個別送信することもできる。在園中の写真データはクラウドに保存され、卒園するときに成長アルバムにまとめることも可能だ。
3)教育内容とスタイルの多様化
スマートキャンパス・プラットフォームでは教師陣や教育内容に厚みを持たせるため、外部事業者によるコンテンツを導入している。龍華付属幼稚園では、オンライン英語教育の「VIPKID」が毎週、外国人講師による英会話レッスンを行っている。
附属小学校にはVRを取り入れた視聴覚教室があり、体験型学習ができるようになっている。
4)個々の生徒に合わせた学習の可能性
幼稚園のデータはルールを定義でき、センサーデータの収集も比較的容易だ。スマートバンドを使って収集した園児の運動データを個別の食事指導に反映させたり、園児の身長と体重の変化をグラフにしたりすることができる。
一方、小中学校ではデータが多元化し、一定の規模と正確性が求められるため、個々の生徒に合わせた学習を実現するのは難しい。実用化にはさらに多くの時間を要するとみられる。
エコシステムのプラットフォームを構築
テンセントクラウド教育事業総経理の龔振氏によれば、テンセントが行っているのは基盤となるプラットフォームの構築だという。テンセントクラウドが中核データとクラウドコンピューティング能力を提供し、学校ごとのカスタマイズにはテンセントが選んだ提携企業が対応する。
プライバシーの問題に関しては、学校と教育局から要請があった場合にのみデータを提供するとしており、事業者と利用者との間でデータが共有されることはないとのことだ。
ベンチャー企業にチャンス
今の子どもたちにとって、スマートフォンやタブレットは当たり前になっている。当然、未来型の学校もインターネットから切り離すことができない。
国家予算だけを見ても、教育の情報化は1000億元(約1兆6000万円)規模の巨大市場だ。インターネットやAIが発展してきたことで、未来型学校に対する期待が高まっている。テンセントなど大手インターネット企業が作り上げたプラットフォームでは、ベンチャー企業の参入が待たれるニーズや場面がまだ無数にある。
(翻訳・畠中裕子)
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