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中国では電子商取引(EC)の発展に伴い物流倉庫の自動化産業も盛り上がり始めている。2018年には、「Geek+(ギークプラス、極智嘉)」「快倉(Quicktron)」「海康機器人(HIKROBOT)」などの大手企業が現れたが、これらの企業が提供するソリューションのほとんどは、米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)が買収した搬送ロボットKivaを模倣している。倉庫の棚を改修し床のQRコードの指示に従って棚ごと仕分けエリアに運び人間に引き継ぐ方法は、物流業界で「棚ごと搬送」と「ピッキング後に仕分け」と呼ばれる。
だが、こうしたモデルの最大の難点は倉庫を閉鎖し改修する必要がある点だ。Kivaが広く普及したのは、アマゾンが世界中に自社倉庫を展開する企業であることに起因する。中国ではEC最大手アリババグループが倉庫保管大手の「三通一達(中通、申通、圓通、韵達の4社)」などと提携しており、アマゾンに似た形態のEC大手「京東集団(JDドットコム)」も倉庫面積に限りがある。つまり、国内の倉庫市場は異なる勢力間で分断されており、アマゾンのように画一的に普及させることは難しい。
アマゾンと同様に自社倉庫を持つ京東を例にとると、2020年時点でロボット倉庫は約70カ所で、上海の無人倉庫1カ所に配備されるロボットでも1,000台余りしかない。中小規模の倉庫に至っては最初の倉庫の改造からして敷居が高い。粗利益率の低い物流倉庫業界はキャッシュフロー経営であり、中小規模の倉庫はコストのかかるロボットの配備に積極的になりにくい 。
2018年、グーグルと米半導体大手「エヌビディア(NVIDIA)」出身の蒋超氏が「炬星科技(シリウスロボティクス)」を設立した。同社は、棚を動かす代わりにAMR(自律走行型ロボット)が商品が収められた棚に作業スタッフを誘導し、スタッフが必要な商品を棚から取り出しAMRの箱に入れた後で一般的な仕分けエリアに運ぶ方式を採用した。同社はこれを「ピッキングと同時に仕分けする」人間とロボットの協働モデルと呼ぶ。
こうしたモデルの下ではAMRの役割は移動及びピッキングの指令だけであり、炬星科技の製品形態は非常に単純であると同時にコストコントロールも可能だ。具体的には、同社のシャーシは自社開発の高性能センサーLiDAR(ライダー)、カメラ、ミリ波レーダーを備えており、中央に棚が設置され上部のタブレットPCがピッキング情報を表示する。
これらの製品も、目下最も人気のあるSLAM(自己位置推定とマッピングの同時実行)レーザーナビゲーションを使用する。導入時に現場を一周するだけでタブレット上に倉庫の2D平面図が作成され、各棚、荷箱及び通路の具体的な位置を確認できる。倉庫システムに接続した後、AMRはリアルタイムの注文状況に基づき最適な走行ルートと仕分け順序を計算する。炬星科技のピッキングソリューションは、純粋な人手に頼る倉庫に比べ効率が2〜5倍向上している。
蒋超氏は、作業効率の向上に加え「ピッキングと同時に仕分けする」モデルの価値はデータの掌握にあると語る。炬星科技のソフトウェアシステムは、商品が棚に置かれるたびに一つ一つのSKU(商品の最小管理単位)の配送状況を把握して仕分けプロセスを最適化できる。
たとえば、独身の日(11月11日)に開催されるECセールイベント「双11(ダブルイレブン)」の期間中、ほとんどすべての倉庫が大量の小包の処理に直面する。炬星科技は、Eコマース3PL(サードパーティーロジスティクス)の「美創雲倉」(主に新しい国内化粧品ブランドcolorkey珂拉琪にサービスを提供)、国産下着ブランドの「GOSO香蜜閨秀」、物流会社「中通雲倉(ZTO CWST)」などのEC向け倉庫にサービスを提供しており、注文数の増減に応じて棚を設置しているエリアごとに必要なAMRの数を調整できる。
こうしたモデルは海外市場で最初に実証されており、炬星科技も設立から3年の間は日本と韓国市場で事業を展開し、2021年になって中国で事業を始めた。
三菱商事の事業部長は2018年、炬星科技のチームが他社のようなアニメーションシミュレーターによる抽象的なデモンストーションや煩雑なROI(投資対効果)算出等もなく1日でAMRの準備を終えたのを見て、即時に購入を決定した。
炬星科技の主な市場は日本と韓国であり、2021年の世界での出荷台数は500台を超え3年連続で黒字を達成している。炬星科技は非常に低いハードウェアのコストと「すぐに使える」ユーザー経験を武器に、設立間もないにもかかわらず物流ロボットの倉庫保管分野で数少ない黒字企業の1社となっている。2000万ドル(約27億円)を調達した最新のシリーズBの資金調達では、動画投稿アプリTikTokを運営するバイトダンス(字節跳動)がリード・インベスターとして出資している。
(翻訳・大沢みゆき)
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