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高次元ベクトルデータベースを手がける「Zilliz」がこのほど、シリーズB+で6000万ドル(約86億円)を調達した。出資を主導したのはサウジアラムコ傘下のベンチャーキャピタルProsperity7 Venturesで、テマセク傘下のPavilion Capitalや高瓴創投(GL Ventures)などが出資に参加した。Zillizがこれまでに調達した資金は総額1億1300万ドル(約158億5000万円)となった。
ZillizはAI活用を想定したベクトルデータベースの開発に注力している。オラクルやPostgreSQLなど、これまでのデータベースは主に構造化データを扱っており、データのサイズやフォーマット、次元はほぼ固定されていたが、AI活用の場面では画像や動画、音声、テキストなどの非構造化データを扱うことになる。しかもAIモデルに非構造化データを直接入力することはできない。例えば新薬開発の現場では、エンジニアはまず複雑な分子式を数学的に変換して多次元ベクトルにし、それをAIモデルに入力する必要がある。こうしてデータは圧縮され、異なる分子式が同次元のベクトルに変換される。これらのベクトルは次元数が数百から数万と非常に高いため、従来のデータベースの保存技術やインデックス技術では対応できない。このためZillizはAI技術に特化したベクトルデータベースが必要だと考えた。
Zilliz創業者の謝超(星爵)CEOによると、同社が開発したベクトルデータベース「Milvus」はAI活用のニーズにかなっているという。まずMilvusはベクトルデータに特化したアーキテクチャを採用しており、実行速度やデータ規模はPostgreSQLの約1000倍に達するという。また高次元ベクトルの計算には非常に時間がかかることを踏まえ、異なるCPUやGPUプラットフォーム向けに新たなアルゴリズムを設計し、高次元データの計算を高速化した。さらにベクトルデータの追加、修正、インデックス、類似データ検索などデータベースの基本機能に加えて、データの分割や複製など分散型システムの特徴にも対応している。同データベースとその技術は世界の企業1000社ほどで導入されており、コンピュータービジョンや画像検索、動画分析、自然言語処理、レコメンデーションシステム、ターゲティング広告、詐欺検出、ネットワークセキュリティー、新薬発見などの分野で幅広く活用されている。
最近ではクラウド版Milvusといえるクラウドサービス「Zilliz Cloud」も発表した。謝CEOは、近年、クラウドサービスがデータベースの主要な利用方法になっていることから、Zilliz Cloudも「サービスとしてのデータベース(DBaaS)」方式でワンストップソリューションを提供することを目指すと語る。Zilliz Cloudは設計当初からストレージとデータ処理を分離しているため、料金体系もストレージ費用(データサイズや保存期間に応じて計算)とデータ処理費用(マシン数や実行時間に応じて計算)に分かれている。Zilliz Cloudは2020年から開発を始め、今年後半に入って世界でリリースされた。現行バージョンはAWS(アマゾンウェブサービス)上で提供されており、今後はGoogle CloudやMicrosoft Azureにも対応していくという。
Milvusは2019年にオープンソース化されており、ソフトウエア開発プラットフォームGitHubで1万1000以上のスターを獲得している。オープンソースにすることでより多くのユーザーの意見を募り、Milvusの更なる改良を進める考えだ。
目下、Zillizは米国を主要市場としている。謝CEOを含む初期スタッフの多くがシリコンバレーの大手企業で就業経験があるため、これは当然の流れと言える。また北米の企業は基礎的なソフトウエアへの支出をいとわず、スタートアップのサービスを試すことに意欲的なほか、市場が成熟していることも、Zillizのビジネス化にとって追い風になるはずだ。
現在100人ほどが在籍しており、R&Dエンジニアが85%を占める。今後は開発チームとマーケティングチームをさらに強化し、海外のパブリッククラウドベンダーと協力しながらクラウドサービスの開発と商業化を進め、より良いプロダクトを提供していくという。
(翻訳・畠中裕子)
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