シンガポールのTraxが同業買収、IPOも視野

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小売業向け画像認識技術を手がけるシンガポールの「Trax Technology Solutions」が6月3日、小売業向けAI活用サービスの「朗鏡科技(LenzTech)」を買収することを発表した。同時に、朗鏡科技CEOの湯勁武氏をTrax大中華圏部門のプレジデントに任命することも明らかにした。

Trax共同創業者でCOOのドロール・フェルドハイム氏によると、同社は1億ドル(約108億円)の資金調達をまもなく完了するほか、12~24カ月以内に新規株式公開(IPO)を実施する予定だという。

2010年設立のTraxが中国市場に進出したのは昨年初頭だ。画像認識アルゴリズムと商品棚・商品の膨大なデータを利用し、メーカーや小売業者向けにリアルタイムで信頼性の高いデータサービスを提供している。昨年7月、同社は1億2500万ドル(約135億円)の資金調達を行っており、「博裕資本(Boyu Capital)」と英メディアグループの「DC Thomson」が出資した。また、米PE「ウォーバーグ・ピンカス」や南アの資産運用会社「インベステック・アセット・マネジメント」も同社に出資している。

Traxの顧客は消費財メーカーや小売業者で、コカ・コーラ、青島ビール、ペプシ、ネスレ、ヘンケルなど大半が米フォーチュン誌の企業番付で上位500社に入る企業だ。同社は現在、50数カ国で事業を展開している。

顧客側からみれば、Traxのサービスを利用することで経営効率の向上につながる。通常はメーカーの担当者が各店舗を回り、商品陳列、販売促進、欠品などの状況を確認し記録する。Traxのサービスでは、担当者が専用アプリを通じてこれらを把握する。店頭に設置したカメラまたはロボットが商品データを収集し、画像分析を行い、効率と正確性を向上できるとともに、商品補充、価格設定、陳列などの意思決定をリアルタイムでサポートすることが可能。また、小売業者向けの「Retail Watch」サービスでは、店頭の状況をリアルタイムで把握し、タイムリーな商品補充ができるようになっている。

フェルドハイム氏は、Traxが自己完結型のビジネスモデル構築に取り組んでいることを明かした。最終的にはエンドユーザー向けのサービスを展開していく方針だ。同社が管理する商品棚のデータに基づき、消費者に店内での買い物の案内をしたり、「おすすめ商品」を紹介したりできるとしている。

Traxがこのほど買収に踏み切った朗鏡科技は、中国のAI活用型クラウドソーシング企業だ。前身は「拍拍賺」で、主に小売販売チャネルのモニタリングサービスを企業向けに展開し、日用消費財(FMCG)の販売管理の利便性向上や人件費削減を実現している。朗鏡科技によると、同社には80万人のワーカーが登録しており、彼らは各地の店頭で商品棚の写真を撮影するなどさまざまな業務をサポートすることが可能だという。月間アクティブユーザー数(MAU)は5万人で、中国の1000以上の市・県をカバーしている。

Traxは昨年、店舗データサービスを提供するクラウドソーシング企業の米「Quri」を買収したことを発表している。また、同社は米調査会社ニールセンと共同で、店舗戦略に関する統合的ソリューション「Shelf Intelligence Suite」を開発しており、商品棚と販売データを分類することで販売状況を正確に把握し、その継続的な測定と評価を可能としている。
(翻訳・池田晃子)

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