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契約を締結する際の協議とサインはこれまでのビジネスシーンには欠かせないプロセスだったが、企業のデジタル化と新型コロナウイルスの流行で、ますます多くの企業がオンラインでの契約を選択するようになっている。そのため電子契約業界が再び注目を集めている。
中国IT大手のテンセント(騰訊控股)は12月1日に深圳市で「デジタルエコシステムサミット(DES 2022)」を開催。その中のSaaSに関する特別講演で、テンセントの電子契約事業責任者である黄炳琪氏が同事業に関する新たな取り組みを紹介した。
テンセントの電子契約サービスは2021年にリリースされた。同社は昨年、ビジネスチャットツール「WeChat Work(企業微信)」からオンラインドキュメントツール「騰訊文檔(テンセントドキュメント)」やビデオ会議プラットフォーム「騰訊会議(Tencent Meeting)」を利用できるようにするなど自社プロダクト間を連携させ、SaaSの分野で利便性を大きく向上させた。電子契約サービスもこの三大プロダクトに組み入れるとしている。
黄氏によると、同社は電子契約機能を騰訊会議に取り入れるという。メリットは、双方で契約文書を最終決定する際に、会議をしながら修正、決定することができることだ。これは企業のオンラインでの協業体験を変化させるだけでなく、ビジネスモデルの変化をもたらすことにもなるだろう。
このほか、テンセントの電子契約サービスはモバイルデバイスでの体験を最適化したという。企業間の契約は複雑だが、契約書のテンプレート作成や書き込みなど、実際に操作する場合、スマートフォンの画面では小さくて作業しにくい。そのため同社の電子契約部門は多大な労力を費やして契約作業のモバイル化に取り組んだ。AI技術を利用して、企業ユーザーが共同で編集、記入するプロセスをワンクリックでできるようにし、ごく軽微な修正や編集などはモバイルデバイスからできるようにした。「以前はパソコンを使わなければできなかった契約が、現在ではいつでもどこでもスマートフォンで完了させることができる」
また黄氏は、電子契約の普及には、中国政府からの政策面での支援や新型コロナウイルスの流行から生まれたリモートワークの需要などの環境面の要素は切り離すことができず、企業のデジタル化というトレンドにも即していると話す。
電子契約サービスの大きな特徴は相乗効果にある。契約という行為の性質上、一方の企業が採用すれば、相手方の企業も同じサービスを採用することは想像に難くない。個人ユーザーも同様に企業側のサービス利用を促すだろう。これもテンセントのCtoB戦略の一環だ。電子契約サービスがリリースされてから1年余りの間、当初のユーザーとCtoB分野での雪だるま式の成長を通して、瞬く間に20万社以上の企業ユーザーを獲得した。
現在電子契約サービスを採用しているのは大部分がサービス業界で、金額が大きく利用頻度も高い場面で利用されているという。黄氏はこのような場面では電子契約の需要が最も大きくなると考えている。保険・医療業界では、契約書類は最低でも10年間保存する必要があり、倉庫、管理、プリントアウト、郵送費用などのコストは契約ごとに数十~数百元(数百~数千円)かかるが、電子契約であれば数元(数十~数百円)でできる。コスト削減のほかにも、契約に要する時間を大幅に短縮でき、業務効率の向上も期待できる。
業界の同質化という問題に関して、黄氏は現時点ではそこまで深刻ではないと考えている。「現在、電子契約サービス市場はまだブルーオーシャンだ。市場が十分大きいため各社とも不得意な分野に手を出す必要はない。我々もまた自社が最も得意とする市場のユーザーを相手にしていく」と黄氏は話した。
市場にはまだ大きな成長の余地がある。テンセントの電子契約部門によると、電子契約は従来の契約方式のうち、いまだに5%前後を占めるに過ぎない。黄氏は、電子契約の普及には10年以上かかると考えている。
決済を例にとっても、モバイル決済ツール「WeChat Pay(微信支付)」は2013、14年に運用を開始しているが大規模に普及したのは19年頃だ。電子契約と決済では利用頻度や認知度に差があることは必至で、電子契約サービスが広く普及するには単純に考えて決済の2倍の時間がかかると黄氏はみている。
(翻訳・山口幸子)
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