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異音を検知して機器の故障を判断するソリューションを開発する中国スタートアップ企業「諦声科技(Ensound、正式社名Disheng Technology)」が、シリーズBで約1億元(約19億円)を調達した。出資を主導したのは清新資本(Fresh Capital)で、野草創投(Weed Ventures)などが出資に参加している。諦声科技のパートナー常煒熙氏によると、調達した資金は主に製品開発やマーケティングに充てるという。
諦声科技は2018年に設立され、同年から3年連続で3回の資金調達を実施している。音響学に基づいた企業向けAI技術のサービスプロバイダーで、マイクアレイや音響信号処理技術を活用した機械設備モニターや関連サービスのプラットフォームを複数作り出している。製品と関連プラットフォームは、スマートマニュファクチャリングやエネルギー、電力、軌道交通などの分野の顧客に、AI故障検出や運用保守などの多元的なソリューションとして提供されている。
同社を創業した丁東亮氏は、機械設備が複雑で精密機器も多い工業の現場では音声信号が豊富な情報を持っており、機械設備の運転状態を評価する重要な指標の一つになっていると述べる。AI技術が急速に成長した現在、同社では電力や軌道交通の具体的な応用シナリオを引き続き探り、現場が抱えるペインポイントの解決を目指していくという。
電力分野では、新エネルギーを主体とした電力システムの構築にあたって、送電・配電の安全性や信頼性にいっそう高度な要求が突きつけられている。中国国営送電大手ステートグリッド(国家電網)は、年間700〜900億元(約1兆3300億〜1兆7100億円)を拠出してスマート検出・運用保守システムの構築に力を注いでいる。音響特徴量検出は従来の電気学、光学、化学や温度特徴量検出とは異なり、故障発生の早期に機械内部の鉄心・巻線・コイルなど構造部品の緩みを検出して故障を特定できるほか、事故の発生率も下げられる。
音響異常検出はこれまでコスト・技術・データライブラリーがネックとなり、電力分野では大規模な産業化は実現していなかった。しかし、諦声科技のメンバーは独自にハードウェアとアルゴリズムを開発し、音響異常検出データの収集とAIによる故障警報のモデルプロジェクトを大々的に展開。非侵入型の高精度な音響指紋収集・検出・警報を可能にし、50種類以上の故障タイプと故障レベルの判断を完全にカバーして業界1位の正確度を実現した。
諦声科技はこのほかに動力車走行装置の異音モニタリングシステム、発電所の故障検出システム、音響カメラなどの端末を開発し、すでに鉄道システム、エネルギーシステムなどに導入されている。
技術的に見ると、同社の製品はハードウェア、ソフトウェアの双方で実力を備えている。
ハードウェアに関しては、マイクアレイの技術で優位性を確立した。一定数のマイクでアレイを構成することで音場の空間特性を収集・処理し、音源定位・残響除去・音声信号強調・ブラインド信号源分離などの性能によって騒がしい環境でも正確に異音を検出できる。関連データによると、諦声科技の遠距離収音マイクアレイは最長1キロ先の音源を拾えるという。
ソフトウェアに関しては、音響学のアルゴリズムや、鉄道システムや電力システムの故障に関する強力なアルゴリズムやモデルを独自に開発している。鉄道システムでは37種類、電力システムでは50種類以上、工業システムでは100種類以上のモデルを確立しており、具体的なシナリオに沿った工業用マイクアレイシステムのソリューションをカスタム開発できるという。
諦声科技はこれらのソフトウェアとハードウェアを融合し、端末機器とSaaSを通じて顧客にソリューションを提供している。
音響異常検出は特殊性もあり高い技術が求められるため、中国でも参入企業は多くない。ベンチャー企業や民間企業以外では、一部の研究機関が関連製品の開発に携わるのみだ。しかし多くの業界で導入されるようになれば市場規模は徐々に拡大し、音響異常検出に携わる企業も一定のメリットを享受できるだろう。
(翻訳・山下にか)
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