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ゼロコロナ対策で経済が停滞した2022年も中国のロボット業界の一部は好調だった。意外な話だがコロナ禍だったからこそ追い風があり伸長した。
ロボット業界と書いたがロボットと言ってもいろいろあるが、この記事ではロボット掃除機やファミリーレストランなどにも導入が進む配送ロボットや、工場などで稼働するロボットアームなどを利用した協働ロボットにフォーカスしていく。
ロボット掃除機だが、家電量販店で見るような消費者向けのものは飽和状態にある。例えば、代表的な企業の「Ecovacs Robotics(科沃斯)」と「Roborock(石頭科技)」は、2020~21年にかけて株価が急上昇するも22年には両者の株価は8割近く下落した。レッドオーシャンとなり、他社製品と比べて製品の強みが消費者にわかりづらいという点と、中国ではゴミを吸い取るだけでなく拭き掃除も兼ねている製品に消費が移っているのが理由のひとつだ。加えて中国では以前のような「なんでも新しいものを買っていこう」という雰囲気は消費者の間ではすっかりしぼんでいる。
同じく動き回るロボット家電でも芝生を刈るなど活動する場所を変えると話は別だ。芝生を自動で刈るロボットは欧米市場で強いニーズがあり、平均的な米国の世帯は芝生と庭に年に155ドル(約21000円)を費やしているというデータ(Statista、2020年)が出ていて、芝刈りロボットだけの市場規模が2026年までに36億ドル(約4900億円)に達すると予想されている。芝刈りロボットだけではない。同様にプール掃除ロボット、除雪ロボットなど、新たなフィールドで作業するロボットが注目されている。
これまで部屋の掃除向けに培った、目標エリアをくまなくトラブルなく移動するアルゴリズムを活用し、海外のニーズを視野に入れたロボットを開発する企業が続々と台頭している。ブルーオーシャンを巡って、NinebotやECOVACSなどの上場企業が世界で展開するだけでなく、漢陽科技、鋭馳智慧、松霊机器人などのスタートアップが相次いで資金調達を受け、台頭している。
ビジネス向けに目を向ければAGV(無人搬送車)やAMR(自立走行搬送ロボット)といった産業用移動ロボットの調子がいい。昨年の海外市場を含む中国の産業用移動ロボットの販売台数は前年比29.2%増の9万3000台で、市場規模では46.8%増の185億元(約3600億円)になった。
特にインフレに悩む各国のレストラン、倉庫やホテル業界で、従業員の高い流動性と賃金の上昇という問題に長い間直面してきた。海外の労働力不足は中国よりもはるかに深刻で、省人化、自動化のためにさまざまなロボットを試してみたいというニーズが強くある。「あらゆるロボット企業が海外市場を真剣に検討する必要がある」という声も。
この分野で代表的な中国企業がサービスロボットメーカー「PUDO(普渡科技)」と物流ロボット「Geek+」だ。普渡は2020年に大規模な海外進出を開始。昨年は老人ホーム、工場、病院などを開拓し、今年はレストランを開拓した。その結果、海外売上高の割合は2019年の8%から現在の段階では80%以上までに増加した。普渡は2022年に2万台以上を出荷したという。一方Geek+は 2022年には海外売上高の70%を海外市場が占めるまでに成長した。ローカルスタッフを海外に数百人配備した上でサポート面を強化。同社成功の理由に「安定性、問題への対応力、継続的なサービス力が競合製品と10倍の差をつけた重要な要因」と創設者である鄭勇氏はコメントしている。他にも防犯カメラ大手HIKVISION傘下のロボット企業「海康机器人」も価格を武器に売上を伸ばした。
また同様に無人フォークリフトも好調で、上半期だけでも未来机器人、「捷象霊越(J‐ELEPHANT)」、「木蟻机器人(Mooe Robot)」といった企業が1億元(約20億円)クラスの資金調達をしている。
産業用ロボットも加速している。ロボット産業もまた他の産業同様に中国企業が外国企業に追いつくことが五か年計画のミッションとなり、言い換えれば積極的に外国のロボット製品を中国のロボット製品に置き換えることを目指す。
中国で近年新たに盛り上がっているのは新エネルギー車(NEV)やリチウム電池などの産業で、ここにロボットが必要となる。その一方でゼロコロナ政策の影響であらゆる輸入が滞り、外国ブランドのロボットの納品が遅くなった。ゼロコロナ政策時の海外企業のロボット納期はだいたい8~10カ月だが、国内ブランドの通常の納期は1カ月、大型モデルの納期は2カ月と短かった。
この間に「JAKA Robotics(節卡機器人)」や「遨博機器人(AUBO)」などの協働ロボット企業は新エネルギー産業に多額の投資を行い、INOVANCEやESTUNなどの有力なロボット上場企業は新エネに関する一連のソリューションを提供した。標準化されていない新しいものを作るとあり、ロボット企業への試行錯誤の機会も積極的に与えられロボット企業は技術力を高めた。ロボット企業と新産業の企業との二人三脚で、新エネや新エネ車産業の製品の量産体制が様々なところで出来上がり、目標である国産ロボットの普及を加速させたのである。
このように中国のゼロコロナによる輸入封鎖と、アメリカをはじめとした世界でのインフレと、新産業の立ち上がりという時の偶然が重なり、中国国産ロボットは好況となったわけだ。
(作者:山谷剛史)
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