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従業員への給与未払いや工場の操業停止に陥っている中国の新興EVメーカー「天際汽車(ENOVATE)」に光が見えてきたようだ。
36Krの自動車関連メディア「未来汽車日報(auto-time)」が複数の情報筋から入手した情報によると、天際汽車はこのほど7億5000万元(約144億円)を調達する見込みだという。
同社はこれまでに8回の資金調達を行っており、総額は115億元(約2200億円)を超える。直近では20年10月に50億元(約960億円)を超える資金を調達している。
同社の従業員によると、天際汽車は今年に入って従業員への給与未払いが2カ月続いており、さらに湖南省長沙市の工場は今年に入ってから操業停止状態だという。同従業員は「今回調達する資金はまず給与の支払いと工場の操業再開に充てられるだろう」と話した。
今回資金を調達しても、すでに新興EVメーカーの中で遅れを取っている天際汽車にとって、この局面を打開するのは容易ではないはずだ。
天際汽車の前身は2015年に設立された中国テック企業・楽視(LeEco)傘下の「電咖汽車(Dearcc)」で、19年3月に現在の天際汽車へと社名を変更した。17年に発売した10車種のEVの価格は補助金適用後6万元(約115万円)前後で、狙いはローエンド市場だった。
現在はミドルレンジ~ハイエンド向けのME7と低価格モデルのME5という2車種を販売している。ME7は純電気自動車(BEV)でME5はレンジエクステンダー式のEVだ。ME5はレンジエクステンダーEVとしては市場で最も低価格となっているが、売れ行きははかばかしくない。
年間販売台数は21年はわずか1778台、22年も5321台にとどまった。中国新興EVメーカー御三家の「蔚小理(蔚来汽車、小鵬汽車、理想汽車)」の年間納車台数が22年に10万台の大台に乗ったのとは対照的だ。
EV市場で地位を確立できていない天際汽車にとって、今年の競争はより厳しいものとなるだろう。
今年初め、まず米EV大手テスラが値下げを発表し、それに続いて中国国内でも値下げの声が上がった。あるEVメーカーの責任者は、現在、景気回復の速度は緩やかだとして「今年は販売台数が最優先事項となる。市場シェアを維持するため利益を犠牲にしても戦わなければならない」と話した。
中国乗用車産業連盟の張秀陽氏は「今年中国では100車種以上のEVが発売されるだろう。市場の競争はこれまでになく厳しくなり、新興メーカーの勢力図や順位なども変化するはずだ」という見方を示した。
天際汽車は海外進出に望みを託しているようだ。昨年末、同社はサウジアラビアの機関投資家「Sumou Holding」と合弁契約を締結、サウジアラビアで2期5億ドル(約660億円)を共同で出資し、新エネルギー車の生産・開発拠点を設立する予定だ。
2022年には20万台以上の中国車がサウジアラビアへ輸出されており、同国の自動車輸入台数の3分の1を占めている。サウジアラビア国内のデータによると、現在10数社の中国ブランドが同国で自動車の販売サービスを行っているという。
しかし新興メーカーが海外に進出するのは容易ではない。中国汽車工業協会(CAAM)のデータによると、中国の22年の新エネルギー車輸出台数は67万9000台だが、先を争って海外進出した新興メーカーはまだ大きな結果を出せていない。海外進出事業に関わるある社員は、市場開拓だけでなく販売やアフターサービスにも多くの資金と労力が必要だと話す。
現在の天際汽車にとっては、中国国内の現状を打開する方が優先だろう。
(翻訳・山口幸子)
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