今や大ヒット曲は「TikTok」から生まれる時代に 音楽業界は愛憎半ば

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中国の短編動画共有アプリ「TikTok(抖音)」で昨年、「学猫叫(猫の鳴き声をまねよう)」という楽曲が一大旋風を巻き起こし、人気の「神曲」となった。サビの部分だけを切り取ったショートバージョンを動画に使用したユーザーは582万8000人にのぼった。「一緒にニャンニャンニャン~」と覚えやすいメロディに乗せて猫のまねをする振り付けも人気を博し、中国の若手女優グアン・シャオトン(関暁彤)やマイケル・チェン(陳赫)ら数十人もの芸能人が「完コピ(完全コピー)」した。

楽曲のサビだけがまるでウイルスのように伝播する現象は、十数年前にもあった。携帯電話の着メロや着うたとして爆発的なダウンロード数を達成し、それまでレコード会社の販売チャネル頼みだったアーティストたちに莫大な利益をもたらした。例えば、2004年に大ヒットした男性歌手、刀郎(ダオラン)の「情人」「衝動的懲罰」「2002年的第一場雪」はダウンロード数が延べ800万回近くに達した。1回当たり2~3元(約32円~48円)として、3曲合わせて約2000万元(約3億2000万円)の利益を上げたことになる。そして同じことが今、TikTokでも起きている。

TikTokが神曲を生み出す

月間アクティブユーザー数(MAU)5億人、デイリーアクティブユーザー数(DAU)2億5000万人を抱えるTikTokは単なる短編動画プラットフォームにとどまらず、今や音楽産業に大きな影響を与える存在となっている。IFPI(国際レコード産業連盟)が昨年まとめたリポートによると、世界中の音楽消費者の86%がストリーミング配信、52%が動画配信を通じて音楽を視聴していた。

音楽は、BGMとしてドラマや映画のクライマックスシーンで効果を発揮している。だがTikTokではそれにとどまらず、指を使った「フィンガーダンス」を盛り上げる大きな要素として、たった15秒で一般市民を有名人にしてしまう力がある。アーティストもこの絶大な力を無視するわけにはいかず、TikTokで新曲を初披露するなど重要な宣伝ツールとして活用するようになった。

レコード会社はストリーミング配信サービスの台頭で収益が落ち、新曲に大々的なプロモーションを打つ余裕がなくなった。トップアーティストでさえバラエティ番組に出て自ら宣伝せざるを得ない状況に陥っている。

写真はTikTok提供

TikTokでは、再生回数の多い短編動画で使われた曲は瞬く間に知名度が上がる。楽曲が素人のものでも有名アーティストのものでも大きな違いはない。しかも、TikTokでは有名アーティストの曲ばかりが使われるとは限らない。冒頭で紹介した「学猫叫」も同様のルートを辿った。「神曲」を生み出すTikTokの力は侮どれない。

TikTokと著作権問題

TikTokの「神曲」を生み出す絶大な宣伝効果を考えれば、レコード会社にとってもある程度はお互い様というところだろう。だが、TikTokは運営開始当初、著作権問題に疎く、ユーザーがBGMに使った曲を「自分のオリジナル」としてしまうトラブルもあった。それでも、アーティストやレコード会社は楽曲を宣伝する場としてTikTokを手放すことはできない。彼らにとって、TikTokは「愛憎相半ばする」存在といえるだろう。
(翻訳・鈴木雪絵)

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