テンセントが相次いでリリースする短編動画アプリ 最新商品「看点視頻」のポテンシャルは?

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テンセントが4月にリリースした新たな短編動画アプリ「看点視頻」が、コンテンツの拡充を図っている。先日、国内のSF誌「科幻世界(Science Fiction World)」との提携を発表し、短編小説や短編映画を製作していくと発表した。また、vlog(動画ブログ)コンテンツの提供も試験的に開始し、これを「コンテンツにおける重要ジャンルの一つ」と位置付けている。

テンセントのプラットフォーム・コンテンツ事業群(PCG)が誕生させた看点視頻は、1~3分のPGC(プロフェッショナルが制作するコンテンツ)を提供する動画プラットフォームだ。同じく短編動画のプラットフォームとして人気のTikTok(抖音)がUGC(一般ユーザーが制作するコンテンツ)を提供し、そのフォーマットを15秒以内のタテ型動画としているのとは異なる。看点視頻と同じタイプの短編動画アプリとしては、TikTokと同じバイトダンス(字節跳動)傘下の「西瓜視頻(Xigua Video)」や、バイドゥ(百度)傘下の「好看視頻(Haokan Video)」がある。

すでに短編動画プラットフォームが溢れている中国で、好看視頻が認知度を上げていくのは容易ではない。業界内でも、その将来性を疑問視する声が挙がっている。

Vlogを重要コンテンツに

複数の短編動画アプリを提供するテンセントだが、それぞれに異なる位置づけをしている。「微視(WeShow)」はタテ型のUGC、看点視頻はヨコ型のPGCに特化しており、その中間に位置するのが「火鍋視頻(Huoguo Shipin)」だ。

看点視頻のコンテンツは大別してエンターテイメント、お笑い、漫画・アニメ、ゲーム、スポーツの5ジャンルだ。今後は各ニッチ分野のコンテンツプロバイダ(CP)と提携して良質なIP(知財)を拡充していくという。

数百人の人気vloggerが集う看点視頻

さらに、看点視頻はvlogコンテンツの強化にも動いており、すでに数百人の人気vlogger(ヴロガー)をプラットフォームに呼び込んでいる。vlogは各コンテンツプラットフォーム大手が力を入れている分野だ。中国版ツイッターと呼ばれる微博(Weibo)は昨年9月、公式vloggerの認証制度を開始し、TikTok、好看視頻、ビリビリ動画(bilibili)は今年4~5月にかけて、西瓜視頻、愛奇芸(iQIYI)は7月に、それぞれvlogの強化プロジェクトをスタートしている。

しかし、テンセントPCGの楊達志氏は、看点視頻を安易にvlogブームに乗せようとは考えていない。コンテンツはあくまでユーザーファーストで選ぶべきだと考えている。

看点視頻のペルソナは95後(1995年以後生まれ)、00後(2000年以後生まれ)に設定している。若者に人気のスターや新人スターを起用し、学生生活など若者にとって身近な題材に切り口を設定すれば、多くのユーザーの心を掴めるだろう。そのため、同プラットフォームにはSNS的な要素も盛り込まれている。

また、看点視頻の各チャンネルには多くのタグが設定されている。ユーザーは自身の興味と合致するタグを登録しておくと、関連のコンテンツを自動でレコメンドしてもらえるようになる。

孤立無援の看点視頻

モバイルデータの分析を手がける「七麦数據(qimai.cn)」の調べによると、AppStoreのエンターテイメントカテゴリ(無料アプリ)で、看点視頻の人気ランクは105位だ。これまでのダウンロード数も約4万5500回と振るわない。

しかし、テンセントは看点視頻への支援を積極的に行っていないように見受けられる。むしろ、同社のライバルアプリである微視の方により力を注いでいるようだ。テンセントが運営する短編動画アプリの中で、最高位に位置付けられているのが微視なのだ。同社の関係者からは「微視以外の短編動画アプリは放置状態」「すべての資金は微視に充てられているようだ」との声も挙がっている。

まだ運営モデルも確立していない発展途上の商品に手をかけなければ、ユーザーが増えていくこともないだろう。一方の微視は、WeChat(微信)モーメンツに30秒動画をシェアできるようになってから、月間アクティブユーザー(MAU)が1億人を突破したという。

コンテンツ製作・運営を手がける「企鵝号」は、テンセントPCGの中核をなすコンテンツプラットフォームで、画像・テキスト・動画の審査、配信、清算など一連の業務を管理する。企鵝号の標準化された運営により無駄なコンテンツを省き、効率的に拡散できる一方で、ユーザーの嗜好にうまくマッチしなかったり、特色あるコンテンツが不足したり、資金回収までの期間が長くなったりといったデメリットもある。

微視も当初は企鵝号経由でコンテンツを確保していた。しかし、現在では独自に調達や制作を行っており、コンテンツの選別についてはより強い決定権を持つようになった。

Vlogを強化することで活路を見出したい看点視頻だが、vloggerたちを如何に支援していくかという点、あるいはプラットフォームとしていかに機能するかという点に、運営力やサービス力が問われるだろう。あるMCN(マルチチャンネルネットワーク)の責任者によれば、TikTokは立ち上げ当時、1人1人のクリエイターとじっくりコミュニケーションをとっていたという。

モバイルインターネット市場のピークが過ぎ、多くの競合がユーザーの利用時間を奪い合う中で、短編動画アプリのさらなる集客は困難かつ緊迫した局面を迎えている。こうした競争は当面続くことだろう。
(翻訳・愛玉)

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