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ドローンメーカー世界最大手の「DJI(大疆創新科技)」が電動アシスト自転車(eバイク)事業に参入する。複数の信頼できる情報筋によると、社内ではイニシャル「EB」というコード名のプロジェクトが立ち上げられているが、現時点ではまだ機密扱いのようだ。プロジェクトリーダーはシニアエンジニアのAlex.Jia氏、これまでにスタビライザーやジンバル用のモーターを手掛け、手持ち3軸カメラジンバル「Ronin」シリーズを担当していた。
36Krはこの件についてDJIに問い合わせたが、ノーコメントという回答だった。
DJIがeバイク事業に乗り出すのは不思議なことではない。
eバイクは今も成長期にある市場だ。電動自転車では古株の「雅迪(Yadea)」や「新日(SUNRA)」などもeバイクを販売しており、海外では独ポルシェも価格が1万ドル(約150万円)になる製品を発売したことがある。
ベンチャーキャピタルも近年eバイクに注目している。米Aventonや中国発のTenways、Velotric、Urtopiaなどの新興eバイクブランドが、セコイア・キャピタルや高瓴資本(Hillhouse Capital)、経緯創投(Matrix Partners China)といった有力投資機関から資金を調達している。
スタートアップ企業の上位数社で出荷量はわずか1万台程度だが、企業の評価額は高い。例えばAventonは、2022年11月にセコイア・キャピタル・チャイナ(紅杉資本中国基金)から資金を調達し、評価額が5億9000万ドル(約860億円)に達した。ある投資家は、eバイクの分野には大きなチャンスがあり、評価額100億元(約2000億円)クラスのユニコーンが誕生するだろうと語る。
出荷先として主戦場になるのは、すでに市場が形成されている欧州と今後成長が期待される米国だ。欧州の自転車保有台数は2億5000万台で、毎年約2000万台が販売される。複数の市場調査会社によると、欧州のeバイク普及率は2025年に50%に達し、販売台数は1000万台を上回るという。一方、米国ではスポーツバイクが主流で、5900万人がツーリングを楽しんでいる。
eバイクの価格は一般的に1000ドル(約15万円)程度で、技術的なハードルは高くない。多くがOEM生産で、シェアリングサービス運営会社に供給される。米国の有名ブランド、TREKやSpecialized、Cannondaleなどのハイエンド商品の場合、海外での販売価格は4000ドル(約60万円)前後のものが多い。こうした製品はオフロードで使用されるため、モーターやバッテリーには高い性能が求められ、参入の障壁が高い。DJIはハイエンドのeバイクに狙いを定め、儲けの少ないミドルレンジ、ローエンドの市場で無意味な戦いを繰り広げるのを避けた。
DJIの主力製品であるドローンや撮影機材は、eバイクと同様に屋外で使用されるため、両製品を組み合わせて売り出す可能性もある。また、これまでドローン市場で築き上げてきたブランド力やオンライン・オフラインの販売ルートを活用して速やかに規模を拡大することもできる。
DJIは航空撮影ドローン、手持ち撮影機材、そして法人向け事業の3分野で事業を展開している。法人向けには農業用ドローンや産業用ドローン、教育プラットフォームと自動運転ソリューション開発のDJI Automotive(大疆車載)を展開してきたが、DJI AutomotiveはすでにDJIから切り離されて「卓馭科技」として上場、資金調達と歩を進めている。
技術を磨きヒット商品で市場を攻めるというDJIの戦略は相変わらずだが、それも徐々に難しくなっている。消費者向けドローン市場は急速に縮小しており、商業ドローン市場は十分育つまでにまだ時間がかかる。DJIはより多くの可能性を求め、過去には教育用ロボット「RoboMaster」シリーズを開発した。しかし主力製品の「SI」の発売からすでに4年が経過したものの、販売実績は公表されていない。
DJIは複雑な国際関係にも直面している。中国商務部や税関総署などは7月31日、一部のドローンおよびドローンに関連する品目について輸出を規制するとの公告2件を発表した。輸出規制の実施は今年9月1日から。大部分の消費者向けドローンは含まれないようだが、ドローンが取り扱いの難しい製品になったことは否定できない。
これに対し、eバイクは各国の二酸化炭素削減政策とも関係が深く、市場が形成されて日が浅いため、DJIにとっては安全で長く続く新たな道と言えるだろう。
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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