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ここ数年の民泊産業の急成長とは裏腹に、ユースホステルはメインストリームから外れた状況が続いていた。だが2年前にチェーン店舗わずか14軒のユースホステルブランド「Generator Hostel(ジェネレーターホステル)」が不動産投資顧問会社「Queensgate Investments」に4億8000万ドル(約509億円)で買収されて以降、高級ホテルまでもが次々とユースホステル業界へと参入している。
旅行業界専門の米研究機関「Phocuswright」の統計によれば、世界のユースホステル市場の規模は2020年に70億ユーロ(約8155億円)に達し、年成長率は7~8%となるという。また昨年末の時点で、中国のユースホステル数はすでに4~5万軒に達している。
既存のユースホステルは苦境に
現在、世界最大のユースホステル組織「IYHF(国際ユースホステル連盟)」は、世界95カ国・地域に3800カ所以上のユースホステルと400万人以上の会員を抱えており、各ユースホステルの加盟費と会員費を主な収入源としている。現在、中国の加盟ユースホステルは175カ所あるが、実のところ2008年時点の約200カ所から減少している。
その一方で、格安ビジネスホテルが一部のユースホステルの低価格市場を奪っている。さらに民泊業界の成長が体験重視型の顧客層を引き付けており、結果として大量のユースホステルが廃業に追い込まれている状況だ。ユースホステル事業者の予測によると、1~2級都市での宿泊料金は1人あたり40~100元(約600~1500円)が採算が取れる正常な価格帯だという。だがOTA(オンライン旅行会社)のプラットフォーム上では、大部分の最低価格が1人30元(約450円)となっているほか、中には1ベッド20元(約300円)というユースホステルも見受けられ、根本的に収益が見込める価格設定になっていない。
資本の注目を集める新型ユースホステル
既存のユースホステルが苦境に陥る中、「ポシュテル(Poshtel)」と呼ばれる新たな宿泊施設が大きく成長している。
ポシュテルとは豪華さ、上品さを表す「posh」と「ホステル」を組み合わせた語で、高級ユースホステルを意味する。ユースホステルをベースに客室内のデザイン性を強化し、よりよい設備が整えられている。共有スペースにはバーやレストランが併設されていることも多い。
ポシュテルは投資家の注目を集めており、仏アコーホテルズや米マリオット・インターナショナル などがこのビジネスモデルを通してユースホステル市場への参入を次々に試みている。
中国国内の事業者は総じて、学生やバックパッカーがユースホステルの利用者だと考えている。だが意外なことに、上述のGeneratorによれば顧客の15~20%が30歳以上だという。またブルームバーグは今年、欧州のマネージャークラスのビジネスマンの多くが出張の際、ユースホステルを利用することで経費を節約していると報じている。Generatorのようなポシュテルに宿泊すれば体裁も保たれるということだろう。
宿泊産業で進む業態融合
ポシュテルは宿泊料金頼みの単一的な収益モデルにも変革をもたらしている。人目を引く食品やドリンク、さらにTシャツ、アメニティ、家具などの商品がポシュテルの売り上げの大部分を占めているという。Generatorでは現地の骨董品まで販売しているとのことだ。ある統計によると、欧州のユースホステルグループ「St Christopher’s Inns」の売上高の半分は食品やバーによるものだという。
GeneratorのCEOを務めるFredrik Korallus氏は「宿泊料は我々の収益の最重要要素ではない」と述べており、人々を驚かせるような現地での体験や人との出会いこそ、同社の真の「セールスポイント」となっている。ユースホステルはもはや単なる宿泊場所ではなく、ライブ会場やファッションショーといったイベントの舞台となりつつあるのだ。
宿泊業界では、業態の垣根が徐々に取り払われようとしている。まさに米旅行業界向けメディア「Skift」が今年の旅行業界の新トレンドについて予測したとおり、宿泊産業の融合が始まりつつあるということだろう。
(翻訳・神部明果)
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