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中国自動車大手の上海汽車集団(SAIC MOTOR)と固体電池を手掛けるスタートアップ企業「清陶能源(Qing Tao Energy Development)」が共同で開発した第一世代固体電池が、実際に車両に搭載され試験走行を完了した。
固体電池のセル単体の重量エネルギー密度は368Wh/kgで、リン酸鉄リチウムイオン電池の倍以上になる。テスト車両による走行試験の結果は、最大航続距離1083キロメートル、10分間の充電で航続距離は400キロメートル伸びた。
今回開発された固体電池は業界内で極めて厳しい安全性試験とされる釘刺し試験を想定して開発された。清陶能源によると、この固体電池は最もシビアな針刺し試験をクリアでき、バッテリーパックとしてシステムレベルの熱暴走防止を実現するという。
今年に入って、駆動用バッテリーは急速充電とエネルギー密度の両面で目覚ましい発展がみられた。急速充電では、充放電性能を示すCレートが3Cのバッテリーがすでに多くの車両に実装されている。理想汽車(Li Auto)は寧徳時代(CATL)と共同で5Cに達する「麒麟電池(Qilin Battery)」を開発した。公式発表によると、このバッテリーは12分間の充電で航続距離が500キロメートルになるという。
CATL自身も4Cのリン酸鉄リチウムイオン電池「神行超充電池(Shenxing Superfast Charging Battery)」を開発しており、10分間の充電で航続距離を400キロメートル伸ばせる。
充電問題はEVの抱える根本的な課題だが、超速充電技術の登場によってこの問題は大幅に緩和されてきた。バッテリーのエネルギー密度も徐々に向上しており、これも充電問題を解決する手段のひとつになる。
蔚来汽車(NIO)と衛藍新能源(WeLion New Energy Technology)が共同開発した半固体電池は航続距離が1000キロメートルになる。CATLと新興EVメーカーの極氪智能科技(ZEEKR)は高ニッケル三元系の麒麟電池を開発、航続距離は同じく1000キロメートルを突破している。
しかし航続距離1000キロメートルをうたうバッテリーは、コストの高さから小ロットの供給にとどまっていることも確かだ。NIOの半固体電池のコストはほぼ車両1台分に匹敵する。
これに対して、上海汽車集団と清陶能源が今回開発した固体電池は、航続距離を伸ばすだけでなく、コスト低減と充電速度向上も目指した。
公式情報によると、この固体電池の最大航続距離と10分間充電の航続距離は、CATLの超速充電バッテリーとほぼ同等のレベルだ。しかも量産化できればコストを同レベルのリン酸鉄リチウムイオン電池や三元電池よりも10%から30%低く抑えられるという。
つまり、この固体電池は航続距離だけを売りにするものではなく、航続距離・コスト・充電速度のバランスをとった製品ということだ。順調に量産体制に入れば、EVバッテリー業界に衝撃を与えるのは間違いないだろう。
公表されている進捗状況によると、上海汽車集団傘下の「智己汽車(IM Motors)」で高性能・高航続距離の固体電池を搭載したモデルが24年に量産化されることになりそうだ。2025年には智己のほか、上海汽車傘下ブランドの「飛凡(Rising)」「栄威(Roewe)」「名爵(MG)」からも新型固体電池を搭載したモデルを複数発表する予定で、年間販売台数は10万台を超えるとみられる。
清陶新能源は、中国科学院院士で清華大学教授の南策文氏のチームが中心となって2016年に設立した。上海汽車集団は2018年から固体電池技術の開発で同社と協力している。上海汽車集団は20年5月に清陶新能源の株式を取得、シリーズE+の資金調達に加わった。さらに22年にシリーズF++の資金調達にも参加した。同年には共同実験室を開設して、車載用固体電池材料やバッテリーセル、システムの開発を進め、このほど初代固体電池を搭載した車両の走行試験が完了した。
両社は2023年5月に増資による持分増加と戦略的協力関係の枠組み構築の協議に合意、上海汽車集団はシリーズG+の増資による持分増加により清陶能源の筆頭株主となった。今年下期に合弁会社を設立し、共同で次世代の固体電池を開発する。
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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