メガバンクの休眠顧客を掘り起こし WeChatユーザーに特化したアプローチで注目の「等趣」

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多くの新興企業が顧客獲得に苦戦している一方で、大手企業は多くの顧客を抱えているが、そのうちアクティブ状態の顧客はどれほどいるだろうか?

モバイルインターネットが登場して間もない頃、顧客関係管理サービスを提供する事業者の多くはアプリを活用することを考えた。特にサードパーティのポイントモールを利用して、各主要アプリから誘客すると同時に広告主との橋渡しを行うのだ。企業向けSaaSやインタラクティブ広告事業を手掛ける「兌吧網絡科技(Duiba Network Technology)」はこの手法で成功を収め、創業5年で香港株式市場に上場し、現在では時価総額が50億香港ドル(約700億円)に達している。同社は1万4000社以上のアプリでサービスを展開しているという。この例から、顧客関係管理サービスのニーズは確かに存在しており、市場の規模は100億元(約1500億円)以上だという。

新参プレーヤーの一つ「等趣信息科技(Dengqu Network Technogoly)」は、微信(WeChat)を利用する顧客に特化したアプローチに目をつけた。創業者の孫有新氏によると、現在のモバイルインターネットユーザーのほとんどを握るのはアリババやテンセントといった超大手企業であり、中でも微信はアクティブユーザー10億人以上を誇る。微信は利用時間が最も長く、利用頻度も最も多いアプリだ。ここを集中的に掘り起こすことで各企業のユーザー活性化につなげていく。

微信のエコシステム内でも、一部の大企業の公式アカウントやサービスアカウントには大勢のユーザーが集まるものの、実際のアクティブ度は必ずしも高くないとう状況が生じていた。これに対して、等趣はポイントモールを活用して、大勢の休眠ユーザーをアクティブ化させる方針を採った。川上はユーザーの活性化や売上増を無償支援し、川下ではオフラインの消費シーンを創出したり、集客をサポートしたりする。

孫氏によると、現在等趣と契約している企業は、中国工商銀行や中信銀行など多数の金融機関や各省のテレビ局などで、川下で800以上の業者に橋渡しして消費シーンの創出に成功している。プラットフォームの正式なサービス開始後、約6カ月で実質ユーザー数が500万人に達し、エンジェルラウンドで数百万元(数千万円~約1億5000万円)を調達した。

等趣が中国工商銀行に提供した「工銀福利社」利用画面

等趣の最初の顧客は中国工商銀行だった。このような超大手銀行には膨大な既存顧客が存在する。しかし、アクティブ度やロイヤルティ向上に関してはつねに課題を抱えている。これを解決するため、利用登録や定期利用と引き換えにプレゼント進呈といった企画をよく見かけるが、こうしたインセンティブを継続的に提供したとしても、インセンティブ獲得には何らかの消費や手間が引き換えになる以上、顧客が食指を動かすとは限らない。そこで、等趣はこのことを踏まえて、顧客に無料でプレゼントをする企画を提案した。

等趣は中国工商銀行向けに「工銀福利社」というソリューションを提供した。このソリューションでは、同銀行が発行するクレジットカードの公式アカウントから顧客に向けて新しいサービス紹介などの記事を配信する。こうした記事は読者が抽選に参加できるようになっており、読後に記事からミニプログラムにジャンプできるようになっている。顧客はミニプログラムからプレゼントの抽選に参加することができ、賞品は記事で紹介された企業が無料で提供するというシステムだ。実際に運営をはじめたところ、短期間で数十万人から抽選の応募があった賞品もあり、サーバーがダウンするほどだったという。結果的に、銀行側はアクティブユーザーを増やせると同時に、賞品の提供企業も宣伝を行うことができるため、双方に益をもたらす。

等趣の関係者によると、川上と川下の顧客をすみやかにつかむ能力が非常に重要だ。同社のメンバーは主に新浪(SINA)やバイドゥ(百度)などの有名IT企業出身で、業界経験が豊富なメンバーが揃っている。

等趣が掲げた目標は、年内に実質ユーザー数1000万人以上、デイリーアクティブユーザー数100万人以上、有料会員数10万人以上、会費収入300万元(約4600万円)以上を達成することだという。
(翻訳・虎野)

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