中国発の巨大ECユニコーン「SHEIN」、米国上場のためにシンガポール企業に国籍変更?その背景とは

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中国発の巨大ECユニコーン「SHEIN」、米国上場のためにシンガポール企業に国籍変更?その背景とは

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中国発のファストファッションEC「SHEIN」が米国で新規株式公開(IPO)を計画している。評価額900億ドル(約13兆4000億円)を目指しており、すでにロードショー(機関投資家への説明会)の招待を受けた投資家もいる。複数のメディアが伝えた。

SHEIN上場の情報が伝わると、どのような「立場」で上場するかに注目が集まった。中国証券監督管理委員会の公式サイトを調べた人もいたが、SHEINが海外で上場することについての公告や審査に関する情報は見つからなかったという。

可能性が高いのは、SHEINが「非中国企業」として上場することだ。SHEINが本社をシンガポールに移したことを2022年にメディアが報じ、創業者のクリス・シュー(許仰天)氏がシンガポールの永住権を取得していることも明らかになった。

シンガポールで登記した「Roadget Business」社がほぼ2021年末からSHEINのグローバルサイトを運営し、SHEINや中国国内版「希音電商」の商標などの知的財産権を保有している。

SHEINの公式サイトを調べたところ、SHEINの本社はシンガポールにあり、米国、ブラジル、アイルランド、中国華南地域などに運営センターを置いて、世界の150以上の国家や地域でサービスを提供していることが分かった。

従ってSHEINはすでにシンガポール企業であり、中国証券監督管理委員会が2023年2月17日に発表した「中国国内企業国外証券発行及び上場管理試行弁法」とそれに関連する5つのガイドラインを遵守する必要はなく、当然ながら証券監督管理委員会の公告リストにも載ることはない。

SHEINがIPOについて固く口を閉ざしていることには、やむを得ない事情があるのだろう。

2023年5月初め、米国で20人余りの議員が連名で米国証券取引委員会に対しSHEINのいかなるIPOも認めないよう働きかけ、一部の議員は中国企業が米国で上場することに懸念を表明していた。同月に発表された新たな資金調達では、SHEINは売上高が拡大していたにも関わらず評価額は660億ドル(約8兆9400億円)にとどまり、1年前の1000億ドル(約14兆9000億円)から3分の1以上減少した。

そのため、SHEINが「ノーコメント」を貫くのは、自社のIPOについて過度の議論を避けたいという思惑があるのかもしれない。IPOが難航すればSHEINの評価額に影響し、投資家の利益にも影響する。SHEINは2015年から今までにシリーズFまで経験し、出資企業も10社以上、調達金額は総額200億ドル(約3兆円)近くに上る。紅杉(Hongshan、旧セコイア・キャピタル・チャイナ)、タイガー・グローバル・マネジメント、ジェネラル・アトランティックなどは度々出資に参加している。

目指すはグローバル企業

2023年、SHEINはグローバル化を急速に進めてきた。まさにSHEIN公式サイトにある「SHEINはファッションとライフスタイルのグローバルECブランドで、ファッションの美しさを全ての人に楽しんでいただくことを目指しています」という紹介文の通りだ。

グローバル企業になるため、SHEINはさまざまなアクションを起こしてきた。まず、経営陣に外国籍の人材が加わった。2022年11月、投資銀行ベアー・スターンズのバンカーだったドナルド・タン氏を取締役副会長に迎える。23年初めには孫正義氏の右腕だったマルセロ・クラウレ氏がSHEINラテンアメリカ地区の会長に任命され、数カ月後にはグループ副会長になった。

次に、世界でM&Aを推進した。

SHEINは2023年8月中旬、ファストファッションブランド「Forever21」の親会社SPARCグループの買収を発表し、同グループの株式の3分の1を取得した。23年10月末には英フレイザーズグループ(Frasers Group)傘下のファストファッションブランド「ミスガイデッド(Missguided)」および同ブランドのすべての知的財産権を買収し、それから1週間もたたないうちに英ブランド「Topshop」買収の意向が伝えられた。SHEINにとって、既存ブランドの買収はグローバル化という目標を実現する手段の一つであることは間違いない。

これらの動きから、SHEINは中国のサプライチェーンモデルの下で「少量生産、こまめな追加発注」のフレキシブルな供給体制を武器に海外市場でのし上がったスタートアップだったが、今や海外のブランド・生産・倉庫・配送を集約したグローバル企業へと転身を遂げたことがわかる。海外メディアが「SHEINは次第に中国との関係を断ち切っている」とコメントするまでになった。

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リスクを避けられるかは未知数

SHEINが目立たないよう上場を進め、海外展開に力を注ぐのは、自己防衛のためのようだ。「中国企業」のレッテルを貼られ世界市場で政策や規制などでけん制されることを望まず、グローバル企業として公正な目で見てもらいたいのだろう。

典型的な例としては、利用禁止にもなったTikTokがある。多くの人は地政学的な問題とみるが、実はビジネス上の競争という見方もできる。TikTokを規制するよう呼びかける声が高まる中で、最も積極的なのはMetaだった。TikTokの市場シェアが急拡大し、FacebookとInstagramとの間で激しい競争が起きていたからだ。2022年上半期のデータでは、米国市場でのTikTokのダウンロード数は延べ5300万回で、Instagramの3800万回やFacebookの2500万回をはるかに上回っている。

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同様のことが越境EC分野でも起きている。日本経済新聞社と米調査会社Data.aiが共同で、主なECアプリの月間ユーザーやダウンロード数などのデータを分析したところ、中国発ECプラットフォームのTemuとSHEINの米国ユーザー数は合計1億1000万人で、最大のECプラットフォームであるアマゾンの9割以上に達した。さらにTemuの米国ユーザーは世界全体の約41%、 SHEINは約18%を占め、いずれもアマゾンを上回った。

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米中経済・安全保障調査委員会(USCC)は2023年4月に発表したアナリストリポートで、SHEINやTemuなど中国発ECにはデータの安全性、仕入れの規則違反などの問題があるとの見方を示した。

「グローバル企業」としてのSHEINにもうリスクはないだろうか。今はまだ不確定要素が多すぎる。大国の競争という点だけみると、中国企業ではなくなったことで叩かれることはないだろう。しかし、ビジネス面では、アマゾンの利益がTemuやSHEINなどに侵食される場合は、どの国の企業であるかはもはや問題ではないかもしれない。

作者:Alter聊科技(WeChat ID:spnews)・顧青雲、編集:沈菲菲

2023年11月28日のレート(1ドル=約149円)で計算しています。

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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